Point
■マンモス絶滅の始まりは、氷河期が終わりを告げた約1万5千年前とされている
■地球最後のマンモスは、北極海に浮かぶウランゲリ島で生き延び、4000年前頃に絶滅したと判明
■温暖化の影響で海面が上昇し、大陸から隔離されたことで、ウランゲリ島は孤島となった
これまで地球最後のマンモスは、4000年前、北極海にあるウランゲリ島で、人間によって狩猟されたか、気候変動によって絶滅したといわれていましたが、詳しい原因はわかっていませんでした。
しかし今回、フィンランド・ヘルシンキ大学などの新しい研究によると、ウランゲリのマンモスが絶滅した原因は、隔離された生息環境と急な気候変動との組み合わせによるとのことです。
これまでにも、ウランゲリ・マンモスが地球最後の生き残りであるという説はありましたが、その絶滅原因まで深く調査されたのは今回が初めてでした。
研究の詳細は、「Quaternary Science Reviews」に掲載されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0277379119301398
海面上昇で生息地が絶海の孤島に
マンモスたちが最大の隆盛を誇ったのは、およそ10万〜1万5千年前の氷河期でした。生息域は、現在のスペイン辺り〜アラスカ(現在のカナダ北西部)にまで及び、天敵も少なく非常に快適な生活を送っていたようです。
最古のマンモスは、約500万〜400万年前に北アフリカで誕生し、絶滅時期は一般的に、更新世末期にあたる約4万〜数千年前とされています。氷河期が終わりを告げ、温暖化が始まったと同時に、マンモスの数も広い範囲で激減していったのです。
そして問題のウランゲリ島は、温暖化による海面の上昇に伴い、大陸から隔離された絶海の孤島にとなってしまいました。もともと同地域に住んでいたマンモスは、孤島に取り残されてしまい、その後の7000年以上を同地で過ごすことになるのです。
研究チームのHervé Bocherens氏は「ウランゲリに生息した最後のグループは、すでに退廃していた遺伝的性質に加えて、飲み水の質が劣化したことも災いし、絶滅の一途を辿った」と説明しています。
食事内容はウランゲリだけ変化なし
研究チームは、絶滅したマンモスたちの食事変化を調べるために、化石中の炭素や窒素、硫黄、ストロンチウムの含有度を調査しました。この割合の変化により、食事の変化も特定できます。
対象となったのは、シベリア北部とアラスカ、カナダ北西部のユーコン、そしてウランゲリ島から発掘されたマンモスの化石です。これらの化石に属するマンモスの生息年代は、約4万年前〜4000年前と大きな幅があります。
しかしその中でウランゲリ島のマンモスだけ、化石中の炭素や窒素の割合に変化が見られませんでした。これはウランゲリのマンモスが、比較的安定した食料摂取が可能だったことを示しています。
ウランゲリのマンモスが長く生き延びたのは、このような理由からだと考えられます。
しかしこの孤島も、温暖化の影響で岩石が風化し、その成分である硫黄やストロンチウムが川へと流れ込み、飲み水の質が低下していました。隔離された空間は、彼らにとって決して「楽園」と呼べるものではなかったのかもしれません。
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