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はじめに

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:Ferrari S.p.A

フェラーリから発表された「SF90ストラダーレ」は、跳ね馬の歴史上初となるプラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル(PHEV)で、最もパワフルで俊足な市販ロードカーである。

308GTB以来の長い歴史を持つ8気筒ミドシップ・ベルリネッタの後継車ではなく、ラ フェラーリに代表されるプレミアム・モデルとの間に位置する新たな高性能車レンジを担当するモデルとなる。

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フェラーリSF90ストラダーレ

モデル名の「SF90ストラダーレ」は、2019年シーズンのF1グランプリに参戦するF1マシンSF90の名を受け継ぎ、イタリア語でロードカーを意味するストラダーレを組み合わせたもの。

SF90ストラダーレ最大の特徴はフェラーリ初となるプラグイン・ハイブリッド・システムを採用し、8気筒ミドシップ市販車で初となる4WDを備えることにある。

ミドに搭載される3.9L V8ターボ・エンジンはフェラーリ8気筒モデル史上最高となる780psを発揮し、ここに3基のモーターによる220psが加わり、トータルの最高出力はフェラーリのロードカーとして最大となる1000psにも達する。

PHEVであることに加え、そのハイパワーを確実に路面に伝えるために、最新の電子制御によりエンジンとモーターを統括的に制御して4輪を駆動するもので、挙動も検知してアシストすることにより、限界域でのドライビングが安全に楽しめる。

外観

これまでのどのレンジにも属さない新たなジャンルに属するSF90ストラダーレだけに、そのエクステリア・デザインは内包する先進メカニズムに負けない全く新たな造形が採用された。

基本的なラインは従来の8気筒ミドシップ・ベルリネッタとは全く異なり、近年のフェラーリ・プレミアム・モデルからインスピレーションを受け継いだという。

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フェラーリSF90ストラダーレ

デザインはフェラーリ社内のフラビオ・マンツォーニ氏率いるマラネッロのチェントロ・スティーレ(デザインセンター)が担当したもの。スタイリング的にはスーパースポーツとして先鋭化しているが、各部を見てゆくとフェラーリらしい優美さを受け継いでいる。

デザイン的にはドラッグ低減と前面投影面積を減少させるためにキャビンを前進させた「キャブ・フォワード」レイアウトで、リアのオーバーハングは切り詰められ、ミドシップ・カーであることを主張する。

キャビンはコンパクトなドーム形状で、Bピラー部分らリアフェンダーにかけての造形は力強さを表現。リアフェンダー先端にはディーノ206gtに始まるサイド・インテークのモチーフが現代的解釈で継承されている。

ボディサイズは?

フェラーリとして初となるマトリックスLEDヘッドランプは、L字型のフォルムの内側にブレーキ・エアインテークを組み込み、特徴的なC字型となった細いスリットデザインのヘッドライトは、未来感を付与。機能的にもあらゆる状況下での視界を向上させるアクティブ・ビームコントロールが備わる。

デザイン的に大きく変わったのがリア・ウインドウの処理だ。360モデナ以来F8トリブートまでは、ルーフからリアエンドにかけて流れるラインで構成されていたが、SF90では新たな造形とされた。ルーフ後端が一段下げられ、往年のトンネルバック・スタイルを思わせるデザイン処理が施され後方視界を助けている。その後方にはエンジンをショーアップさせる役割も兼ねるリア・ウインドウが配され、そのまわりはブラックアウトされた。

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フェラーリSF90ストラダーレ

リアエンドのデザインも大胆に変更された。まず目に飛び込むのが角形となった4灯テールランプで、その形状からコルベットを思い起こさせる部分でもある。リアスカートはテールパイプが上方に位置することから大きく切れ上がり、その下にブラックアウトされたグリルとディフューザーが備わり、これまでにない強烈な印象を放つ。

ボディサイズは、全長×全幅×全高が4710×1972×1186mmとなっている。

エアロダイナミクス

現代のクルマを語るうえで欠かせないのが空力特性だ。

ことスーパースポーツとなると超高速の領域も加わるだけに、積極的なアプローチがなされている。

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フェラーリSF90ストラダーレ

SF90ストラダーレでは強大なダウンフォースの管理とともに、エンジンをはじめ熱対策が不可欠な電動モーターやインバーター、バッテリーパックなどのハイブリッド・システムのクーリングに注意が払われた。こうしてすべての面を突き詰められた結果250km/h時のダウンフォースは390kgを獲得している。

新たに採用された空力デバイスが「シャット・オフ・ガーニー」だ。これはリアエンド上面パネルに内蔵されたフラップが電動アクチュエータでパネルとともに下降して、流気をせき止めることによってダウンフォースを発生させるもの。

往年のガーニー・フラップを現代的に解釈したもので、大きなダウンフォースが必要となるコーナリング時やブレーキング時に作動する。このシステムによって生み出される追加ダウンフォースは、300km/h時で100kgになるという。

フロント部分では以前から採用されているフロア部分に配されたボルテックス・ジェネレーターをより進化させ、高いダウンフォースを得ている。フロント・バンパーはロアとアッパーに2分割され、それぞれがウイングの役割を果たす。

またヘッドライトの内側にはブレーキ・クーリング用のインテークが設けられて、リアはアンダーフロアから新気を取り入れてリア・キャリパーを冷却する。

内装

インテリアのデザインは刷新され、インターフェイスを重視した航空機のようなラップアラウンド・コクピットをテーマに開発され、今後登場するフェラーリの全ラインナップに引き継がれるという。

またヘッド・アップ・ディスプレイが初採用され、さまざまなデータをドライバー正面のフロントガラスに映し出し視認性を高めている。

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フェラーリSF90ストラダーレ

フェラーリとして初めてディスプレイは16インチのデジタルHD画面が採用され、見やすさを考慮してドライバーに向かって湾曲して配置される。画面の中央には、フェラーリの伝統に則って大きなレブカウンターが配置される。

レブカウンターの両側はナビゲーション画面や走行状態、センサー、ゲージ類の表示が選択でき、ディスプレイの下部には燃料計やバッテリー残量、オドメーター、外気温度、空調モードなどが表示され、すべての情報がディスプレイ内で確認できる。

メーター・クラスターの右、ダッシュ中央にはタッチコントロール式となった空調コントロールパネルが位置する。

シフトセレクター

インテリアで注目したいのがフロア・コンソールに配されたシフト・セレクターだ。

往年のクラシック・フェラーリを象徴するシフトゲートからインスパイアされたもので、これまでリバースやオートモードは丸い押しスイッチだったものを、シフトゲートに沿って操作するデザインにされた。

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フェラーリSF90ストラダーレ

ちなみに左列がリバース、中央列がオートマティック・マニュアル切り替え、右列がローンチ・コントロールとなる。

ステアリング・ホイールには、おなじみの走行モードを切り替えるマネッティーノのほか、スタータースイッチ、ライト、ワイパー、方向指示器、クルーズコントロール、オーディオ・コントロールを装備。

また、右スポーク部分に新たにタッチコントロール・パッドが設けられ、センタークラスター画面のセレクターとして使われる。

このほかクラスター左にはパーキングランプ、ミラー調整、フロント・リフターなどのタッチパネル・スイッチが配されている。

シャシー

SF90ストラダーレはハイブリッド・システムを備えるため、増加したシステム重量270kgはパワーアップで対応できたが、車両総重量を1570kgに抑えるためにマルチ・マテリアルとマルチ・テクノロジーによる軽量化が推し進められた。

シャシーは近代フェラーリの定型といえるアルミ・スペースフレームを継承するが新設計された。

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フェラーリSF90ストラダーレ

従来のリブ付き構造材に代わって採用した中空ケーシングで、新たなソリューションとしては、キャビンとエンジンを隔てるバルクヘッドにフルカーボン・ファイバーが用いられた。カーボンパーツはこのほかにもアンダーフロア・パネルやドアなどにも使用され軽量化に貢献している。

使われているアルミ合金は高強度の7000シリーズ合金で、SF90ストラダーレのシャシーは、従来の車体に比べて曲げ剛性20%強化、ねじり剛性40%強化を、重量増なしで実現している。またフロアには「静かなアルミニウム」として知られる新合金を採用することにより、NVHが改善された。

サスペンション

サスペンションは公式な発表はないが、構造説明用の動画を見るとフロントがダブルウィッシュボーン式、リアがマルチリンク式と8気筒ミドシップ・モデルでおなじみのタイプが踏襲されている。

ブレーキはフェラーリの定番となったカーボン・セラミック・マテリアル(CCM)製のローターで、フロントは398mm径、リアは360mm径が組まれる。

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フェラーリSF90ストラダーレ

1000psのパワーに対応するため、冷却風をローターとパッドに導く新型のブレーキ・キャリパーがブレンボと共同開発され、前輪にロードカーとして初採用されたことも見逃せない。

パワートレイン

ミドに搭載されるV型8気筒ターボ・エンジンは、エンジン・オブ・ザ・イヤーを4年連続で獲得したF154型を進化させたものを搭載。リッター当たり出力195psを実現するために、ボアを88.0mmに拡大。総排気量は3902ccから3990ccへと増大している。

あわせて吸気バルブを拡大するとともにバルブ狭み角をタイトにした新型シリンダーヘッドを採用。マニフォールドは吸排気側ともシリンダーヘッドの高さに揃えて流気の効率化が図られた。

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フェラーリSF90ストラダーレ

インジェクターはセンターに配置され、フェラーリV8モデルとして初となる350バールもの高圧で噴射される。

こうして最高出力はフェラーリ8気筒モデルのトップとなる780psを発揮し、ラ フェラーリの800psに迫る。この8気筒ユニットに8速オイルバス・デュアル・クラッチ・トランスミッションが組み合わせられる。後退時はフロントの電動モーターで駆動するため、リバース・ギアがなくなったことから、ギアボックスの軽量化と合わせて10kgもシェイプアップされた。

またクラッチにも改良の手が加えられ、最大許容トルクは122.37kg-mと大容量化され、さらに新たな油圧コントロール・システムの採用により、変速時間は488ピスタの300ミリ秒から200ミリ秒まで短縮されている。

ハイブリッド・システム

PHEVのSF90ストラダーレは内燃エンジンと3基の電動モーターを統合して駆動される。システムはリチウム・イオン・バッテリーからすべてのモーターに電力を供給。

電動モーターの1基は、エンジンとギアボックスの間に組み込まれ後輪を駆動。残る2基はフロントに搭載して左右の前輪を駆動することにより、フェラーリのミドシップ・モデルとして初の4WDとなり、強力なパワーを確実に路面に伝えることに成功した。

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また加速時に最大限の性能を発揮させるために、フロントの電動モーターはローンチ・モードと統合される。

ハイブリッド・システムの走行モードは、ステアリング左下に設けられたスイッチを選択することにより、状況に合わせてセレクトできる。

eドライブ:eD

完全電動のモードで2基の前輪モーターのみで最高速度 135km/h、25kmの距離を走行ができるので、住宅地で早朝深夜のガレージ出し入れ時に重宝しよう。

ハイブリッド:H

標準モード。内燃エンジンが稼働時は最高出力でドライブできる。

パフォーマンス:チェッカーフラッグ・ロゴ

内燃エンジン主体でバッテリーの充電が優先されるが、必要であれば瞬時にフルパワーも可能。

クオリファイ:ストップウォッチ・ロゴ

システム全体の最高出力が発揮できるモードで、電動モーターはポテンシャルを最大化し、バッテリーの充電よりもパフォーマンスを優先させる。

装備

1000psを発揮するスーパースポーツだけに、運転支援システムはパフォーマンスを安全に楽しむためのビークル・ダイナミクス・コントロール(トラクション、ブレーキ、トルク・ベクタリング)が積極的に採用されている。

eSSC(エレクトリック・サイドスリップ・コントロール)は、4輪すべてのトルクに、3つの革新的なダイナミック制御と分配ストラテジーを行う。

エレクトリック・トラクションコントロール(eTC)

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フェラーリSF90ストラダーレ

ICE(内燃エンジン)と電動モーターのトルク供給を最適に管理し、各ホイールにドライビング・スタイルとグリップに合わせて分配される。

ABS・EBDによるブレーキ・バイ・ワイヤ制御

ブレーキ・コントロールを油圧システムと電動モーターとの間で分配させ(ブレーキ・トルク・ブレンディング)ブレーキング時における回生エネルギーを回収し、性能とブレーキ・フィールを向上させる。

トルク・ベクタリング

コーナリング時に前輪イン側とアウト側のグリップを個別に管理し、コーナー脱出時のトラクションを最大化させ圧倒的なドライビングを可能にする。

RAC-e(電子コーナリング・セットアップ・レギュレータ)は、2基のフロント電動モーターが独立してトルクを制御し、トルク・ベクタリングのコンセプトを拡張するシステムで、加速時に前輪がトラクション全体を助け、限界域でのドライビングを一層コントローラブルにするもの。

アセット・フィオラーノ・パッケージ

新ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、電動モーター(ジェネレーター)でダイナミック・エネルギーを回収し、ドライバーに気づかれることなく油圧と回生ブレーキによるエネルギーを電子制御でミックス。

一般的なブレーキング時は電動モーターによるエネルギー回生が優先されるが、ハード・ブレーキング時は油圧システムが介入して電気システムをアシストする。

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フェラーリSF90ストラダーレ

また、SF90ストラダーレには、フェラーリとして初となるヴァリエーション・モデルが用意された。

標準仕様に加え、「アセット・フィオラーノ・パッケージ」と呼ばれるサーキット走行のために性能を突き詰めた仕様だ。高いリア・スポイラーが備わるほか、内装の簡略化と各部をカーボンパーツに置き換えることにより30kgの軽量化を実現。いわばこれまでの8気筒スペチアーレ・モデルを当初からカタログ・モデルにしたものといえる。

スペック

車名:フェラーリSF90ストラダーレ
パワートレイン:3990ccV8ターボ+モーター
ステアリング:右/左
全長:4710mm
全幅:1972mm
全高:1186mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1570kg
前後重量配分:前45%/後ろ55%
最高出力(エンジン):780ps/7500rpm
最大トルク(エンジン):81.6kg-m/6000rpm
比出力:195ps/L
最高出力(モーター):220ps
システム統合出力:1000ps
バッテリー容量:7.9kwh
燃料タンク容量:68L
最高速度:340km/h
0-100km/h加速:2.5秒
0-200km/h加速:6.7秒

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