2019年、インターハイのフェンシング選手権大会で2人の個人優勝者が誕生した京都府立乙訓高等学校。今回は、女子エペ個人の優勝者・寺山珠樹さん(3年)と女子フルーレ個人の優勝者・竹山柚葉さん(1年)、そして同部顧問の池端花奈恵先生にお話を伺いました。2人のチャンピオンが生まれた背景にあるものとは……。その秘密に迫ります。

優勝はうれしさと同時に、驚きもあった

【選手インタビュー】

女子エペ個人優勝の寺山さん
女子エペ個人優勝の寺山さん

―― 優勝した感想をお聞かせください。

寺山:私の過去2年間のインターハイでの成績は、1年生のときは3位、2年生で2位でした。最後は優勝したいという気持ちが強かったのでうれしかったです。

竹山:1年生でインターハイに出場する。これを目標にしていたんですが、出場できただけではなく1年目で優勝できるなんて……。うれしさと同時に驚きを感じました。


―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

寺山:“勝ちたい”という気持ちです。誰よりも強く願った人が勝利すると思うので、たとえ負けている場面があっても「絶対に諦めない」という気持ちでいました。周りからのプレッシャーも大きく負担に感じることもありましたが、最終的には自分の気持ちをしっかり持つことができました。

竹山:気持ちで負けず、強気に、前向きに。常にこれを意識していたことです。2,3年生の選手に挑戦する!という気持ちで試合に臨んでいました。

劣勢のときは、一から試合を始めるつもりで気持ちを新たに

女子フルーレ個人優勝の竹山さん
女子フルーレ個人優勝の竹山さん

―― 一番苦しかった試合はありますか?

寺山:去年が2位だったこともあり、決勝が一番苦しかったです。1年前と同じ成績になりたくないという思いが強く、精神的にすごくきつくて。対戦相手はよく知っている選手だったので、やりにくい部分もありました。余計なことは考えない、試合に集中しようと意識することで乗り切りました。

竹山:私は準決勝です。相手は何度か戦ったことがある選手。でも一度も勝ったことがなかったので、今回こそはという気持ちが大きかったんです。後半までは相手のペースで試合が展開していたため焦りましたが、このまま負けると悔いが残る。落ち着くために自分で“間”を取ったり、一から試合を始めるつもりで気持ちを切り替えたりしたことが逆転につながりました。先輩や監督の応援も支えになりました。みんなの一言で気持ちもしっかり保てるので、言葉って大きいなと思います。


―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

寺山:普段から、さまざまな状況を想定した試合形式の練習をしていたことです。例えば、自分が負けている点数から始める、逆に勝っている点数から始める、時間が残り少ないけれど負けているなど、いろいろなシチュエーションを経験して慣れておくと、実際の試合で同じ状況になっても落ち着いて対処できます。

竹山:私も試合を想定した練習は日常的にしていました。イメージトレーニングにもなるので大切だと思います。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

寺山:今回だけに限りませんが、インターハイは高校の名前を背負い、都道府県を代表して出場します。そのため高校の団結力も強く、応援も熱が入るもの。今年も熱気がすごかったなという印象です。

竹山:始めは、これまでのどの試合とも違う会場の雰囲気に飲まれて緊張してしまいました。試合が始まると集中するので大丈夫だったんですが、やはりインターハイは特別なものだなと感じました。

優勝は、仲間や周りの人の支えがあってこそ

【監督・池端先生インタビュー】

―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?

優勝できる実力があると思って臨んだ試合だったので、意外な結果ではありませんでした。ですが、特に寺山選手は優勝への思いが非常に強く、またプレッシャーも大きかった。それを思うと「本当によくやったね」という言葉が自然と出てきました。
竹山選手は1年生ながら大きな試合で力を発揮できたと思います。インターハイ経験のある先輩たちにサポートしてもらいながら、リラックスして戦えたんじゃないでしょうか。決勝戦のすぐ後に団体戦が控えていたので、「おめでとう」という言葉と、「気を引き締めてもう一回頑張ろう」と伝えました。


―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?

“自分で考えること”を重視しています。自分の課題は何かを考えて、それに対してどのように取り組んでいけばいいか。そして、それを実行する。自分が主体であることを意識させるようにしています。寺山選手であればフィジカル面が課題。自分の体に目を向けてコントロールし、自己管理することを大切にしていました。竹山選手は1年生で、まだまだ体力面・技術面ともに課題があるので、それを克服することがこれからも大切です。今回は無事、優勝できましたが、2年生、3年生で体験するインターハイはまた全然違います。気持ちを一新して、着実に成長していけるように努力するしかありません。


―― 一言で表現するなら、どのような選手だと思われますか?

寺山選手は“素直でまっすぐ”。言い訳をせず、自分の弱さや課題を認めることができます。それを自分の糧にして修正していけるので、年々順位が上がっていったんだと思います。一方の竹山選手は、“フェンシング大好き少女”(笑)。 7歳のときからフェンシングをしているのですが、今も練習をするのがすごく楽しそうで。それが強さにつながっているんだと思います。やはり好きな気持ちが一番ですから。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

優勝は自分たちが地道に頑張ってきた結果ではありますが、仲間や周りの人の支えがあってこそ。そのことを忘れず、人としても魅力のある選手になって、改めて全国、そして世界を目指してほしいですね。



インターハイが終わって約2カ月後の取材でしたが、選手たちの視線は既に先へ先へと向いているようでした。今後の夢を聞いてみたところ、寺山選手は「全年代のカテゴリーの試合でも勝ちたいし、海外の年上の選手にも勝ちたい」、竹山選手は「一番はインターハイ3連覇」とのこと。「勝ち続けたい」という強い気持ちを胸に、これからどんな姿を見せてくれるのか楽しみです。


profile京都府立乙訓高等学校 フェンシング
顧問 池端 花奈恵 先生
寺山 珠樹さん(3年)、竹山 柚葉さん(1年)