北朝鮮による大口径多連装ロケットの発射は、恫喝のために見せつけている、あるいはその延長線上のものでしかないと考えていては大間違いだ。

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 この兵器の怖さを認識し、確実に対応できるようにしなければ、韓国の政府や軍の機能は一瞬にして停止させられてしまう。超大型ロケットの能力と運用目的から、当然予想されることだ。

とてつもない脅威を韓国に

 北朝鮮は5月以降、短距離弾道ミサイルのほかに、超大型ロケットおよび大口径多連装ロケットの発射実験を行った。

 超大型ロケットも多連装ロケットの種類に区分してよい。多連装ロケットのこれまでの概念は、命中精度が悪いために、施設の破壊を狙うものではなかった。

 たったの数分間に多数弾を発射して、広域に展開する敵の陣地や市街地を狙って撃ち込み、多数の兵士や市民を殺傷するものであった。

 旧ソ連軍、中国軍および北朝鮮軍は大量の多連装ロケットを保有していて、連続して発射する映像を映して、我々西側諸国を威嚇してきた。

 例えば、北朝鮮が保有する240ミリ多連装ロケットは、1台に22発の砲が取り付けられていて、全弾が約3~5分で撃ち終わる。

 1個砲兵旅団が保有すると見られる約72台が同時にソウルを狙って発射すれば、3~5分の間に約1600発が落下してきて爆発するのだ。

 多くの人々が建物の外にいれば、この数分の間に数万人の死傷者が出る可能性がある。

240ミリ多連装ロケットの発射状況

 では、5月・8月・9月に発射された300ミリと400ミリ以上の大型の多連装ロケットは、上記のように戦場において戦術思想を達成するため製造されたものかというと、そうではない。

 これまでのものとは飛翔距離・飛翔軌道の変更・命中精度・破壊などの諸能力が異なるため、狙う射撃目標は大きく異なる。

 戦争において勝敗を左右するほどの戦略的な目標に対して用いられるだろう。

 つまり、韓国全土に所在する軍事基地や重要施設、あるいは首都ソウル大統領府などの政府機関の施設を直接狙って破壊するロケットだ。

 特に、9月10日に発射されたロケットの直径が400~600ミリほどもある超大型で長射程のロケットは特異である。

 それが、4門搭載されているこの大型タイプロケットは、中国軍北朝鮮だけが保有している。ロシアでさえも保有していない。

金正恩委員長と超大型ロケット

 北朝鮮が保有する短距離弾道ミサイル「スカッドB」の直径88.5センチと比較しても、約半分の直径だ。

 外見上は、弾道ミサイルと比べると当然細く、ミサイルと言うよりもロケットという印象がある。

 だが、短時間に大量のロケットを発射できる。命中精度では、GPS誘導の弾道ミサイルと同じだ。

北朝鮮が独自に開発したものなのか

 北朝鮮の大型多連装ロケットを見ると、直径が300ミリと400ミリ以上の2種類がある。

 ロシア軍には、多連装(12連装)ロケット(口径300ミリ)「BM-30」があるが、射程は100キロ以内で、中国の300ミリと比べると射程が3分の1程度である。

 400ミリ以上のロケットになると、ロシア軍は保有していない。

 ロシア軍の多連装ロケットは「カチューシャ」という名称で有名だが、基本的に射程は数十から100キロ以内で短く、命中精度は悪くても、大量の弾数を撃ち込んで、広く浅く叩く戦術である。

 中国には、302ミリ多連装(4連装)と425ミリ多連装砲(4連装、6連装、8連装、12連装)がある。中国の航天一院あるいは七院企業が製造しており、様々な形状の大口径多連装ロケットを製造している。

 中国製302ミリ多連装砲は、誘導方式は慣性誘導とGNSS(GPS)誘導、最大射程が約300キロ、命中精度(CEP)が10~30メートル以下、である。

 425ミリ多連装砲は、誘導方式が同じでCEPが30~50メートル で、最大射程が約350~420キロである。

 例えば、300ミリであれば直径20~60メートル、400ミリであれば直径60~100メートルの円の中に、2発発射すれば、1発は命中できる。

 北朝鮮がこれまで保有していたスカッドCミサイルは、CEPが900メートルである。直径1800メートルの円の中に2発撃ち込めば、1発命中できる。

 下の比較図を見てのとおり、その命中精度が極めて良い。スカッドCだと建物に命中させることは困難であるが、中国の技術を導入したロケットだと、狙った建物に命中させることができることが分かる。

スカッドCと中国の425ミリロケットの命中精度を円の面積で比較

 中国の大口径多連装ロケットは、ロシアの兵器の射程(約100キロまで)よりもはるかに遠くの目標に命中させ、大型の爆弾で破壊することを狙っているようだ。

 中国軍独特の兵器であり、中国の軍事資料には、開発の狙いは、将来生起するかもしれない中ロ国境での戦いに使用するためだと言う。

 写真から中国と北朝鮮ロケットの形状を見ると、全く同じではないが、同じ武器製造会社が、ロケットのキャニスターロケットを収納し発射する装置)を少し形を変えて作ったと考えられる。

 中国製と全く同じにすれば、中国からの導入がばれてしまうので、少し改良しているようだ。

 性能を見ても、長射程で弾数は少ないことから、中国製とほぼ同じだ。

 北朝鮮が突然、長射程で命中精度が良い多連装ロケットを製造できるとは考えられない。中国の武器製造企業に製造してもらって、導入したものと考えるのが妥当だろう。

北朝鮮300ミリロケットと中国の302ミリロケット

北朝鮮の425ミリと見られるロケットと中国の425ミリロケット

超大型ロケットを保有する狙い

 このロケットは、長射程でありながら命中精度が良い。

 弾道ミサイルに近い大型のロケットであるから、弾頭には大量の炸薬(爆弾)が搭載されている。

 韓国の3分の2の地域にある重要施設を狙って発射すれば、ほとんどが命中してそれらを破壊することができる。

 その使い方には、大きく2つある。

 一つは、平壌の北側の山地に展開し、ソウル大統領府などの政府機関の施設を破壊することだ。地下深くに作られた堅固な壕以外は破壊される。

 南北軍事境界線から遠く離れた山間部から発射されることと、ほとんどが北朝鮮国内を飛翔すること、飛翔軌道を変更することが可能であることから、撃墜することが極めて難しい。

 つまり、この兵器で奇襲攻撃されれば、政府要人は、短時間の内に殺傷されてしまうことになる。

超大型ロケットを介川から、海上とソウル方面に打ち込む(イメージ

平壌の北(介川)からソウルに打ち込む軌道(イメージ

 2つ目は、南北軍事境界線の北側から韓国の約3分の2の地域に配備されている在韓米軍基地韓国軍の基地にこのロケット打ち込んで破壊することだ。飛翔中に軌道を変更できることから、撃墜することは難しい。

 これに対し、韓国軍は、このロケットを早期に発見して、航空優勢を持つ韓国軍戦闘機によるミサイル攻撃で、逆に破壊すると主張するかもしれない。

 だが、イスカンデル版短距離弾道ミサイルと併せて運用すれば、そして北朝鮮が奇襲的に先制攻撃すれば、韓国内の航空基地は全て破壊されてしまうので、戦闘機が飛び立てない状況になってしまうことが予想される。

 これらの攻撃と併せて、サイバー攻撃が行われるのは当然であり、ロケットミサイルの効果は絶大なものになるだろう。

韓国への侵攻危機が高まった

 私が防衛省自衛隊で情報分析の業務をしていた頃を含め、金正日総書記の時代までは、「北朝鮮軍の旧式ポンコツ兵器では、北朝鮮軍が軍事境界線を越えて攻撃すれば、米韓軍に短時間のうちに撃退されてしまう。その後は、米韓軍に平壌までの侵攻を許してしまうことになる」と、考えていた。

 だが、5月から行われた短距離弾道ミサイルや超大型ロケットの開発によって、北朝鮮が先制奇襲攻撃すれば、ソウル青瓦台を含む政治施設、在韓米軍基地および韓国軍基地を破壊することができる。

 ついに北朝鮮が勝利できるシナリオが出来上がってしまったのだ。

 一方、「南北の軍事合意である東西の南北境界を平和の水域にする」「陸の軍事境界線付近に設置されている地雷を排除する」ことなどが行われてきた。

 文在寅大統領は国連演説で、「南北の軍事境界線にある38万個の対人地雷をすべて撤去して、平和の地帯にしたい」と言った。

 文在寅は現在、北朝鮮の南北軍事境界線越境を阻止する最大の障害物排除を進めている。そして、将来的には完全になくしてしまうと考え方を持っている。

 北朝鮮は以前とは違って、攻撃によって勝てる能力を保有しつつある。

 一方、韓国は、北朝鮮が攻撃してきた場合に北朝鮮の侵攻を止めるための障害を除去している。

 韓国国民にとってはとても恐ろしいことが進み、完成しつつある。

 韓国の存続に危険信号が灯っていることは、誰が見ても分かる。南北の平和的統一と統一による繁栄という名のもとに、北朝鮮が韓国を取り込む南北統一が進められているのは明白だ。

 韓国国民は、民族統一のためには、「北朝鮮による統一を受け入れてもよい」「韓国が北朝鮮同様に、金正恩を首領様と崇め、批判や不満を主張する者は、収容所送りになる国家になってもよい」と考えているのだろうか。

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