京成が、成田空港アクセスを担う新型車両3100形に、座席の一部を荷物置き場にする仕組みを導入。利点はどこにあるのでしょうか。またこの車両は、今後の京成グループ標準車両。車内環境を向上させる様々な装置が導入されています。

8人掛け座席の中央2席が折りたたみ可能

京成電鉄に新型車両「3100形電車」が登場。2019年10月10日(木)、宗吾車両基地(千葉県酒々井町)で報道陣へ公開されました。

2020年の「東京オリンピックパラリンピック」を見据え導入されるもので、おもに、東京都心と成田空港を結ぶ成田スカイアクセス線の「アクセス特急」として走行(地下鉄・京急経由で羽田空港にも直通)。大きな荷物を持った乗客を想定し、窓へ沿って設置されている長椅子(ロングシート)の一部座面を折りたたみ、そこへスーツケースを置けるようにしているのが特徴のひとつです。

8人掛け座席の中央2席を折りたたみ、大型スーツケースを3個程度置くことが可能。1両に4か所設けられています(先頭車は3か所)。

路線の性格上、車内荷物スペースの必要性が高いなか、座席をなくしてそれを設けるより、この形であれば状況により着席人数を増やせるほか、「自分の荷物は近くに置きたい」という心理に応え、またドア付近に大きな荷物があって乗り降りがしづらくなる状況の改善にも繋がるといいます。

この「座席折りたたみ機構」、どうやって使う?

この折りたたみ機構は、乗務員室から一括でロックが可能。京成電鉄によると現在のところ、ロックはせず、座席として使うか、荷物置き場として使うか、状況に応じて乗客が使い分けられるようにするそうです。

このほか、成田スカイアクセス線用の車両らしい特徴としては、「旅の高揚感を感じてほしい」ところから車体に飛行機や成田山新勝寺といった沿線の名所が描かれているほか、成田スカイアクセス線の案内カラーである「オレンジ」をデザインに採用。京成船橋駅などを経由し東京と成田空港方面を結ぶ別ルート(京成本線)の列車と車体の色で区別し、誤乗車防止を図るそうです。

なお、すでに成田スカイアクセス線で「アクセス特急」として走っている3000形電車(7次車、3050形)についても今後、同様にオレンジを基調としたデザインに変更。京成電鉄は誤乗車の防止に努めるといいます。

京成電鉄の新型車両3100形、コンセプトは「受け継ぐ伝統と新たな価値の創造」です。質実さ、実用本位という京成電鉄の車両における基本思想を大切にしつつ、空港アクセスを担う車両としてより便利で快適な移動空間を提供する、とのこと。京成グループにおける今後の標準車両でもあります(このたび新京成電鉄にも、基本構造が同じ80000形電車が導入される)。

今後の「京成グループ標準車両」3100形 色々あるその特徴とは?

このほかの特徴としては、以下が挙げられます。

・防犯カメラを1両に3台設置し、車内セキュリティーを向上。
車いす、ベビーカー利用者向けのフリースペースを中間車両に設置。先頭車両には従来と同等の車いすスペースを用意。
・乗降用ドアの車内上部に、液晶モニターを2画面ずつ設置。停車駅や乗り換えなどの案内、広告といった情報を表示する。
・空気の浄化効果があるというプラズマクラスターイオン発生装置の導入。空調制御ソフトの見直しなどにより、車内環境を改善。
・だれでも利用できる無料Wi-Fiの設置。
・ロングシートの背もたれを高くし、座り心地を改善。
・車外の行先表示器を大型化し、視認性を向上。
・モーターへの電流を制御する装置に、最新の半導体を使用したSiC-VVVF制御装置を搭載。従来車両(3000形)のIGBT-VVVF制御装置より、消費電力を約15%削減。

この新型車両3100形は、2019年10月26日(土)のダイヤ改正から運行を開始する予定。まず2019年度中に8両2編成、合計16両が導入されるほか、2020年度以降も継続して5編成を導入。現在、成田スカイアクセス線で「アクセス特急」として走っている3000形電車(7次車、3050形)を順次、置き換えていく予定といいます(3050形は将来的に京成本線へ)。

ロングシートの一部を折りたたみ、スーツケースを置ける京成3100形。座席には千葉県の花「菜の花」がデザインされている(2019年10月10日、恵 知仁撮影)。