米国の市場調査会社eマーケターがこのほどまとめたレポートによると、米国の検索広告市場は今年、551億7000万ドル(約6兆円)規模となり、前年から約18%拡大する見通しだ。

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グーグルのシェア73.1%とダントツ

 企業別の検索広告売上高は、米グーグル403億3000万ドルで首位。その市場シェアは73.1%とダントツ。同社は市場で2位以降の企業を大きく引き離しているが、その状況は今後も続くという。

 そしてグーグルに次ぐのが、米アマゾン・ドット・コムで、そのシェアは12.9%。この後に、米マイクロソフト(シェア6.5%)、米ベライゾンメディア(同2.0%)、米イェルプ(同1.8%)が続くとeマーケターは見ている。

多くの企業がグーグルからアマゾンに移行

 ただし、興味深いのはアマゾンの隆盛だ。同社の米国における検索広告シェアは昨年(2018年)、マイクロソフトを上回り、2位に浮上した。今年は前年比で約30%増と急成長し、グーグルとの差を縮めるという。

 前述したとおり、アマゾンの米国における検索広告シェアは今年、12.9%となる見通しだが、これが2021年には15.9%に拡大するという。一方で、グーグルのシェアは2021年に70.5%に低下する。また、マイクロソフトやベライゾンメディア、イェルプといった上位企業のシェアも低下するとeマーケターは予測している。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルは先ごろ、多くの企業はここ最近、検索広告の出稿先をグーグルからアマゾンに移していると報じた。

 広告世界最大手の英WPPは昨年、3億ドルの広告費をアマゾンの検索広告に投じた。この金額の75%は、それまでグーグルの検索広告に投じられていたものがアマゾンに回ったものだという。また、米最大手の広告代理店オムニコム・グループでは、同社の顧客が検索広告に支出した金額の2~3割がアマゾンの検索広告に投じられたという。

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 米調査会社ジャンプショットによると、米国ではeコマースの買い物客が商品を探す際、グーグルなどのネット検索サービスではなく、アマゾンのサイトで検索する人が増えている。

 その広告効果に期待する多くの一般消費財メーカーや小売業者が、アマゾンに広告を出稿するようになっているという。検索広告は、利用者が入力した検索キーワードに関連するスポンサー企業の商品を検索結果ページに表示するが、アマゾンには、このほか、利用者の商品閲覧内容に関連するスポンサー企業の商品を表示するディスプレイ広告もある。

 アマゾンは今年7月、広告事業がほとんどを占める、売上高の「その他」項目が4~6月期に前年同期比37%増の30億ドルに達したと報告した

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アマゾン、広告事業を強化

 こうした中、アマゾンは広告事業の強化を図っている。

 昨年はシステムに改良を施し、使い勝手を向上させたほか、かつて複数の部門に分かれていた広告商品を新部門「Amazon Advertising」に集約した。

 今年5月に同部門は、経営破綻した米国のインターネット広告技術企業「サイズミック(Sizmek)」の一部事業を買収することで合意したと発表。サイズミックの広告配信サーバー事業と、各種の情報に合わせて広告を動的に生成するDCO事業を買収するという。

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アマゾンのロゴ。フランス、ボヴェスの物流センター(写真:ロイター/アフロ)