犯罪の被害者を救済することを目的に、国は様々な施策(犯罪被害者等施策)をもうけています。主に、犯罪被害給付制度、被害者参加制度(犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度)、損害賠償命令制度の3つが知られていますが、こうした制度は被害者にとって救いとなっているのでしょうか。

心情等伝達制度、損害賠償命令制度の2つを例に考えます。(元保護観察官・ライター/安彦和美)

「心情等伝達制度」とは?

犯罪や非行をしてしまい、家庭裁判所から保護観察の処分を受けたり、少年院を仮退院した少年や、刑務所を仮釈放になったり、保護観察付の執行猶予を言い渡されたりした成人などは「保護観察」を受けることになります。保護観察は、保護観察官や保護司が更生のための指導・支援をおこなうものです。

保護観察所では被害者への支援もおこなっています。たとえば、「心情等伝達制度」は、保護観察所が被害者の心情などを聴き、保護観察中の加害者に伝える制度です。メリットデメリットとして、次のようなものがあります。

メリット> ・保護観察所が仲介するので、加害者から逆恨みされるリスクが低い ・万が一、加害者が逆恨みした場合には、保護観察所に相談できる ・被害者側の個人情報(住所や連絡先)を加害者に伝えずに済む ・加害者の返答が欲しい場合は、返答を要望することができる ・行政サービスなので、利用は無料 ・回数無制限で被害者窓口の専門スタッフに相談できる

デメリット> ・単なる「伝言サービス」であり、被害弁償を確約するものではない ・行政は金銭の受け渡しを仲介できないので、金銭授受が発生する場合は送金をしたり、代理人を立てたりする必要がある ・加害者が保護観察中しか利用できない ・被害者本人や遺族のみしか利用できない

制度を利用した被害者からは、「加害者の連絡先がわからずに、被害を抱え込むだけだったが、制度を利用して加害者に私のつらさをぶつけることができて救われた」「出所した加害者から〝働いたらお金を少しずつでも支払います"と返事があり、少し安心することができました。逃げ得は許したくありません」などの声が寄せられています。

2008年に始まった「損害賠償命令制度」

「加害者から誠意ある謝罪を受け、被害を弁償して欲しい」。そんな被害者の思いを受け、2008年に「損害賠償命令制度」が始まりました。

この制度は、被害者が損害賠償命令の申し立てを行い、刑事事件を担当した裁判所が、有罪判決の言い渡し後に引き続き損害賠償命令の審理を行い、申し立てに対する決定を行うというものです。費用は2000円で、新たに民事裁判を起こすことに比べると、被害者の負担が少ない制度です。

しかし、この制度に基づき被害者が救われているかと言えば、そうとは言えません。

刑事事件として処罰を受けた場合は、「刑事罰で罪を償った」という意識になってしまい、損害賠償に対して不誠実になる傾向があります。加害者の中には、刑事裁判が終わると居場所が分からなくなり、連絡も取れなくなることが少なくありません。

また、加害者に全く資力がないケースも多いため、加害者に対して損害賠償請求を認める判決が出ても、全額支払われるケースは稀です。

平成20年度の警察庁の調査によると、加害者から「被害弁償を受けた」と答えた被害者は30.3%です。7割の被害者が弁償を受けられていません。損害賠償請求をしてものらりくらりで、不誠実な態度を取るばかり……。これではますます、被害者のつらさは増してしまいます。

被害者救済制度の利用方法は?

被害者救済制度を利用する際は、検察庁の「被害者ホットライン窓口」や、最寄りの保護観察所の被害者相談窓口(被害者専用番号)などに問い合わせをしてみましょう。制度を利用するためには、さまざまな要件がありますから、どんな制度を利用できるのか、利用した場合のメリットデメリットは何かなどについて、まずは相談されることをお勧めします。

制度利用に際して申し込み等の手続きが不安な場合や、近くに保護観察所がない場合は、被害者支援を専門とする弁護士に委任しているケースも多くみられます。

被害者支援業務に携わる、ある弁護士は「被害弁償の支払いをすぐに受けられず、時効が成立してしまうことを心配する人もいるでしょう。しかし、加害者から『返済します』という文書の意思表示があれば、時効が延長になります。制度を使えば、このようなことも可能となるので、メリットは大きいといえるでしょう」と話します。

被害者支援、制度を使ってなぜ「つらさ」は増したのか?