法曹人気がなくなったーー。

近年の司法試験の受験者数や法科大学院の志願者数の減少トレンドを受け、このような声が上がることも少なくありません。要因として、法科大学院の合格率が7割に満たないことなどを指摘する声もあります。

日本弁護士連合会(日弁連)は「不人気説」について、どのように考えているのでしょうか。副会長の関谷文隆弁護士らに話を聞きました。

司法試験受験者数の減少は「制度改革が進んだ結果」

ーー司法試験の受験者数は8765人(2011年)から4466人(2019年)に減少しています。なぜ、減ってしまったのでしょうか。

「受験者数が減少したのは、法曹志望者数が減ったこと、魅力がなくなったことなどが要因だといわれることもあります。

しかし、法科大学院の定員規模の適正化、修了認定の厳格化が進んだ結果でもあるといえます。法科大学院の制度改革は着実に進んできています」

ーー具体的に、どういうことでしょうか。

法科大学院の入学定員は、2007年度は5825人でしたが、2019年度は2253人となりました。統廃合によって法科大学院の数が減り、定員も削減されています。

それとともに、法科大学院の修了認定も厳格化されました。

標準年限修了率(修業年限で修了できる割合)は、80%(2007年度)から64.8%(2018年度)となっています。6割強が卒業できるような教育の厳格化が進んだといえるでしょう。

法科大学院の修了生の質を高め、司法試験の合格率を高めるという政策が実行されているとともに、司法試験受験者、ひいては司法試験合格者のクオリティが維持されてきていると分析しています」

法科大学院の入学希望者「上昇傾向にあるのでは」

ーーこれまで、法科大学院の志願者数は減少傾向にありましたが、2019年度の志願者数、入学者数はいかがでしょうか。

2018年度の志願者数(のべ人数のため、実際の人数ではない。併願者も含まれる)は8058人でしたが、2019年度は9117人となっています。また、入学者数(実数)も1621人(2018年度)から1862人(2019年度)に増加しました。

一方、その年に入学者募集をおこなった法科大学院の数をみると、39校(2018年度)から36校(2019年度)に減っています。

これを比較すると、法科大学院の入学希望者が底打ちし、上昇傾向にありつつあるのではという見方をしています。法科大学院の競争倍率も2.06倍(2018年度)から2.23倍(2019年度)となり、高くなっています」

ーーなぜ、2019年度は志願者数が増えたのでしょうか。

「分析中です。私どもの地道な広報活動が実を結んだと考えたいと思っておりますが、あとは司法修習生の修習給付金制度が2017年から実施されていること、就職状況が一定程度安定化し、司法試験合格後の見通しがつきやすくなったこと、経済条件の好転など諸要素あると思います。

ただ、検証可能な方法でリサーチしたものではないので、実際の要因はわかりません。いろいろな複合的な事情だと思います。

予想の域を出ませんが、法科大学院の入試を受けるために必要な試験だった法科大学院統一適性試験が廃止になったことも要因ではないかといわれることがあります」

ーー当初は全国に74校あった法科大学院も36校まで減りました。法科大学院の統廃合については、どのようにお考えですか。

「日弁連は、かねてから一定の統廃合はやむを得ないというスタンスでした。

2012年に出した『法科大学院制度の改善に関する具体的提言』では、スリム化が必要だということを申し上げています。提言の趣旨は『法科大学院の教育理念に基づく法曹養成教育の質を維持・向上させるために、法科大学院の統廃合と学生定員・入学者総数の大幅な削減を促進することとし、そのために法科大学院について以下の措置を実施すべきである』としています。

入学定員をきちんとしぼり、合格者数を一定数に固めて、合格率を安定させ、法科大学院を再構築するという内容です」

新制度に期待「経済的負担が少なくなる」

ーー「裁判官や検察官の任官は増えていない」という主張もみられますが、いかがでしょうか。

「日弁連は、2003年10月の『裁判官及び検察官の倍増を求める意見書』において、裁判官と検察官をその後の10年間で倍増させる必要があると述べてきました。

しかし、裁判官2003年2333名であったのが2018年2782名、検察官は2003年に1521名であったのが2018年で1957名と、十分な増員がなされているとは言えません。

裁判所の司法機能や役割が十全に果たされるためには、裁判官・検察官のこれまで以上の増員が必要です」

ーー政府は6月、大学法学部法科大学院を5年で修了できる新制度の関連法案を成立させました。新しい制度により、「法学部」「法科大学院」の人気が上昇することは期待できますか。

「期間が短くなるということは、時間的負担とともに、経済的負担が少なくなるということになります。学生の選択肢が増えることになりますし、学生のニーズに応えることにもなるでしょうから、人気が高まっていくことを期待しています。

一方、新制度のみに注目が集まり、法科大学院の『法学未修者』が置いてけぼりになってしまうのではないかということも指摘されています。法学未修者についても、さらなる教育の充実・改善や広報活動の強化などの取り組みを考える必要があると思っています」

司法試験の受験者減少は「悪いこと」なのか? 日弁連に「法曹不人気説」をぶつけてみた