不朽の名作『ジョーズ』(75)をはじめ、“サメ+トルネード”の斬新な組み合わせ『シャークネード』、巨大なサメと怪物との戦いを描いた『メガ・シャークVS~』といったB級シリーズまで、海洋パニックムービーの主役として愛されているサメ。そんな圧倒的な存在に後塵を拝してきたワニだったが、その力を存分に発揮した本気の作品がついに公開となった!

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基本的に河川に生息するため、海をフィールドとするサメに比べて、圧倒的に映画のシチュエーションに向いていないワニだが、そんなハンデを乗り越えているのが『クロール ―凶暴領域―』(公開中)だ。『死霊のはらわた』シリーズのサム・ライミが製作を務める本作は、巨大ハリケーンの影響で水位が上がってしまったという設定の妙により、ワニたちが家の中に続々と出現。そこからの脱出を目指すという、想像するだけで身の毛もよだつシチュエーションスリラーだ。

本作を手掛けているのが『ハイテンション』(03)、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06)など、ショッキングなホラーを次々と生み出してきた鬼才アレクサンドル・アジャ監督。スプリングブレイクに浮かれる湖畔の田舎町に、凶暴なピラニアが大量発生するという騒動を描いた傑作『ピラニア3D』(10)では、巧みな水の演出、どう猛な動物の描き方を披露した。

そんなアジャ監督の手腕が炸裂しまくっている本作。何より恐怖を感じさせるのが、このシチュエーションがリアルな状況として描かれているということ。アジャ監督はワニを“いかにも”な敵として描くことを嫌い、天災とワニの組み合わせという十分に起こり得る現象、そこで人を襲うということをあくまで自然の摂理として描写することで、現実味を構築することに成功している。

さらにアジャ監督はワニについて徹底的にリサーチし、そのリアリティをより強く打ち出すための最も効果的な方法として、機械仕掛けの模型とCGを使い分けながらスクリーンに登場させている。「誰もが知っている生き物だから、ミステリアスな存在ではなくリアルなものにして、隠さずどんどん登場させたかった」とのコメント通り、いつ出てくるの?という思わせぶりな演出ではなく、手加減なしにバンバンと襲いかかってくるという描き方で、ルックスも含めたそのどう猛さ、そして水陸自由に動き回れるワニの脅威をとことんアピールしているのだ。

家の中がワニまみれに…とあらすじを聞くと、どこかB級感を覚えてしまうかもしれないが、蓋を開けてみれば、現実味のありすぎる恐怖を描いた堂々たる作品に仕上がっている『クロール ―凶暴領域―』。ワニの恐ろしさを劇場で身をもって体感して!(Movie Walker・文/トライワークス)

ホラー界の鬼才によるワニ映画が怖すぎ!