代替テキスト

「下肢静脈瘤とは、足の血管である静脈が太くなって、蛇行し、足の表面からボコボコと盛り上がっている病気です。これを『伏在型静脈瘤』といいますが、それ以外にも赤紫色の血管がクモの巣のように透けて見える『クモの巣状静脈瘤』と呼ばれる軽症タイプの静脈瘤もあります」

こう説明するのは下肢静脈瘤治療の専門家でもある、お茶の水血管外科クリニックの院長・広川雅之先生だ。下肢静脈瘤は15歳以上の日本人全体で43%、50歳以上になるとじつに60%以上に認められる病気だという。

患者数が多いにもかかわらず、自覚症状があまりないため医療機関にかかっていない人も多く、意外とその実態がきちんと理解されていない病気でもある。そこで次のチェックリストを! 2つ以上当てはまる人は、下肢静脈瘤の可能性がある。4個以上当てはまる人は専門医を受診しよう。

□夕方になると足が重い、だるい、疲れやすい
□足にむくみがある
□寝ているとき、足がよくつる
□足首やふくらはぎの血管が浮き出て、ボコボコしている
□クモの巣のように細かい血管が見える
□ふくらはぎや足がほてる、熱く感じる
□足に湿疹やかゆみがある
□足の皮膚が茶褐色になっている
□足の皮膚が硬くなっている
□近親者に下肢静脈瘤の人がいる

血管には動脈と静脈がある。心臓から足に向かって血液を送る動脈に対し、老廃物を含んだ血液を足から心臓に向かって押し上げるのが静脈だ。静脈は重力に逆らって血液を戻すために、血管内の弁が、血液が逆流しないように働いている。

ところが、なんらかの理由でこの弁の機能が弱まると、血液が逆流して足にたまり、足がむくんだり、だるくなる。その状態が長い間続くと足の静脈は徐々に太くなり、曲がりくねったり、こぶ状にふくらんで下肢静脈瘤となる。典型的な症状は、足がむくむ、重だるく感じる、かゆみ、ほてる、就寝中のこむらがえりなど。これらの症状が長時間の立ち仕事の後や午後から夕方にかけて出る。

「クモの巣状の場合、見た目が悪いだけで症状が出ませんが、伏在型静脈瘤は、不快感を伴う症状が出ることが多く、徐々に進行します。進行すると、色素沈着、湿疹、脂肪皮膚硬化症といった皮膚や脂肪の炎症が足に起こります。これらはうっ滞性(血流が静脈内で滞っている状態)皮膚炎と呼ばれています。さらに進行すると、皮膚が壊死して穴が開く潰瘍が起こることもあります」

うっ滞性皮膚炎へ進行するのは、血管がボコボコと出る伏在型静脈瘤に多く、こうなると根本的な治療が必要になるという。下肢静脈瘤になりやすい人にはいくつかの危険因子がある。

「美容室やスーパーのレジ担当、飲食業など、1カ所に長時間立ちっぱなしの人が下肢静脈瘤になりやすいです。立ち仕事でも、歩き回っていればそれほど心配はありません」

もう1つの危険因子としては、妊娠・出産を経験したことのある人が挙げられる。出産回数が多くなるほど、リスクは上がるという。

「これは、ホルモンとの関係が考えられています。妊娠するとホルモンバランスが変化し、血液量が増えて静脈が軟らかくなります。出産後、半年程度で徐々に改善しますが、完全には元に戻りません。そのため、出産を繰り返すたびに下肢静脈瘤は徐々に悪化します」

妊娠・出産が関係するため、女性は男性の約3倍多く下肢静脈瘤が認められる。そのほかの危険因子は遺伝だ。両親共に下肢静脈瘤がある人は、9割近くが発症するという。加齢や肥満によって弁が働きにくくなることもあるという。