10月17日、秋のさわやかな空気のなか、京都市下京区の世界文化遺産・西本願寺 南能楽堂で、京都国際映画祭2019の開幕を告げるオープニングセレモニーが開催された。

【写真を見る】「RUN!-3Films」に出演の津田寛治(中央)は「(京都国際映画祭に)初めてお邪魔して、日本の伝統ある格式高い場所で映画祭をやっている感じにドキドキします」と緊張気味

京都国際映画祭は2014年から開催されているもので、今年6回目を迎える。上映作品は新作から無声映画まで、日本はもちろんアジアやヨーロッパなどさまざまな国の作品を上映する。アニメーションや学生の作品、深作欣二特集など個性豊かな作品が登場するが、注目は「牧野省三没後90年企画」。日本映画の父と呼ばれ、今年没後90年を迎えた牧野省三と、その息子・マキノ正博の代表作を特集する。さらに牧野省三が監督した無声映画「最古の『忠臣蔵』」も上映。活動弁士付きで、当時の空気を感じ取れる催しになっている。

また「映画もアートもその他もぜんぶ」と付けられたサブタイトルのとおり、市内各所で展示されるアートも見どころだ。今年はプロレスとアートという、不思議な組み合わせも登場する。

オープニングセレモニーは祇園甲部の芸妓による手打ちからスタートした。重要文化財の南能舞台に、そろいの黒留袖姿の芸妓たちが登場し、「七福神」「花づくし」の2曲を披露すると、能舞台は花が咲いたようにあでやかな空気に包まれた。

そして恒例の、京都国際映画祭実行委員会の中島貞夫名誉委員長による「第6回京都国際映画祭2019 ヨーイ スタート!」の開幕宣言。映画の現場で鍛えたハリのある声に、会場からは拍手が沸き起こった。

その後、来賓あいさつに続き映画部門総合プロデューサーの奥山和由やアートプランナーのおかけんたのあいさつ、アンバサダー浅田美代子の紹介などが行われた。奥山は、牧野省三没後90年企画について「京都の歴史が生んだ映画の父である牧野省三氏を勉強していきたい」と語る。京都国際映画祭では毎回日本映画に貢献した映画人に「牧野省三賞」が送られているが、今年は故・津川雅彦に送られた。

中島貞夫は津川の授賞理由について「映画に貢献してきた津川さんをたたえた」と振り返る。実は津川の生前にも牧野省三賞授与の打診があったそうだが、津川は牧野省三の孫でもあり、「身内がもらってどうするんだ」と固辞したそう。しかし、今回は牧野省三没後90年であり、津川雅彦自身も一周忌を迎えることから受賞することにしたと、津川の長女の真由子。「かわいい舞妓さんもいて、父も喜んでいると思います」と受賞のあいさつを締めくくった。

続いて三船敏郎賞の授与。本賞は戦後の日本映画界を代表するスター・三船敏郎のように、世界に誇れる大俳優を応援しようと創設された。過去には阿部寛浅野忠信佐藤浩市らが受賞している。今回は俳優歴40年となる中井貴一が受賞した。奥山は中井について「喜劇からシリアスな悲劇、日本伝統の時代劇、海外での活躍などどんな役でも堂々としていて、クセはないが華がある。その映画のグレードが上がる存在」と称賛する。中井は報道陣との囲み取材で、「三船さんは20代のころに一緒に仕事をしたことがある。朝、撮影所に止めたキャンピングカーの周りを掃除していて、どこのおじさんかと思ったら、三船さんだった。豪放磊落に見えて細やかな人。大人になってそのすごさがわかる。たとえば乗馬の技術でも、完璧に乗りこなしている。江戸時代に生まれているんじゃないかっていうぐらい。賞をもらって、もういっぺん頑張れといわれているような気がする」と感慨深げに語った。

京都国際映画祭は10月20日(日)まで、京都市内の映画館や公園、元小学校などさまざまな会場で開催中。「映画もアートもその他もぜんぶ」、秋の京都で見ごたえたっぷりの4日間を満喫しよう。

■京都国際映画祭2019 期間:10月17日(木)~20日(日)、会場:映画館、元小学校など京都市内各所、時間:会場により異なる、料金:会場により異なる(関西ウォーカー・鳴川和代)

三船敏郎賞を受賞した中井貴一。両親とも京都出身で今も本籍地は京都。「京都や京都の撮影所にはすごく思い入れがある」と語る