最近は「ハラスメント」という言葉をよく耳にします。セクハラ、パワハラ、マタハラなどハラスメント行為にはさまざまな種類があり、最近はそうした行為に対する見方が以前よりも厳しくなってきました。

社会の風潮としてはいいことなのですが、中には逆パワハラのようにハラスメントに厳しい風潮を利用する人もいるようです。そこで今回は、ハラスメント問題に対して疑念を抱いている管理職3人に話を聞いてみました。

ハラスメントの定義があいまいすぎる問題

あるIT企業で管理職をしているAさんは「ハラスメントの定義があいまいすぎて、どうしたらいいかわからない」と嘆きます。

Aさんの会社で行われた管理職向けのハラスメント研修では、ハラスメント行為であるかどうかを判断するのは被害を受けた本人、そして周囲の人であり、ハラスメント行為を行ったとされる本人の意思や意図にかかわらず、被害者本人や周囲が不快になったらそれはハラスメント行為なのだと教わったのだそうです。

Aさんは「それでは明確な基準があるとは言えず、人によって差が出るので対処が難しい」と言います。Aさんの会社では、多くの管理職が既に「ハラスメント対策疲れ」の状態なのだそう。

部署で部下や後輩が「それ、セクハラだよ」とか「あれってもうパワハラだね」などと冗談で言い合っているのを聞いては胸が苦しくなると言います。「そういう会話を聞いていると、ドキドキする」とため息。常に自分の言動がハラスメント行為に当たらないか気になって、かなりの精神的負担になっているようです。

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ルールを守らない部下を叱ることもできない

同じくAさんの会社では、仕事がほとんどないのにわざと遅くまで仕事をしている人がいます。

生活残業という側面もあるのかもしれませんが、最近は働き方改革も始まっています。Aさんの会社では19時以降に仕事をする場合は上司に連絡するルールとなっていますが、Aさんの部下で一人、何も仕事はしないけれど20時や21時になっても帰らない部下がいるのだそうです。

何も連絡がないため、Aさんは残業しているときに何をしているか把握しきれていないとのこと。しかし、彼から出てくる成果物が時間の割にあまりに少なく、何度も「ルールを順守し、できるだけ早く帰ってほしい」と伝えたり、「残業時間の成果物は?」と尋ねたりしているものの、適当な言い訳ではぐらかされてしまいます。

しかし声を荒げてはいけないと、Aさんは根気強くその部下に言い聞かせていました。すると、ある日突然「A部長から、仕事が終わっていないにもかかわらずあまりにしつこく早く帰宅するよう言われすぎてノイローゼになりそうだ、あれはハラスメントではないかと、相談された」と人事から連絡があったのだそう。

他の部下は全員Aさんの味方になってくれましたが、やはりそういう噂というのはあっという間に広まるもの。Aさんは自分が陰で「パワハラ部長」と呼ばれるようになったことを知っていました。

「働き方改革とハラスメント問題のはざまに挟まれてしんどい」とAさん。「どれだけ優しく言って諭しているつもりでも、パワハラと言われる世の中になってしまった」と深いため息をついていました。

セクハラを気にして女性部下に何も言えない

ある金融機関勤務のBさんは、女性部下に対して何も言えなくなってしまったと言います。

Bさんがいるのは女性が働きやすい職場と言われていますが、そんな社内でも深い悩みがあるのだそう。「セクハラと訴えられるのが怖くて女性の部下に何も言えない。すでに何人か顔見知りの支店長や課長などがハラスメント行為を働いたものとして社内処分が出ている」と表情を曇らせます。

Bさんは「女性社員に話しかけるときには本当に業務外のことは話さない。それがたとえ天気の話であっても。何を言われるかわからないから」と言います。しかし、それはそれで女性社員から「Bさんは男性社員と女性社員を差別している」とか「男性と女性の扱いに差をつける」などと噂されてしまったことも。

「どうしたらいいんだと頭を抱えたのはまさにこのとき」と語るほど、精神的に追い詰められたそう。確かにセクハラやパワハラ防止のための対策を取ることはとても大事ですが、こうしたコミュニケーション不全に陥ってしまうこともあるようです。

仕事をしない社員に注意できないことも

同じく金融機関で働くCさん。彼は、妊娠しているからと言ってほとんど仕事をしない女性社員の扱いに困っています。

「具合が悪いと言っているので『体のことが一番だから仕事のことは気にせず帰ってもらって大丈夫ですよ』と伝えているのに、全然帰らない。帰らないで具合悪そうにして、なぜか18時半くらいまで残業をする」のだとか。

彼女のような人がいると周囲の人のモチベーションを下げる一つの要素となりうることもあり、Cさんは早々に人事部に相談。しかし、人事部は「妊娠しているから大事に」の一点張り。現実は何も解決しておらず、あと1〜2カ月の辛抱だと思って過ごしているのだといいます。

まとめ

「ハラスメントと言われてしまうのでは…」と戦々恐々としている管理職は少なくないのではないでしょうか。ハラスメントというのは線引きが難しいのと、被害者の主観に基づいて申告されること、その両方が揃うからこそ非常に厄介な問題と言えそうですね。