オスプレイ」は陸上自衛隊も導入しましたが、戦車はもちろんのこと、既存の陸上自衛隊車両はバイクやリヤカーくらいしか載りません。同機の機内は非常に狭いため、アメリカ海兵隊は専用のコンパクト4WD車を開発してしまいました。

クルマは載るの? 載らないの?

日本も導入したティルトローター輸送機、MV-22「オスプレイ」。主翼の両端に装備したエンジンを動かすことで、ヘリコプターのように垂直離着陸が可能ながら、飛行機と同じスピードで飛ぶことができ、さらに航続距離もヘリコプターよりも長いという最新鋭機です。

しかし、MV-22「オスプレイ」の機内容積は2019年現在、陸上自衛隊航空自衛隊が運用するCH-47J/JA「チヌーク」輸送ヘリよりも小さく、以前運用していたV-107輸送ヘリよりもさらに狭いため、「チヌーク」であれば運ぶことが可能な人員輸送用の大型SUV高機動車だけでなく、それよりも小さな1/2tトラック、通称「パジェロ」すら乗りません。

オスプレイキャビンは長さこそ7m以上ありますが、最大幅は約1.72mしかなく、左右両方に10cmずつの隙間をとると貨物に使える幅は1.5mしかなくなります。高さも1.68mが限界です。

この「幅1.5m、高さ1.68m」というのは、日本の軽自動車規格である「全幅1.48m以下、全高2.0m以下」と比べても、高さに関しては現行の軽ハイトワゴンよりも低くしなければ入らないのです。ちなみに軽トラックならば、運転席の屋根さえなくしてしまえば「オスプレイ」に積載可能です。

軽トラサイズでより低いITV「グロウラー」

一方、陸上自衛隊に先行して「オスプレイ」を運用しているアメリカ海兵隊は、高機動車とほぼ同じサイズの「ハンヴィー」を装備していますが、やはり「オスプレイ」には「ハンヴィー」が乗らないため、その狭さに適合する専用設計のITV「グロウラー」という小型四輪駆動車を開発しました。

開発は「オスプレイ」の運用に目途がついた1999(平成11)年にスタート、2009(平成21)年にM1161としてアメリカ海兵隊に採用されました。同車は全長4.14m、全幅1.5m、全高1.84mという日本の軽自動車サイズですが、派生型として120mm迫撃砲を牽引したまま「オスプレイ」の機内に収まるよう、全長を4m以下としたさらに小さいM1163もあります。

全高は一見するとオーバーしているように思えますが、フレームを外してフロントウインドウを寝かせてしまえば1.19mまで低くできます。

また「グロウラー」は、積載量200ポンド(約910kg)を達成するため、シャシーは強化されており、前述した軽自動車サイズながら車両重量は2.058tもあります。そしてサイズの割には重たい車体へ機動性を与えるために、エンジンは132馬力を発揮する排気量2800ccの水冷直列4気筒ターボディーゼルを搭載しています。

ちなみに日本の軽自動車規格では、積載量は350kg以下と規定されているため、「グロウラー」は日本の軽自動車と比べて、2.6倍もの積載量を持っていることになります。

「グロウラー」のエンジンは、トヨタの「ランドクルーザープラド」が搭載する1GD-FTV型水冷直列4気筒ターボディーゼルが排気量2754cc、出力177馬力であり、たとえるならば軽自動車サイズの車体に大型SUVのエンジンを組み合わせたハイパワー小型4WD車といえるでしょう。

自衛隊はカワサキ製の4WDバギーを採用

アメリカ海兵隊は前述した車体短縮型のM1163に重量約600kgの120mm迫撃砲を牽引させています。M1163ならば120mm迫撃砲を連接して7m以内となるため、「オスプレイ」の機内積載で運ぶことができます。

日本に目を転じると、陸上自衛隊川崎重工オフロード4WDバギー「TERYX」をベースとした小型4輪駆動車を、「汎用軽機動車」という名称で調達する予定です。なお予算は6両で約7740万円のため、1両あたりの単価は約1290万円となります。

汎用軽機動車の納入先は、防衛装備庁調達事業部公示によれば陸上自衛隊相浦駐屯地となっているため、同駐屯地に所在する水陸機動団に配備すると見られます。

「水陸機動団」は、日本版海兵隊と目される精鋭部隊です。運用の関係か航空機はいっさい保有しませんが、ほかの部隊の「オスプレイ」と連携することを数多く想定しています。

2019年10月現在、アメリカ本土で訓練中の陸上自衛隊の「オスプレイ」(画像:陸上自衛隊)。