2019年夏アニメを総括レビュー！ 「週刊ヤングマガジン」連載のサバイバルマンガ「ソウナンですか？」、「少年ジャンプ+」連載のSFサバイバル「彼方のアストラ」、「MF文庫J」の学園ラブコメディ「可愛ければ変態でも好きになってくれますか？」、「小説家になろう」発のファンタジー「魔王様、リトライ！」、NHKの連続テレビ小説「なつぞら」の5作品をピックアップしました。
サバイバル知識の豊富な女子高生が無人島で生き抜くアウトドアマンガをTVアニメ化。アニメの影響でキャンプに出かけたり、ジムに通ったりするオタクは後を絶たないが、本作のサバイバル術は気軽に試すにはハードルが高すぎる。
とくに念入りに描かれているのは水の重要性だ。人間は体内の水分の10パーセントが失われると死に至るとされており、生き残るためには飲み水の確保が必要不可欠である。第1話は飲尿、最終話は浣腸と、水分摂取のサバイバル術を軸にした構成は見事のひと言。もしテクニックを実践すれば、ほかのオタクたちに大きな差を付けられそうだ。なお公式サイトでは声優陣がサバイバル生活を体験しているが、こちらはワニやカエルを食べるという本編よりはビギナー向けの内容なのでご安心を。
惑星キャンプ中、宇宙に漂流してしまった9名の少年少女が、子どもたちだけで生還を目指すSFサバイバル。本作は近未来が舞台で、不思議な植物が生えていたり、リゾート地のように居心地がよかったりと、ユニークな惑星が多数登場する。命に関わるハードな状況ながら、リーダーシップあふれる主人公・カナタが前向きな性格で、必要以上に深刻にならないのもポイント。
画面サイズは通常よりも横長のシネマスコープを採用。おとずれた惑星の風景をパノラマで楽しめるだけでなく、上下に黒帯が入ることで生じる閉塞感は、子どもたちに架された過酷な運命を象徴しているようにも見える。すべての事件が解決し、通常の世界を取り戻したエピローグの心地よさが忘れられない。
主人公・桐生慧輝に宛てられた突然のラブレター。だが手紙には差出人の名前がなく、なぜか純白のパンツまで添えられていた！ 手紙を送ったのは誰なのかを追い求めるミステリー仕立てのラブコメディ。
すべてのヒロインたちが“変態”とされているのが特徴で、サディズムや匂いフェチなど、異なるタイプの嗜好を持ち合わせている。それに合わせるかのように、演出もどこか突き抜けた表現が多い。気合の入った筆致のベーコンエッグとトースト、キュートなデフォルメキャラの紙人形劇、音を視覚化したベクトルスコープによる次回予告、無駄に存在感があるボーリング場のゆるキャラなどなど……。そんなフェティッシュな映像を見ていると、“変態”も悪くないように思えてくる一作。
ゲーム管理者の主人公がラスボスの魔王として異世界へ転生してしまうファンタジー小説が原作。ほぼ全キャラの見せ場を作った生真面目なOPアニメが象徴しているように、本作の登場人物は不思議な魅力に満ちている。キャラクターを味わうために障害となる要素が極力排除されており、とにかく名前が覚えやすい。キラー・クイーン、ホワイト、ユキカゼ、ミカン、エビフライなど、一度聞いたら忘れられないネーミングであり、各話の初登場時に名前まで表示されるという親切設計だ。
その中でももっとも惹かれるのは、圧倒的なパワーを誇りながら小市民な主人公・大野晶だろう。全12話を通して成し遂げたことが温泉宿の建設だったり、モブの御者にタバコを勧めて恐縮されたり、次回予告で伝説のゲーム・シェンムーの魅力を次回予告で語り尽くしたりと、1つひとつの行動が予想外ながら親近感を抱いてしまう。主演の津田健次郎をはじめとする人気声優陣の競演も、唯一無二の面白さを引き出している。
NHKのドラマ・連続テレビ小説の100作目は、戦後のアニメーション業界が舞台。北海道で育った戦災孤児の少女・奥原なつがアニメーターとして活躍する姿を描いた。本編にはアニメパートがふんだんに盛り込まれており、劇中アニメや登場人物のモデルを推測してみるのも面白い。
本編終了後のミニコーナー「なつぞらアニメーション」では、視聴者が投稿した自作アニメを公開。手描きアニメはもちろんストップモーションアニメなどもあって、こちらも見ごたえ抜群だ。序盤は愛らしいできのものが多かったが、なつの成長に合わせるかのようにクオリティが上がっていくのが楽しくも恐ろしい。全国各地の都道府県から送られてきた作品を見ていると、絵を動かしたいと思う人がこんなに沢山いる事実に感動してしまう。
（文・高橋克則）
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