F1第17戦日本GP(10月13日決勝、三重・鈴鹿サーキット)で日本人ドライバーが公式セッションに参加した。トロロッソホンダの一員としてフリー走行1回目を担当した山本尚貴(31)だ。グランプリの初日を見事に飾った。

レーシングスーツ姿でポーズをとる山本尚貴(鶴田真也撮影)

日本人ドライバーにとってF1冬の時代


 日本人ドライバーはF1で冬の時代を迎えていた。日本人がF1の公式セッションでF1マシンを走行するのは2014年にケータハムのレギュラーだった小林可夢偉以来、5年ぶりだったのだ。F1チームは10チームしかなく、レギュラードライバーはたったの20人。狭き門だ。

 特にF1に参戦するにはスーパーライセンスポイントを一定の点数まで獲得しなければならない。いわゆる実力史上主義だ。20年近く前までは、大きなタニマチがいてそれほどの好成績を残さなくてもF1ドライバーになることができた。時代は様変わりしたといっていい。

 山本は昨季、日本のトップフォーミュラカテゴリースーパーフォーミュラと、日本で最も集客力があるとされるスーパーGTでダブルチャンピオンを獲得。自身のスーパーライセンスポイントが発給要件に満たした。もちろん、F1マシンで300㌔以上を走らなければならないという規定もあったが、ホンダ側の地道な交渉が実って、事前の走行を経ることなく、無事にライセンスを発給することができた。

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実際に走ってみたら…

山本尚貴がフリー走行1回目で鈴鹿を駆る(ⓒRedBull Content Pool)

 実際に走ってみると評価が一変した。

 実車に1度も乗ったことがなく、F1用のピレリタイヤを装着するのも初めて。英国のレッドブルの施設でレーシングシミュレーター(疑似運転体験装置)を利用する機会はあったが、それも1回のみだった。遅くて当たり前の中、トロロッソでレギュラーを務めるダニール・クビアト(ロシア)にラップタイムで0・098秒差に迫ったのだ。ちなみに出走20台中17番手のタイムだった。

 「その差は0・1秒。ほぼ同じくらいのタイムで走れたので、僕のデータを(チームが)有効に使ってもらえるのかなと思う。ひとまず、自分の仕事は合格点をあげても良いのかな?」と本人も胸をなで下ろした。

 鈴鹿サーキットのレーシングスクール出身で2度の王者に輝いているスーパーフォーミュラでは通算7勝のうち5勝を鈴鹿で挙げている。ホームコースの隅から隅までを知り抜いており、それがアドバンテージとなったのは間違いない。

 これならレギュラー昇格の道が開けると思いきや、そうは問屋が卸さない。トロロッソは若手育成を主体としたチーム。31歳の年齢は採用基準から大きく外れているのだ。チームのフランツ・トスト代表も「彼の走りには満足しているが、チーム哲学には則していない。リザーブドライバーかそのたぐいの任務をしてもらいたい」と起用に消極的だ。

 それでも日本人ドライバー誕生の道を再びこじ開けるマイルストーンになったのは確かで、元F1ドライバーの中野信治も「日本でレースを戦っているドライバーのレベルが高いことを証明した」と大絶賛。

 海外のレースに出ることなく、日本で純粋培養されたドライバーがビッグパフォーマンスを見せた功績は大きい。

[文/東京中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)

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