川(Shin/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

12日夜に多摩川が氾濫した東京都世田谷区玉川には、下流部で唯一、堤防が整備されていない区間があったことが取材でわかった。しらべぇ取材班は、国土交通省京浜河川事務所に詳しい話を聞いた。

■堤防未整備区間は約540メートル

国土交通省によると、12日は多摩川の水位が刻々と上昇。午後10時10分頃には堤防未整備の区間(約540メートル)から濁流があふれたことが確認された。川と市街地の境界となっている道路も越え、二子玉川駅周辺の広い範囲が浸水。

川と市街地の境界となっている道路も越え、二子玉川駅周辺の広い範囲も同様に水に浸かった。

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■2009年から整備開始

国交省京浜河川事務所は、

二子玉川南地区は、多摩川下流部で唯一、堤防が無い危険な地区です。2007年9月の台風9号では、土のうが無ければ、区道まで浸水していました。

地球温暖化に伴い、集中豪雨の増加や台風の大型化が心配されています。大きな台風が再来すれば、二子玉川南地区は多摩川下流部で、最初に浸水してしまいます」

として、世田谷区と協力して、堤防整備に関する説明会を2006年から実施し、地域を水害から守るために09年秋から工事に着手して、二子玉川駅を挟んだ下流域は2014年に整備が完了した。

■ワーキンググループ中だった

二子玉川を挟んで反対側の上流域約540メートルの整備に着手するため、18年3月から二子玉川地区水辺地域づくりワーキングを開始。19年6月までに計5回開催している。

その中で住民から「できる限り森を今のまま残してほしい」「堤防の最上部に人を通さないでほしい」「堤防を作るとマンションと目線があってしまう」「家がのぞかれる」などの意見が寄せられた。

そのため堤防未整備の箇所には、土のうを積んでいた。しかし今回の台風19号で土のうの箇所約20メートルから30メートルに渡り崩れた。

河川事務所の担当者は、しらべぇ編集部の取材に対して、「堤防設置に関して、住民と合意し、早急に工事に着手したい」と述べた。なお国が勝手に堤防を設置することは、今の法体系ではできない。

■スーパー堤防計画も…

国土交通省は18年12月、「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」の意見をとりまとめた。高規格堤防(スーパー堤防)とは、一般的な堤防の30倍程度の高さを盛り上げ、洪水や地震の液状化によっても決壊しにくい堤防のこと。

しかし、この計画地には多くの戸建住宅が存在し、周辺住民の合意形成が必要となるため、整備の壁となっていた。

首都圏での高規格堤防は、11年に整備区間の考え方が見直され、「人命を守る」ことを最重視し、「人口が集中した区域で、堤防が決壊すると甚大な人的被害が発生する可能性が高い区間」であるゼロメートル地帯を対象に計画が立てられている。

首都圏ではこれまで、江戸川、荒川、多摩川の整備区間約90キロを事業化。自治体などが行う市街地開発とも連携し、治水対策としての効果に加え、安全・快適なまちづくりにも資する重要な防災機能として建設を行っている。

地球温暖化の影響で、今後も大きな台風の上陸が予測されている。早急な治水対策の実行が、今求められている。

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(文/しらべぇ編集部・おのっち

多摩川が氾濫した一部区間には堤防なし 「家が覗かれる」と反対の声も