従業員は必ず労働組合に入らなければならないとする「ユニオンショップ協定」をめぐり、興味深い裁判が始まった。

舞台となったのはトヨタ自動車。元契約社員(期間従業員)の50代男性が今年9月、加入する労働組合を変えたことを理由に契約の延長を拒絶されたとして、約300万円の支払いを求める訴訟を名古屋地裁岡崎支部に起こしたのだ。

地元の中日新聞によると、男性は2018年3月、会社とユニオンショップ協定を結ぶ「トヨタ自動車労働組合」を退会。少数組合のトヨタ第二労働組合に加入した。

すると同月、上司から同協定を理由に「契約の延長はできない」と告げられ、男性はその後、期間満了で雇止めとなったという。男性の契約は6ヵ月ごとの更新だった。

労働問題にくわしい今泉義竜弁護士によると、契約社員などの有期雇用者について、ユニオンショップ協定に基づいた雇止めが問題になる裁判は珍しいという。

判例では、別組合に入った正社員の解雇は無効

ーーユニオンショップ協定について改めて教えてください

ユニオンショップとは、入社後に労働組合に加入しない者または組合員ではなくなった者を使用者が解雇する義務を負うという制度です。特定の事業場の過半数を代表している労働組合が使用者とユニオンショップ協定を結ぶことにより制度化できます。

類似の制度として、組合員のみから採用することを使用者に義務付ける『クローズド・ショップ制度』があります。これらの制度は、労働組合の組織を安定的にし、団結権(憲法28条)を保障するためのものとして一般的に認められています」

ーー別の労働組合に移った場合も解雇の対象になるのでしょうか?

ユニオンショップ協定のもとでは、労働組合を脱退した労働者を解雇することは合法であると考えられていますが、別の労働組合に加入した場合は別です。

そもそもこの制度は団結権(憲法28条)を保障するための制度ですので、労働者個人が自分の団結権を行使するために別の労働組合を選択したのであれば、使用者がユニオンショップ協定を理由に解雇することは違法となります。

三井倉庫港運事件・最高裁判決(1989年12月14日)は、『他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法28条参照)』と述べています」

有期雇用者の場合はどうなる?

ーーそうなると、今回の裁判のポイントはどこになってくるのでしょうか?

「この方は有期雇用労働者ですので、まずは契約更新の期待などが存在する状態だったのかどうかが問題になります。

何度も更新されてきていたり、更新を期待させるような使用者の言動があったりする場合には、使用者が更新拒絶をしたとしても客観的・合理的な理由がない限り契約は更新したものとみなされます(労働契約法19条)。

その場合、他の労働組合に加入したことだけが更新拒絶の理由であるならば、雇止めの理由としては客観的合理性がなく、法律上契約が更新されるということになります。

ただし、報道では出ていない事実があるかもしれませんし、一般論として言えば会社が更新拒絶の理由を後付けで色々と主張することもよくあります。そのあたりも裁判の争点になる可能性はあります」

【取材協力弁護士
今泉 義竜(いまいずみ・よしたつ)弁護士
2008年弁護士登録。日本労働弁護団事務局次長。青年法律家協会修習生委員会委員長。労働者側の労働事件、交通事故、離婚・相続、証券取引被害などの一般民事事件のほか、刑事事件、生活保護申請援助などに取り組む。首都圏青年ユニオン顧問弁護団、ブラック企業被害対策弁護団、B型肝炎訴訟の弁護団のメンバー
事務所名:東京法律事務所
事務所URLhttp://www.tokyolaw.gr.jp/

トヨタ元契約社員「労組やめたら雇止め」は当然? ユニオン・ショップめぐる注目裁判