◆被収容者の死は本当に「仕方がない」ことだったのか?

申し入れの後、法務省前で記者会見をするSYI(収容者友人有志一同)メンバー

 長崎県にある大村入管の収容施設内で、6月末にナイジェリア人のサニーさんが3年7か月もの長期収容の末、謎の死を遂げた。法務省側は「死因を調査中」と言っていたが、10月1日にようやく「ハンガーストライキによる餓死」と発表した。

 今の日本で、餓死する人などなかなかいない。なぜそのようなことになったのか。またなぜ死因の発表に3か月もの時間を費やしたのだろうか。

 法務省は、収容施設内で餓死者を出してしまったにもかかわらず、本人が食事も点滴も拒否したため「対応に問題はなかった」と答えている。なおかつ「サニーさん本人に犯罪歴がある」とまで発表した。

 これにより、ネットでは犯罪者だから仕方がない」「自ら食事を絶ち、点滴も拒否をしたのだから自業自得との声もあがり、人の命が失われたにも関わらずバッシングを受けるという無情な事態も起きた。

 しかし本当にそれは「対応に問題がなく、仕方がない」できごとだったのだろうか。

◆入管は、約束をしながら嘘をついている

法務省の周りなどをデモ行進

 10月8日外国人を支援する市民グループSYI(収容者友人有志一同)が法務省まで出向き、河井克行法務大臣と佐々木聖子・出入国在留管理庁長官あてに抗議の申入書を提出。その後にデモ行進を行った。いずれも、収容施設内で死者を出してしまったことへの責任の追及、長期収容による人権侵害などを訴えるものだった。

 SYIメンバーの柏崎正憲さんは、「収容を送還の手段にしていることが問題。精神的に痛めつけて帰るように仕向けている。それは拷問であって、相手に犯歴があるからやっていいということではない。むしろ、入管のやっていることのほうが犯罪的だ」と強く批判した。

 同じくメンバーの鈴木堅登さんはこう語る。

「最近、白内障で片目を失明した人が仮放免されました。もっと早く治療していればそんなことにはならなかった。入管の医療ネグレクトも、深刻な問題です。他にも、ハンストしていた人を解放2週間で再収容している。

 再収容への抗議で再びハンストを始めると、入管が『仮放免するから食べろ』と言うが、誰も仮放免された人はいない。2か月以上も放置されている人もいます。入管は、約束をしながら嘘をついている

 ハンストは現在、牛久入管だけでも30人前後が解放を求めて行っているが、未だ自由の身になった者はいない。法務省「被収容者の4割が何らかの犯罪経験者で、再犯の恐れがあるため解放できない」とも発表している。

 SYIのデモ行進では、約30人の参加者が法務省の建物を回り「収容やめろ、人権侵害やめろ、差別をやめろ、病院に連れて行け」など、シュピレヒコールをあげた。

ハンストの対応について、所長はどう判断したのか

弁護士による記者会見

 10月10日、ナイジェリア人の餓死の件や、仮放免を出してもわずか2週間で再収容してしまうことについて、ジュネーブの国連懇意的拘禁ワーキンググループへ通報することを、弁護士による有志が司法記者クラブ記者会見で発表した。

 鈴木雅子弁護士は、会見でこう訴えた。

「2週間での再収容は必要があるのか、正当性があるのか。帰れない人たちも相当数いて、難民申請者も含まれている。入管は『申請の乱用』というが、日本は難民条約を誤った解釈で運用している、他の先進国に比べて(認定率が)突出して低いことは国連も苦言を呈している。

 もっと被収容者を人間扱いするべき。入管の死亡事故はこれまで後を絶たない。収容は刑事罰を受けた人が多いというのは説明になっていない。刑事罰はもう受けているし、これから悪いことをするかもしれないという考えはおかしい。

 サニーさんは日本人の子供があることで日本に残ろうとした。子供の権利条約も守られるべきなのに、日本では非常に軽い。第三者機関による調査もなされなかった。ハンストの対応、所長がどう判断したのかすら、一切検証がなされていない」

 通報者の1人、イランサファリさんの弁護士である駒井知会弁護士は、彼のことをこう弁護した。

サファリさんは刑事罰を受けたこともない難民申請者です。ある日、理由も告げられず収容されました。3年の収容ののち仮放免されましたが、わずか2週間で再収容されました。しかし捕まることが分かっていても、入管の定めた出頭日にちゃんと来ました。逃亡の恐れがないことは明らかのはず」

法務省は、さらなる仮放免の厳格化を謳っている

解放されても、わずか2週間で入管に出頭を余儀なくされたサファリさん

 同じく会見に参加した浦城知子弁護士は、「『予防拘禁』は絶対にしてはならないし、入管に権限はない。サニーさんの死に対して、『餓死』とだけ発表したら批判を受けると思って、犯罪者であることを法務省は理由にしている」と語った。

 弁護士たちの通報が国連により認められれば、調査にかかる権限として、入管に「意見」を示すことができる。その結果、違法が認められるケースもある。国連としては主に以下の4点を求めている。

①収容は最終的な手段であること。
②最低限の機関であること。
③裁判所による判断があること。
④合理性、必要性、比例性(正当な目的に比例している)が認められること。

 これに対して、法務省はさらなる仮放免の厳格化を謳っている。仮放免に必要な保証金の値上げ、ボランティア先の住所を使えなくするなど、被収容者を徹底的に締め上げようとしている。

 どんな事情があろうが人の死は重い。法務省も入管も、1人の尊い命が失われたことを深く受け止めなければ、犠牲者は増えていくかもしれない。「問題ない」とだけで終わらせないでほしい。

<文・写真/織田朝日>

【織田朝日】
おだあさひTwitter ID:@freeasahi外国人支援団体「編む夢企画」主宰。『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)11月1日に上梓の予定)

法務省の周りなどをデモ行進