新米が店頭に並ぶ時季です。「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「あきたこまち」など、さまざまな品種の米が並ぶ中、昔はよく見かけた品種を最近、すっかり見なくなりました。かつてコシヒカリと人気を二分し、全国2位のシェアを誇った「ササニシキ」です。なぜ見なくなったのでしょうか。ササニシキが誕生した宮城県古川農業試験場の担当者に聞きました。

ハツニシキとササシグレの掛け合わせ

Q.ササニシキの誕生と、人気の米になった経緯を教えてください。

担当者「ササニシキは、古川農業試験場でハツニシキとササシグレを掛け合わせて1963年に生まれた品種です。普及したのは、当時、宮城県の主力品種だった『ササシグレ』より5%程度増収できたことや、いもち病に対する弱さが改善されたことなどが理由です。

優しく上品な味わいが好まれ、1970年ごろから『コシヒカリササニシキはおいしい米』との評価が高まり、ササニシキブームが起きました。和食の風味を最大限に引き出す、さらりと口の中でほどける穏やかな味わいが特徴です」

Q.最盛期の作付面積とシェアを教えてください。

担当者「全国的には、1990年の作付割合11.3%(面積20万7438ヘクタール)がピークで、コシヒカリに次いで2位でした。宮城県内でも1990年ピークで、83%(8万1755ヘクタール)を占めました」

Q.最近の全国の作付割合でササニシキは上位20品種に入っていません。宮城県ではどうなのでしょうか。

担当者「2018年産の水稲の作付割合は、ひとめぼれ76%、つや姫7%、ササニシキ6%です。ササニシキは県北部や東部の作付が多いようです」

Q.なぜ激減したのですか。

担当者「ササニシキ1991年いもち病多発や、1993年の冷害といもち病の多発などで作付が減少しました。一方で、1991年にデビューしたひとめぼれは、いもち病や冷害による被害が比較的少なかったため、作付割合が逆転しました。93年はササニシキ63%、ひとめぼれ24%だったのが、94年にはササニシキ39%、ひとめぼれ53%となりました。消費者に安定した収量・品質の米を届けられなかったことで、ササニシキの栽培は減少し、ひとめぼれが増加したのです。

粘りが強い食味の『コシヒカリタイプ』の米が好まれるようになったことも、ササニシキが減った理由です。ササニシキは、さらりとしてあっさりした食感が特徴ですが、1980年代後半以降、東北地方で栽培が始まった、あきたこまち、ひとめぼれ、はえぬきといった品種は、大部分が直接間接にコシヒカリの掛け合わせで生まれた品種で、全国的にも同様の傾向が見られました」

Q.一方で、すし店では今もササニシキの人気が高いと聞きます。その理由は。

担当者「先ほど述べたように、ササニシキはあっさりとした食感で、和食との相性が良いのが特徴です。特に、すし用に調整したすし飯での食味が評価されています」

Q.今年の新米の出荷は。

担当者「全国への出荷が9月25日ごろから既にスタートしています。先ほど述べたように、最近は粘りが強いコシヒカリタイプの米が人気ですが、ササニシキは粘りは弱いものの、あっさりとした優しく上品な味わいが和食によく合います。おすしや刺し身、四季折々の旬の食材との相性のよさを味わっていただきたいと思います」

オトナンサー編集部

かつて、コシヒカリと人気を二分したササニシキ(宮城県農政部提供)