トルコは昔から東西交易の中継点として地政学的に重要な戦略拠点でした。米ソ(露)、欧州と中東を結ぶ国として、トルコは冷戦後もほかのNATO諸国が軍縮する中で軍事力を維持してきた経緯があります。その軍容を見ていきます。

昔から戦略的に重要な国の軍事力とは

2019年10月9日(水)、トルコ軍はシリアに対して越境軍事作戦を開始しました。シリア北部はクルド人勢力が実効支配しており、トルコ軍とクルド人武装勢力との間で戦闘が行われています。

トルコ地中海と黒海を結ぶボスポラス海峡が国の南北を貫き、ヨーロッパとアジアの接点として軍事的にも重要な国で、NATO(北大西洋条約機構)にも加盟してきました。

トルコ軍は、陸海空の3軍と、国家憲兵隊、沿岸警備隊の5軍種からなります。歴史的に陸軍中心で、戦力的にも陸軍が一番大きな比重を占めており、その戦力はNATO最大のアメリカ陸軍に次いで第2位の規模で、冷戦終結後に縮小したドイツフランスを上回ります。

その背景には、古来より東西交易の連絡地点として栄えてきた歴史や、冷戦中は黒海を挟んだ対ソ連の最前線、そして領土や難民などの面で問題の火種をはらむイランシリアギリシャなどと陸続きであるという地勢的理由があります。

トルコ海軍の戦力は、領海が狭いため、陸軍や空軍と比べると規模は小さいですが、隣国ギリシャキプロス島の領土問題を抱えている関係から領海問題においても緊張関係が続いており、また黒海にはロシア海軍の「黒海艦隊」が存在するため、その監視にもついています。

トルコ空軍の戦力もやはりNATO有数で、アメリカ製の最新鋭戦闘機F-35Aの導入を進めていましたが、同国陸軍がロシア製のS-400地対空ミサイルを導入したことで、アメリカはF-35Aの引き渡しを凍結、パイロットの訓練もストップしています。

今回は内陸国であるシリアに対して攻撃を行っているため、海軍は出てきていませんが、中東有数の軍事力を誇るトルコはどの程度陸軍や空軍を投入するのか、各国は注視しています。

シリア侵攻直前の2019年10月4日、シリアとの国境沿いをアメリカ陸軍の装甲車(中1両)とともに警備中のトルコ軍装甲車(画像:アメリカ陸軍)。