全国東宝系にて大好評ロードショー中となっているオリジナル劇場アニメーション『HELLO WORLD』の舞台挨拶が10月5日と6日の2日間にかけて川崎、調布、幕張で開催された。今回は東京・イオンシネマ シアタス調布で行われた伊藤智彦監督、音響監督岩浪美和さん、音楽チーム2027Sound」からBRIAN SHINSEKAIさんによるトークのもようをレポートします。

『HELLO WORLD』の舞台挨拶より

 上映後に行われた舞台挨拶には頭に狐面を乗せた伊藤智彦監督と、カラスぬいぐるみを手にした音響監督岩浪美和さん、音楽チーム2027Sound」からBRIAN SHINSEKAIさんが登場。劇中で千古教授の着ていた「らいぶざうんどくんTシャツ」でステージに登壇した3人だったが、岩浪さんは自分の着用しているピンクのシャツ姿の自分とグレーのシャツを着たBRIAN SHINSEKAIさんを見比べて「同じTシャツを着ているのに格好よさが全然違う。ちょっとしゃくに障る(笑)」と一言。この正直な感想に観客からは大きな笑い声が上がりました。

 そんな岩浪さんですが、まず最初に今回舞台挨拶が行われたイオンシネマ シアタス調布の10番スクリーンについて聞かれると「音がいい。綺麗に広がる」と音響について高い評価を付けながら解説。都内初登場となる大型スクリーン「ULTILA」、さらには岩浪さんが監修した「ULTIRA アルタラサウンド11.1ch」によって生み出される特別音響と美麗な映像によって、イオンシネマ シアタス調布での上映では『HELLO WORLD』の世界に入り込んだような臨場感をたっぷりと味わえるとのこと。

 そんなイオンシネマ シアタス調布の紹介を挟んではじまったトークコーナーでは、音楽の話を中心に話題が展開されていくことに。BRIAN SHINSEKAIさんは「ロックバンドに担えない部分の音楽をエレクトロ系の人にもやって欲しい」との要望を受けてそれぞれの曲を制作していったとコメント。担当した各曲について順番に解説してくれたのだが、冒頭のコミカルシーンで流れた「弱気な直実」については過去の名義「ブライアン新世界」時代によくやってた音楽だったということで、全力で作っていったとのこと。これと対象的に「マイペースな瑠璃」では自分と重ね合わせた直実の曲と違って客観的にパッと書けたと語ってくれました。そんなBRIAN SHINSEKAIさんに、岩浪さんが音響監督の立場から「劇伴作家ではなかなか作れない軽妙さがいいなぁと思いました。この曲好きです」と一言。これには伊藤監督もうなずきました。

 そんな軽快な曲から一気に雰囲気が変わって直実と瑠璃が川原で語り合うシーンで流れる「A Time For Love」については「曲が使われるシーンを見て、僕が過去にいち視聴者として見た映画と重ねて作りました。なので曲として聴いても普通に聴けるようなものになっていると思います」とBRIAN SHINSEKAIさん。岩浪さんも「さっきのコミカルな曲と同じ人が弾いてるピアノとは思えないです(笑)」と感想の述べたほか、伊藤監督も大事なシーンで流れる曲ということで注目していたらしく「それまでのデモと比べて、すごくメロディアスな曲が上がってきたんで『誰だ?』ってなりました(笑)。鳥のカットからブレイクがあるじゃないですが。それをムービーから察して曲を作ってくれてきたので『分かってるな』と感じました」と楽曲制作におけるBRIAN SHINSEKAIさんの手腕に大満足といった表情を見せていた。

 さらにエピローグでの「CREATION OF THE WORLD」については伊藤監督が「絵に合わせた展開を」とリクエストをしたとのことで、「何回かやりとりして修正させていただきました」と制作秘話を披露。「すごい綺麗な曲ですよね。後半の木管も可愛いです」と語る岩浪さんにBRIAN SHINSEKAIさんは「やっぱり京都の街並みって温かみのある印象がすごくありましたので、アナログ感を出そうと生楽器は多めに入れさせてもらいました」と『HELLO WORLD』ならではとなる楽曲こだわりについて語ってくれました。

 そんなトークの合間にも岩浪さんは手に持っていたカラスぬいぐるみを弄りまくって観客たちを笑わせていましたが、そのカラスの声を担当した釘宮理恵さんが10月11日からスタートするバリアフリー上映で音声ガイドを担当するとの情報が。スマートフォンタブレット端末などのセカンドスクリーンに専用アプリダウンロードして利用する言語バリアフリーサービス「UDCast」を利用すると釘宮さんの音声ガイドを聞きながら映画を観賞できるようになるということで、「視覚障害者だけでなく一般の人もたくさん利用していただき、こういったサービスエンタメにすることで普及に加速がついてくれればいいと思います」と岩浪さんが『HELLO WORLD』におけるバリアフリー上映の音声ガイドの意義についてコメント。上映中に光が漏れないように前もって操作の準備して観賞してもらいたいとの注意を入れつつ「音声ガイドによって映像から受ける深い意味みたいなものも解説されることになるので、映画の理解度がものすごく深まると思います。『なるほど、そうやったんか!』みたいな新しい発見をしてもらえると思いますので、ぜひ音声ガイド付きで楽しんでいただけたらと思います。そしてもっといろんな人に映画を不自由なく楽しんでいただけたら嬉しいです」などとバリアフリー上映で生まれるかもしれない新たな楽しみ方への期待感について語ってくれました。

 続いてはじまったBRIAN SHINSEKAIさんから伊藤監督への質問コーナーでは、タイトルの『HELLO WORLD』がプログラミング言語での最初の一行になる単語だったり、一行瑠璃の名字が『一行』だったりするのは何か意味があるのかとといったツッコんだ疑問が出されたりする一幕も。これについて伊藤監督は「キャラクターの名前については野崎さんにお任せしている関係上、野﨑さんのみが知っているわけですが。何か由来も考えているとは思っていますが……野﨑さんからは『本好きなキャラなので堅書と一行にしました』としか言われてないですね」という伊藤監督。また勘解由小路三鈴について岩浪さんが「あの子は自分が可愛いと分かってるタイプ」と指摘。しかし伊藤監督は「スピンオフを読むと違うことが書かれているんですよね。僕も自分が可愛いと思ってるという対応をしてたんですけど……そんな風でも嫌われない感じで演じてもらうことが重要でした」と福原遥さんの演技についてもコメントしてくれました。

 また他のキャスティングについても言及。カラス役の釘宮さんについて伊藤監督は「グラフィニカの過去作である『楽園追放 -Expelled from Paradise-』で主役を演じていて、野﨑まど作品で博士的なキャラクターをやっていたことがあり、マスコット役が出来る、さらに俺が一緒に仕事をしたことがないので、いっぺん仕事してみたかった」ので決めたとのこと。千古教授役の子安武人さんについては「大人ナオミと信頼関係を結べるような声に聞こえたら」と言いつつ「どんなキャラクターか分かんないけど、『これは子安さんだな』ってなった(笑)」ということで松坂桃李さんと同じぐらい最初に決まったと語る伊藤監督に会場から笑い声が。さらにほとんどのキャストが伊藤監督の決め打ちだったという中で、三鈴役の福原遥さんや直実役の北村匠海さん、一行瑠璃役の浜辺美波さんと同じくオーディション組だったという徐依依役の寿美菜子さんについては「『けいおん!』組にあやかったというところもあります。堀口悠紀子さんのキャラクターデザインで京都が舞台ですから、やっぱりそこは俺らにとっても大事な作品なんで。一応『けいおん!』組の何人かはオーディションテープをいただいてますし」というここだけの裏話なども語ってくれました。

 後半はプレゼント抽選会で盛り上がると、ついに舞台挨拶はエンディングへ。岩浪さんは「今回の立川(先週開催)、川崎、調布、幕張での舞台挨拶ですが実をいうと僕が仕込みました(笑)。お客さんに伝えたいことがもっとたくさんあるとのことで『もっとやりたい』と監督が言っていたので、『じゃあ、やる?』と各劇場に声を掛けさせていただき実現することになりました。これ勝手にやってるものですから(笑)。そんな舞台挨拶でしたが東宝さんや各劇場支配人に協力していただき、楽しくやらせていただくことできました。ありがとうござました。これからも『HELLO WORLD』をよろしくお願いします」、BRIAN SHINSEKAIさんは「今回『2027Sound』の一員として参加させていただきました。今年の初頭ぐらいにちょっと行き詰まって悩んでいたんですが、そのときに見せていただいたこのアニメのラフスケッチにすごく感動したんですね。そこからいろんなことがつながっていったりと、僕の人生と映画がシンクロしているなっていうことが感じられてすごく楽しかったです。そんな『HELLO WORLD』ですが、また機会があったら映画の音楽をやっていけたらとはじめて思えた作品となりました。本当に感謝しています」とそれぞれイベントの感想や作品への想いをコメント。最後に伊藤監督が「映画を見ることで、今までに知っていなかった音楽に触れたりすることがあると思うんですが、今回BRIAN SHINSEKAIさんとの出会いはそうした映画ならでは出会いだと思っていますし、そうした出会いがこの映画で出来たのは嬉しいなと思っています。劇中での『らいぶざうんどくん』が汗をかいているカットがどこかとか、まだいろいろ発見があると作品だったりすると思いますので、ぜひこれからも『HELLO WORLD』を劇場で観ていただいて、見つけましょう(笑)。どうもありがとうございました」と語り、客席からの大きな拍手に包まれながら舞台挨拶は終了となった。

この後10月8日TOHOシネマズ上野で伊藤智彦監督と小松田大全さん(デザインワークス)による舞台挨拶も開催。今週末は大阪、名古屋、そして舞台となった京都の劇場をめぐる舞台挨拶ツアーも開催。『HELLO WORLD』からこれからも目が離せない。

HELLO WORLD」舞台挨拶スケジュールチケット等詳細は、各劇場のWebサイトにて確認してください。(WebNewtype・【取材・文:すわみさお】)

『HELLO WORLD』の舞台挨拶に登壇した伊藤智彦監督、音響監督の岩浪美和さん、音楽チーム「2027Sound」のBRIAN SHINSEKAIさん