人は早く答えるように急かされると、本音よりも自分が良い人に見えるような回答をしてしまうのだそうだ。
これまで学術的な研究では、「パッと答えてください」と回答者に要請したうえで質問をすることが非常に多かった。
『Psychological Science』(10月11日付)に掲載された新しい研究によると、こうしたやり方は回答者に嘘をつかせる結果につながるのだそうだ。
これまでに繰り返しなされてきた、質問に基づく研究の信憑性を揺るがす重大な結果である。
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「あまり考えずに直感で答えてください」が求められる理由
心理学のテストが好きな人なら、「あまり考えず、直観で答えてください」という枕詞には見覚えがあるだろう。
なぜ、こうしたテストではパッと答えるよう求められるのだろうか?
アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・プロツコ氏によれば、それは私たちには直感に基づいた動物的思考と、もっと人間らしい理性的思考の2種類の思考があると考えられているからだそうだ。
回答に時間をかけさせると理性的思考が働きやすい。だから、パッとあまり考えずに答えてもらえば、より低次元の本能的な回答を得ることができる――というわけだ。
時間的制約を与えて回答させる実験
このことを検証するために、プロツコ氏らは、被験者に「はい」か「いいえ」で答えられるシンプルな10の質問をしてみた。たとえば「思い通りに行かないと腹が立つ」や「相手が誰でも、大抵は聞き手だ」といった質問だ。
このとき回答者は、11秒以内に答えるよう指示されたグループ、11秒以上時間をかけて答えるよう指示されたグループ、そのような時間的な条件が一切ないグループにわけられていた。
その結果、早く答えるように指示されたグループでは、社会的に望ましいとされる回答——いわば良い人な回答をする傾向があることが明らかになった。
良く思われる回答をした人の自己イメージを検証
次の実験では、パッと答えたときに良い人な回答になりがちなのは、本当の自分は善良な人間なのだという自己イメージが原因である可能性が検証された。こうした偏りのことを「善良な真の自己バイアス(good true self bias)」という。
こちらの実験では、被験者にはやはりさまざまな時間的条件の中で質問に答えてもらう。それに加えて、ある社会的な状況を評価してもらい、その人が持つ善良な真の自己バイアスの程度をも判定してみた。
このテストで善良な真の自己バイアスが低いと評価された人たちは、良い人という自己イメージが強くないので、タイムプレッシャーがあっても良い人な回答にはなりにくいはずだ。
急かされると自分を良い人に見せたくなる傾向が明らかに
ここから明らかになったのは、善良な真の自己バイアスが高いと評価された人は、概ね良い人に思われる回答をする傾向にあるが、特に考える時間が長いほどこの傾向が強く出るということだった。これは別に意外ではないだろう。
だが意外にも、善良な真の自己バイアスが低い人であっても、タイムプレッシャーにさらされたときは良い人な回答をしてしまっていたのである。
つまり、急かされるからといって、良い人であれ悪い人であれ「真の自己」が顔をのぞかせるわけではないということだ。
むしろ、タイムプレッシャーがあると、たとえ自分を偽ることになっても、自分を善良に見せたいという欲求が人間にはあるようだ。
「あまり考えずにパッと答えてください」という要請は、回答者に嘘を吐かせる。ならば、そうした質問に基づいた研究の結果もまた、嘘の結果なのかもしれない。
References:Under Time Pressure, People Tell Us What We Want to Hear – Association for Psychological Science – APS/ written by hiroching / edited by parumo
http://karapaia.com/archives/52283558.html
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