ますます広がる日本社会の格差。その日暮らしを強いられる年収100万円程度の人たちは、過酷な環境下でどのように過ごしているのか。今回は年齢とともに過酷さが増す中高年に注目。社会から見捨てられた漂流者たちのリアルを取材した。

◆息を潜めて眠る……やむにやまれず空き家に住む人たち

「NPOに届くSOSの中には、空き家から発せられたものも少なくありません。彼らは家賃も税金もかかないからと、勝手に住みついてしまうんです」

 と、社会福祉士の藤田孝典氏が話すように、実際に半年前から神奈川県東部のとある空き家に住みついているのは太田龍二さん(仮名・48歳)。飲食店の経営失敗による借金で首が回らなくなり、知人宅を転々とした後に、空き家に住むことを思いついたという。

住居侵入罪ではあることは、重々承知している。ただ、家を借りるお金はなく、ネットカフェに泊まるのすら厳しい。逮捕されるのは怖いので、寝袋とリュック一つの『素泊まり』程度に滞在し、1か月住んだら次の空き家に移動しています。

 夜中にちょっと物音がするだけで、スグに起きるという習性が身についてしまいました。だから雨の日、台風の日などは誰も出歩かないから、ぐっすり眠れるんですよ(苦笑)」

 鍵のかかっている空き家が大半のため、ピッキング道具を安く買いそろえたという。

自転車の鍵を開けるのと、コツは同じです。指紋を残したくないから、ビニール手袋をつけるのだけは忘れないようにしています。こんな生活は一刻も早く抜け出したい。宿泊料は“無料”だから、日雇いで敷金・礼金を貯められるように頑張りたいです」

 貯蓄に成功するのが先か、捕まるのが先か。追い詰められた彼の選択肢は少ない。
 
◆低所得者への家賃補助もない実情

 貧困に苦しみ貯金もなく民間の賃貸住宅を借りられない中高年。そんな彼らが不法行為に流れる前に公営住宅などに入ることはできないのだろうか? 藤田氏はこう語る。

「公営住宅が住宅全体の3%にとどまり、低所得者への家賃補助もないのがこの国の実情です。社会的な構造が貧困を生み出しているのは否めません。セーフティネットが著しく弱い社会にもかかわらず、転落のきっかけが無限に存在するのです」

 平成30年、全国の空き家率は過去最高の13.6%で846万戸に上り、東京都だけで81万戸もが空き家なのである(総務省平成30年住宅土地・統計調査」概数集計)。各自治体は空き家の活用を検討しており、生活困窮者の支援に使えないだろうか、という声も挙がっている。
 そうすれば、やむにやまれず不法侵入する人も減ると思うのだが、実現への道のりは遠そうだーー。

 振り返れば断崖絶壁という絶体絶命サバイバル生活を、中高年の漂流者たちは今日も目隠しのまま歩み続けている。

<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!10月8日発売号「年収100万円の絶望 漂流する中高年編」

太田龍二さん(仮名・48歳)