この10月から、赤根和樹監督の新作アニメ星合の空」の放送が始まる。その赤根監督のTVデビュー作が「天空のエスカフローネ」(1996年)。異世界ガイアを舞台にしたファンタジー調のロボットアニメ……と説明されることが多いが、スポンサーに玩具メーカーが参加しているわけではないので、どうしてもロボットを登場させねばならない理由はない(事実、第1話には主役ロボットエスカフローネは登場しない)。
では、ロボット……しかも、竜の形に変形するロボットを登場させる意味は、どこにあるのだろうか? エスカフローネが初めて飛竜形態に変形する、第4話を見ていこう。

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どのロボットが飛べて、どのロボットが飛べないのか?


ファーネリア王国の王子バァンの乗るロボット(作中で巨大ロボはガイメレフと総称されている)、“エスカフローネ”は、ザイバッハ帝国に狙われている。
第4話冒頭、ザイバッハ帝国の皇帝ドルンカークは「このまま竜を逃がすと、我らの未来にどれほどの影響があるのか予測がつかぬ。竜を捕らえよ」と命を下し、配下の少年騎士ディランドゥはガイメレフ“アルセイデス”を率いて、バァンとエスカフローネのかくまわれているアストリア王国の辺境の砦へ向かう。
砦を守る騎士アレンは、自分専用のガイメレフ“シェラザード”に乗って、アルセイデス部隊の襲撃を逃れようとする。
アレンによると、エスカフローネは「クルゼードに運んである」という。クルゼードとは2枚の羽を備えた飛行艇である。クルゼードは砦の地下、断崖を流れ落ちる滝の奥から発進する。
これまでに登場したメカニックを、いったん整理しておこう。

A:エスカフローネ……バァンの乗るガイメレフ(味方側)。この時点では一度も変形しておらず、まだ飛行能力は明らかにされていない。
B:シェラザード……アレンの乗るガイメレフ(味方側)。Aに匹敵する剣の力を持つが、飛行能力はない。
C:アルセイデス……ディランドゥ、および彼の配下の騎士たちが乗るガイメレフ(敵側)。手足を収納した飛行形態に変形し、空を飛ぶことができる。ここでは計5体が登場。
D:クルゼード……アレンの部下たちが操舵する飛行艇格納庫Aを積んでいる。

Cの目的はD格納庫に積まれたAであるから、Cは飛行してDを追う。BDの上に飛び乗って、すでに行動をともにしている。Cが飛行形態に変形して追ってきたとき、アレンは「あのガイメレフは飛べるのか」と驚いているので、【この世界ではロボットは飛行できない】という常識が、なんとなく把握できる。


エスカフローネの変形が意味するもの


さて、危機に陥ったBおよびDを守るために主役ロボであるA格納庫からダイブし、空中で竜の形に変形する。Aが飛行形態に変形するまでに、我々は2種類の飛行メカを目撃している。
■味方側の飛行艇であるDDは発進時に、傘のように折りたたまれた翼を広げる。Aが飛行形態に変形する際も、同じように翼を展開する。
■敵側のガイメレフであるCCは手足を中央に畳んでから飛行する。Aも同じように両足を畳んで竜の形となる。
――あらかじめ登場していた敵側・味方側の飛行メカと同じ段取りを踏むことで、主役ロボの変形を違和感なく見せている。
機動戦士ガンダム」(1979年)で強化メカの「Gファイター」が登場した際、敵側も「ド・ダイYS爆撃機」の上にロボットモビルスーツ)を乗せて、玩具化の都合による戦術の不自然さを打ち消そうと努力していた。その演出が、玩具化という制約に縛られていない「天空のエスカフローネ」にも伝統芸のように息づいていると言えないだろうか。

また、Bに乗っているアレンCに乗っているディランドゥのリアクションも聞き逃してはならない。

アレンエスカフローネが、飛竜に?」
ディランドゥ「飛竜? なるほど、あれがドルンカーク様がおっしゃっていた竜かい」

ドルンカークの「竜を捕らえよ」という言葉に対して、竜の姿という「絵」で答えているのだ。また、ディランドゥをおびき寄せて味方を逃がすための囮としても、竜の姿は理にかなっている。二重三重に物語を裏打ちする役割を、エスカフローネの変形は担っている。


(文/廣田恵介)


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「天空のエスカフローネ」の主役ロボットが、「竜」に変形する意味と効果【懐かしアニメ回顧録第59回】