大自然の魅力を生かした伊豆再生計画が着々進行
90年代のバブル崩壊を境に衰退していた温泉街・熱海(静岡県)がV字回復を遂げ、昨今、若い観光客やインバウンド需要で活況を呈しています。それと同じく、熱海より先の伊豆エリアもまた「大人のリゾート地」として復活していることをご存知でしょうか?
1961年、伊東~下田を結ぶ伊豆急行が開通し、熱川・稲取・下田といった温泉地や今井浜・白浜などの人気海水浴場を擁する伊豆エリアは、80年代に年間観光客数6000万人を超える一大行楽地として栄えたものの、バブル崩壊以後の経済停滞により、近年は観光客が半数近くまで減少していました。
しかし、2011年の伊豆急行開業50周年を機に、東急電鉄や伊豆急行、地元観光協会や民間企業が、伊豆地域を盛り上げるべく一丸となって再生プロジェクトを実施。新たな産業として大規模なオリーブ栽培もスタートし、2017年には観光列車「THE ROYAL EXPRESS」の運行を開始するなど、新たな観光客の誘致に成功。再び人気を取り戻しているのです。
この“新生伊豆”を盛り上げる、注目の地中海料理レストランについて、その魅力をご紹介していきましょう。
三國清三×隈研吾がコラボした地中海料理レストラン
そんな新たな魅力あふれる伊豆エリアに、新規オープンしたのがオテル・ドゥ・ミクニの三國清三氏プロデュースによる地中海料理レストラン『ミクニ伊豆高原』です。
伊豆高原駅を出てすぐ高台に位置する「ミクニ伊豆高原」は、今年10月5日にオープン。外周のガラス面と木組みの構造体が印象的な建物の設計は、新国立競技場も手がける隈研吾氏。三國清三と隈研吾という2人の世界的アーティストがタッグを組み、相模湾の眺望と山海の地元食材が楽しめる、伊豆ならではの美食空間が実現しました。
オープンキッチンからライブ感の感じられるインサイドと、開放感にあふれるテラス席が用意された『ミクニ伊豆高原』の店内は“スマートカジュアル”な雰囲気。アラスカヒノキの優しい木目とオリーブをモチーフとしたグリーンが伊豆の陽光とあいまって、時間を忘れるような心地よさを実感できます。
三國氏曰く「テーブルウェアはすべて隈さんの指定」とのことで、インテリアやテーブルウェアも素材感を生かしたもの。昨今は欧州の3つ星レストランでもテーブルクロスをあえて敷かないのがトレンドですが、こちらも同様、テーブルウェアがさりげなく主張するコーデです。
伊豆半島の「とれたて」はやっぱり美味しい!
筆者がこの日いただいたコースメニューのメインは、入荷したてのカサゴを丸ごと一匹使ったインパクト抜群のポワレ。添えられた伊東産わさび菜のピストーが絶妙なアクセントに。骨を抜いたカサゴの中身にはムースが詰められており、フレンチらしさものぞかせています。
魚介はもちろんですが、印象的なのは伊豆で採れる野菜の風味豊かなこと。やはり恵まれた日差しや、高原の冷涼な空気、天城山系の澄んだ水など、豊かな自然環境が大きいのでしょう。伊豆野菜を使ったメスクランはとくに野菜らしい香りと甘みが堪能できます。
これからの季節は海の幸に脂がのり、まさに食欲の秋本番!「踊り子号」で向かうもよし、ちょっと贅沢に「THE ROYAL EXPRESS」を体験するもよし。東京から2時間で行ける美食リゾートへ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
(取材・文◎伊勢洋平)
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