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台風でクルマが被害 どんな保険が使える?

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

台風は自動車保険(車両保険)の支払い対象となる「自然災害」に相当する。

これは、一般車両(自損事故にも適用されるオールリスク)保険はもちろん、エコノミータイプ(クルマとクルマの事故などにリスクを限定)であっても保険金が支払われる。

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台風は自動車保険(車両保険)の支払い対象となる「自然災害」に相当する。

台風が原因のトラブルにはどんなものがあるのか? 例をあげてみたい。

・大雨で駐車場に置いてあったクルマが冠水/水没
・大雨で機械式駐車場がまるごと水没
・冠水した道路に気づかず進入してクルマが水没
・強風で看板や屋根瓦などが飛んできてガラスが割れるなどボディがキズついた
・裏山が崩れてクルマが土砂にのみこまれた
・強い横風にあおられてクルマが横転した
・暴風でカーポートの屋根が壊れて落ち、クルマにぶつかってキズがついた(この場合、カーポート自体は(契約していれば)「火災保険」から支払われる。)

車両保険を付けていれば、一般車両でもエコノミーでも台風を原因とする「ウチのクルマ」の損害はほぼすべてカバーされると思って良い。

ただし、そのキズが台風によるものなのかどうか? 怪しい場合は保険会社の調査が入る場合がある。

つまり、台風以前に自損事故などでキズが付いたクルマの修理をせず、事故報告もせず……。

そのままにしておいたクルマのキズを台風によるものだとウソの報告をして保険金をだまし取ろうとする「保険金詐欺」ではないかと、厳しくチェックされる場合があるということだ。

特に近年はどの損保会社もこのあたりの調査は厳しく行われている。

台風を含む自然災害で車両保険 翌年1等級ダウン

自然災害ではない通常の「ドライバーに責任がある事故」で車両保険を使うと、翌年の等級は3等級ダウンする。いっぽう自然災害による事故は「不可抗力」とみなされる。

車両保険を使っても1等級ダウンするだけだ。

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自然災害では車両保険が使え、1等級ダウン。1年間は「事故あり係数期間」となり保険料が少し割増となる。

ただし、その場合も1年間は「事故あり係数期間」となり保険料が少し割増となるので注意が必要である。

現在10等級の契約者が自然災害で車両保険を使って1等級ダウンとなると、翌年の等級は9等級になる。

この場合の9等級は「事故あり9等級」となり、8等級の人が事故なしで翌年9等級にアップした時の「事故なし9等級」とは、同じ9等級でも保険料が異なる(割増になる)ということだ。

1等級ダウンとなった場合の保険料が翌年以降どう変化するか? 保険を使わなかった場合と比較してみた。(ソニー損保公式サイト「概算保険料の計算」を使用)

保険料10万円(年間) 現在の等級10等級の場合 

保険を使った場合

翌年:事故あり9等級 14万2000円
2年後:無事故10等級 10万円
3年後:無事故11等級 9万6000円
3年間合計:33万8000円

保険を使わなかった場合

翌年:無事故11等級 9万6000円
2年後:無事故12等級 9万5000円
3年後:無事故13等級 9万3000円
3年間合計:28万4000円

1等級ダウンでも3年間で保険料のみ5万4000円アップする。免責金額、修理代の合計を考慮して保険を使うべきかどうかを考えたほうが良さそうだ。

なお、等級ダウンとなるのは車両保険、対物保険を使った場合だけだ。

ドライバー自身や同乗者のケガの治療などを補償する人身傷害保険や搭乗者傷害特約(搭乗者傷害保険)は使っても等級には影響しない。

台風の強風 ドアが隣のクルマを傷つけた場合

竜巻による強風、台風による強風が吹き荒れる中では、思わぬ事故に遭遇する場合がある。

強風下でクルマのドアを開けたとき、予想を上回る突風にあおられ、手で支えきれずドアが隣のクルマにぶつかってしまう事故は意外と多い。

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台風による強風下で問題が起こった場合も、ドライバーに過失があるかどうか? 不可抗力だったのかどうか? によっても判断が異なるとのことだ。

このような場合も「自然災害」として車両保険(1等級ダウン)が使えるのだろうか?

竜巻や台風など、突風/強風で受けた車両損害を自動車保険でカバーする場合の扱いは以下となる(各社のまとめ)。

1 強風で自車が横転し、クルマを損傷→車両保険(1等級ダウン)
2 強風で飛んできた屋根瓦や看板で自車が損傷→車両保険(1等級ダウン)
3 強風で自車のドアが急に開き、隣のクルマに当たった→自車は車両保険(1等級ダウン)、他車に対しては対物保険を適用(3等級ダウン)※この場合翌年の保険等級は3等級ダウン
4 突風でハンドルを取られ他車に衝突した→自車は車両保険(1等級ダウン)、他車には原則として賠償義務ナシ

という回答となった。

ただし、3と4はケースバイケースのこともあるそう。どのような判断となるかは事故状況や保険会社によって異なることもある。

4のような場合は、「相手方の車両保険を使って直してくださいというケースが多い」(国内大手損保お客様相談室)とのこと。

その現象が台風による強風下で起こった場合も、ドライバーに過失があるかどうか? 不可抗力だったのかどうか? によっても判断が異なるとのことだ。

損保のロードサービスを使ったり、相談したりするだけなら等級はもちろん下がらない。何の費用も発生しない。まずは保険会社に聞いてみるのが良いだろう。

車両保険、地震/津波/噴火の自然災害に対応せず

最後に改めて、自然災害と車両保険についての重要事項をまとめておきたい。

自動車保険の車両保険を契約している場合、一般車両(自損事故にも対応)にしてもエコノミー(車対車の事故に限定)にしても「自然災害」でクルマが損害を受けた場合、保険金は支払われる。

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クルマが「冠水」や「水没」の状態になった場合、台風や豪雨、高潮による冠水や水没は1等級ダウンで車両保険の適用となるが、地震による津波は対象外となる。

しかし、その「自然災害」には、保険金支払いの対象とならない災害がある。

「地震/津波/噴火」の3つは対象外だ。これらが原因の損害については一般車両でもエコノミーでも保険の対象とはならない。

例えばクルマが「冠水」や「水没」の状態になった場合、台風や豪雨、高潮による冠水や水没は1等級ダウンで車両保険の適用となるが、地震による津波は対象外となる。

ただし、地震/津波/噴火が原因の損害であっても、特約で一定額(50万円)まで保険対応している保険会社もある。(すべての保険会社にあるわけではない)

「地震等による車両全損一時金特約」(チューリッヒ)、「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約オプション」(損保ジャパン日本興亜)などのなまえで、車両保険(一般条件)の契約に付帯することができる。

地震/噴火/津波により、
・契約の自動車が所定の損害(3本以上のピラーの断裂や折損など/ルーフの著しい損傷/窓ガラスの損傷など)を受けた場合
・津波で流されたりして発見されなかったような場合
・運転席の座面以上に浸水した場合
などは、車両全損時一時金として50万円を上限として支払われる。

自分に責任がない自然災害で、大切にしているクルマにダメージを受けると精神的なショックも大きい。

保険を使うかどうかは、事故報告をして修理代の見積もりが出てから決めるのでも問題ない。

もちろん、けがをしている場合は迷わず病院で診察を受けよう。(等級は下がらないし、治療代は自動車保険から支払われる)

状況が落ち着いてから、免責金額や等級ダウン、保険料アップなど総合的に考えて車両保険を使うかどうかを決めればOKだ。


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