朝ドラ常連俳優が描く「水先人」の物語を、45分の航海で楽しむ。

関西在住の劇作家が、関西に実在した人物や実際に起こった事件を元にしたドラマを書き下ろす企画「イストワール histoire」シリーズ。第10回となる今回は、大阪の劇団「PM/飛ぶ教室」主宰の蟷螂襲(とうろう・しゅう)による『港でカモメがやすんでる日はね、千帆ちゃん』を、なんと実際に神戸港内を航海しながら上演する。

「匣(はこ)の階」が上演した、イストワール第8話『Port- 見えない町の話をしよう -』(2017年)より。

「匣(はこ)の階」が上演した、イストワール第8話『Port- 見えない町の話をしよう -』(2017年)より。

「NHK朝の連続テレビ小説」(朝ドラ)の大阪制作版に、近年ほぼすべての作品に出演するなど、俳優としての活動がよく知られている蟷螂。しかし「PM/飛ぶ教室」では作・演出を務め、登場人物一人ひとりの心情を、繊細かつ豊かな言葉で紡ぎ出す人間ドラマで評価が高い。1998年には『滝の茶屋のおじちゃん』で「第5回OMS戯曲賞」大賞を受賞している。

『港で……』は、港内の航海の安全を助ける「水先人」がテーマ。国家試験に合格すれば、誰もが水先人になれるようになった時代、女性初の水先人を目指す「千帆ちゃん」の話が描かれる。その物語を、神戸港を遊覧するクルーズ船「ファンタジー号」内で上演。海に魅せられ、海とともに生きる決意をした女性の物語を、波の揺れと潮風を感じながら観劇するとは、実に臨場感満載だ。まるで穏やかな大海を思わせるPM/飛ぶ教室の世界観も相成って、貴重な観劇体験となるに違いない。

イストワール histoire『港でカモメがやすんでる日はね、千帆ちゃん』公演チラシ。 [宣伝美術]チャーハン・ラモーン

イストワール histoire『港でカモメがやすんでる日はね、千帆ちゃん』公演チラシ。 [宣伝美術]チャーハン・ラモー

PM/飛ぶ教室『とりあえず、ボレロ』(2015年)より。左端が主宰の蟷螂襲。