陸上自衛隊陸上自衛隊HPより引用)

神奈川県山北町が台風19号で水源が被害を受けたので、「自衛隊に災害派遣要請をしたい」という申し出を、県が断っていたことが取材でわかった。しらべぇ取材班は、山北町、神奈川県自衛隊からそれぞれ話を聞いた。

■山北町によると…

山北町企画政策課によると、13日午前0時50分ごろに山北町内の水源が台風19号により、被害を受けた。そのため、町内が断水になる可能性があるとし、自衛隊に災害派遣の要請をお願いするかも知れないという連絡を神奈川県に行った。

同時に、陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡県御殿場市)にも、同じ連絡をしたという。ただし、このときの自衛隊への連絡は正式な要請ではない。

続いて午前1時30分ごろに神奈川県の災害対策本部から、山北町に「被害状況はどの程度か」という連絡が入った。それに対しては、町は被害状況を申告。

午前4時ごろには駒門駐屯地から「具体的には、どんな被害があるのか」などと連絡があった。

そして、午前5時ごろには、「派遣の準備ができた。午前6時にこちらを出発して、一刻も早く山北町に入り、県からの要請があったら直ちに給水活動を開始したい」との申し出があったという。

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■給水車3台が到着するも…

山北町長は午前5時25分に、県に災害派遣要請をすることを決定し、午前5時30分ごろ県に電話で派遣要請を行った。県から文書で要請を行うようにという指示のもと、FAXで申請。午後6時ごろ県から「FAXを受け取った」という連絡が入った。

県からは、「他に代替手段がないときのみ自衛隊への災害派遣の要請を行う、今回は県の企業局の給水車を用意するのでそちらを優先して使ってください」という回答があった。

その後、午前7時ごろ自衛隊の先発調査隊約10~15名が山北町入り。午前8時06分に自衛隊の給水車3台が山北町役場に到着した。

■町が自衛隊にお詫び

自衛隊の給水車が到着したことを県に報告したと思う」と町の担当者は話す。しかし、この記録が残っていないという。

町は、県が災害派遣の要請をしていないのに、自衛隊に給水活動を行ってもらうことはできないとし、お詫びをしたという。自衛隊の給水車3台は水を積んだまま駐屯地に戻った。

その後、県の企業局の給水車2台が到着したのは渋滞の影響もあり、午後0時45分ごろだった。

■「撤収指示は出していない」

これに対して県は、しらべぇ編集部の取材に対して、

「派遣要請のFAXが届いたのは、午前6時半ごろ。自衛隊に関しては他の救助活動との関係から、なんでもかんでも要請という訳にはいかない」

「県の災害対策本部には、防衛省の職員も、自衛隊の連絡員もいたが、駒門駐屯地が出動したのは、誰も把握していなかった。県として自衛隊の給水車撤収の指示はしていない」

と述べた。駒門駐屯地は取材に対して、「任務の必要がなくなったので、撤収した」と話す。

自衛隊への災害派遣は、基本的に市町村が県に自衛隊派遣の申請をして、県が要請する仕組みになっている。県の担当者は、なぜ今回のようなことが起きてしまったのかについて、検証が必要だと述べている。

山北町は、非常事態で、職員が寝ずに対応にあたっていたために、混乱はしていたと話す。自衛隊の給水車が現場に到着したにも関わらず、そのまま撤収することが、二度と起きないよう願いたい。

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(文/しらべぇ編集部・おのっち

自衛隊の給水車3台が作業することなく撤収 県は「撤収指示は出してない」