10月8日(火)、TOHOシネマズ上野で、全国東宝系にて大好評ロードショー中のオリジナル劇場アニメーション『HELLO WORLD』の舞台挨拶が行われました。この舞台挨拶に先立って、伊藤智彦監督とデザインワークスで参加したゲストの小松田大全さんにお話をうかがいました。舞台挨拶の補完になるような内容になっています。

劇場アニメーション「HELLO WORLD」舞台挨拶 TOHOシネマズ上野より

――今後も舞台挨拶が続きます。

伊藤 観客動員に多少なりとも貢献できるならなんでもやりますよ、と言ったので、中部や関西にもお邪魔することになりました。話をしているうちに思い出すことも多いので、話すエピソードもいろいろありますし。

小松田 僕は9月末ぐらいにグラフィニカの方から「こういう話がきている」という話をもらいました。いちスタッフとしてお役に立てればというつもりで、今日はやってきました。

――おふたりは学生時代からの知り合いとか。当時のお互いの印象を教えてください。

伊藤 小松田さんは僕が会ったころは、もうProduction I.Gに入ることがほぼ決まっていて。「こういうひとがプロになるんだなぁ」と思ってました。

小松田 僕は逆に、伊藤くんが監督になりたい人だと思っていなかったんで、制作進行から演出になり、監督になった時に「え、監督になりたい人だったんだ」ってちょっと意外に思ったんですよ。なんでも思ったことを口にだしちゃう自分と違って(笑)、伊藤くんは本心をなかなか言わないタイプだったので、そういう印象になったんですよね。

――今回、小松田さんにデザインワークスを依頼しようと思ったのはなぜですか。

伊藤 今回、制作会社であるグラフィニカの状況とかを考えると、自分でデザイナーさんに声をかけたほうがいいだろうと考えたんです。それでドローンとかメカ関係を小松田さんにお願いしたいと声をかけたんです。

小松田 僕も伊藤くんの状況がよくわかるので、声をかけてもらった時には「これはもう協力するしかない」と思って引き受けました。

伊藤 で、最初はドローンだけだったんですが、藤田和日郎先生にお願いした狐面について、アニメ用にリファインが必要ということになって、それで「こちらもお願いしたいんですが」と追加でお願いしたんです。

――アニメ用にリファインする時には3DCGであるということは意識したんでしょうか?

小松田 いや、3DCGはなんでもできちゃうんで、コンセプトを練る段階ではそこをあまり意識してもしょうがないな、と。狐面については、藤田先生の原案でほぼ完成していたので、立体にした時に映えるように模様を入れたり、大きな目玉が出てくる時に、どこの部分がどう変化するかを考えたぐらいです。九尾の狐モチーフにした人型の第三形態は、原案にある“現代の妖怪”という部分を踏まえつつ、狐面との間をどう埋めていくかを、コンセプトから考えていきました。

――すると、手の形をした第二形態については小松田さんが膨らめた部分なのですね。

伊藤 そうなりますね。あそこについては脚本でも「第1段階」って書いてあるだけですし。僕は最初は、第三形態を小さくしたようなものを出せばいいのかなと思っていたんですが、どうやらそれでは済まないな、という流れになって。それで最終的に手の形に決まりました。

――小松田さんは監督作である『ブブキ・ブランキ』でも通称・右手ちゃんという手の形をしたキャラクターを登場させていますよね。

小松田 そうなんですよ。僕は子供の頃に手塚治虫の『どろろ』で百鬼丸の腕が抜けるところを見た時から、切り離された手というモチーフがすごく好きなんです。ぎょっとするところがあって。だから『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』でルークの右腕が切り落とされる<ライトハンドカットオフ>もものすごく印象に残っていますし。そういう意味では、第二形態は、自分の得意なところにまた持ち込んでしまったという感じがありますね。……それを監督に言ったら「してやったりですよ」みたいな反応だったですが。

伊藤 (笑)。僕はそれでいうと『どろろ』や『スター・ウォーズ』とかではなく、『キン肉マン』のスニゲーターの印象で第二形態を見ていましたね。『キン肉マン』世代なので(笑)

小松田 巨大なスニーカーの紐を解くと、中にワニの前足が入っているというのはインパクトがありましたね(笑)

――画面上の第二形態、第三形態は細かい紐が集まったような姿をしていますが、3DCGで表現するのは大変だったのでしょうか?

伊藤 単純にまずレンダリングに時間がかかりますよね。だから「なるべくリテイクを重ねたくない」とは言われましたが、リテイクは出しましたね。結構ギリギリになった段階でも、パーツめり込みが発見されたりしましたけれど、リテイクしましたし。

――完成した第二形態、第三形態を見ていかがでしたか?

小松田 「撮影処理がのる」という話は聞いていましたが、予想以上にいろいろのっていて、手をかけてもらって異形感が増しているなぁと思いました。個人的には第二形態と第三形態のスケールの違いがもうちょっと出るようなデザインにしておけばよかったかなとは思いました。

伊藤 僕も完成したものを見て、第三形態が人型であることが、もっとはっきりわかるようなカットを入れたてもよかったかなとは思いましたね。

――狐面と戦う時に直実が「本を使う」というアイデアも印象的でした。

伊藤 本が好きなら本を武器にしないんじゃないか、とも言われたんですが、神の手(グッドデザイン)ってそこまで便利な道具じゃないんですよ。『HUNTER×HUNTER』の具現化系念能力と同じで「なんでも斬れる剣」とイメージしても、その通りそれが出せるわけじゃないんで(笑)。直実からすると、本ぐらいしか思いつかなかったんですよ。

小松田 クライマックスで大人のナオミに「ロケットブースター」っていわれて、すぐブースターを出すでしょう? あれはやっぱり直実がブースターについて勉強していたの?

伊藤 勉強していたんですよ(笑)。実は、直実の部屋にはこっそりとロケットとコマが置いてあるんです。恐竜の人形もあるので、直実はそういうのが好きな子供だったんですね。で、一方、大人ナオミは、久しぶりに自分の部屋に入って、ロケットとかコマが置いてあるのを懐かしく思ったんでしょう。それであの土壇場でロケットブースターとコマが出てくるという。まだロケットとコマに気づいていない方は、今度見る時に探してみるのもおもしろいかもしれません(笑)

小松田 そういうことだったんだ。

伊藤 もちろん実際には、クライマックスの展開があったので、ヒントになるように後付で仕込んでいったわけですけど。

――小松田さんは完成した映画を見てどんな感想を持ちましたか。

小松田 最初に見た時は当然直実とナオミの関係性を軸に見ていたんですが、2度目に見た時は、瑠璃の物語だと思ってみたんです。そうするとナオミの必死さの向こうに、瑠璃の必死さが想像できて。その視点が多重にあるのがこの作品のいいところだと思いました。

――10月12日からは大阪・京都・愛知で舞台挨拶です。愛知は伊藤監督の出身地ですね。

伊藤 舞台挨拶をするうちのひとつ、ミッドランドシネマ名古屋空港は、実家のある地域のわりとすぐ近くなんですよ(笑)。あと、おかげさまで関西は特に入りがよいようで、そういう意味では、お礼の舞台挨拶ですね。まあ、あれだけ京都をフィーチャーしているわけですから、関西で響かなかったらショックを受けていたと思います(笑)

――これから舞台挨拶におもむく地域の方に何かメッセージはありますか?

伊藤 音響監督の岩浪さんに、これから地方で舞台挨拶をする、という話をしたら「できるだけファンの方にサービスしてくるといいよ」というようなことを言われました。決して出たがりというわけじゃないんですが、サービスをしたい気持ちはあるので、時間があればお邪魔した映画館のロビーにいたりします。見かけたら声をかけてみてください。(WebNewtype・【取材・文:藤津亮太】)

劇場アニメーション「HELLO WORLD」舞台挨拶 TOHOシネマズ上野より