一般的な感覚では違和感はないかもしれないが、関係者には「おやっ?」と感じさせる出来事である。9月18日北九州市小倉駅近くの人気ソープランド「B」が売春防止法違反の疑いで摘発されたのだ。同日付の西日本新聞が伝えた。

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同紙によれば、56歳の経営者と女性を含む従業員6人が逮捕。逮捕容疑は今年3月から4月にかけて、女性従業員が売春行為をすることを知りながら、場所を提供したことである。

ソープランドの仕組みを知らない人のために説明すると、タテマエとして客は「入浴料」を支払って“浴場”に入り、そこで女性従業員に背中を流すなどのサービスを受ける。従って、その過程で客と女性従業員の間で性行為などはあっても、それは自由意志であり、そこに発生する金銭も店は無関係ということになる。

実際、客は「サービス料」を女性に支払うのだが、多くの店ではその分が女性のギャランティとなっている。形式的にも金銭の動きを分け、お上に摘発されないよう保険をかけているのだ。

もちろん、警察もそんなシステムは百も承知。しかし、あまたの新興風俗とは違い、赤線以来、もっと言えば遊郭以来の伝統として黙認しているのが現状だ。そんなソープ、しかも北九州最大級とも言われる人気店がなぜ摘発されたのか?

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現時点では起訴・不起訴も含めて動きが不明であり、詳らかにすることはできない。が、西日本新聞暴力団の資金源になっていた可能性がある、とも報じている。率直に言って、直接的であれ間接的であれ、ソープランドから暴力団に金が流れるケースがまったくないとは言えない。

もっとも、意外と言ったらなんだが、他の風俗店と違いソープランドの経営はしっかりとしており、必ずしも黒い影がチラつくとは限らない。今回のケースに限って言えは、福岡県警と指定暴力団・工藤會との激しい対立関係からきたものとも考えられる。つまりは、レアケースであるということだ。

いまひとつ考えられるのは、一罰百戒を狙って北九州でも有数の人気店である同店を警察が摘発した可能性だ。ソープランドで売春行為が行われているのは周知の事実であるが、反面、前記のようにタテマエ上はそのような行為を店側は知らない(関与していない)ことになっている。それだけに、人気店を叩くことである種の警告を発し、自重を促すのはよくあることだ。

以前、筆者が某週刊誌の仕事で吉原の高級ソープを取材したとき、撮影やインタビューが終わった翌日にキャンセルの要請が出たことがあった。経営者からの要請であったが、専門誌ならともかく、週刊誌に掲載されることは、宣伝効果より警察に目をつけられるリスクのほうが高い、と踏んだのであろう。

いずれにしても、今回の事件、世間的には取るに足らないことかもしれないが、暴力団との関与を匂わせて伝統的風俗店を摘発するというのは珍しいケースだ。若干飛躍かもしれないが、これを機にドイツオランダのように売春を合法化する議論を起こすのも悪くないかもしれない。(文◎鈴木光司)

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