ヒアリ(国立環境研究所・坂本洋典撮影)

南米原産で強毒を持つため、特定外来生物にも指定されている「ヒアリ」が国内に定着か――そんな報道がインターネット上で話題になった。

しばらく報道で見かけなかったという人も多かったのか、ツイッターでは「遂にヒアリが侵略」などと受け止めている人も少なくない。そこで、しらべぇ編集部は国立環境研究所を取材した。

■「まだ定着はしていない」

17日にはツイッターのトレンドするなど大きく注目されたヒアリ。やはり多くの人が気にしたのは「定着」というワードだろう。しかし、どの報道を見ても「ヒアリ定着か」といったように断定はされていない。

環境省の報告によると青海ふ頭では羽のある女王アリが20匹見つかっており、今後の調査でさらに数を増やすと思われる。

余談を許さない状況なのは確かだが、既に定着してしまったかのように捉えてしまう人もネット上では見られる。では、定着を確定するとなった場合はどのような状況を指すのか。また、現段階での根絶の可能性も気になるところだ。

しらべぇ編集部は17日、国立環境研究所の生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長に電話を通じて取材を行った。

関連記事:ヒアリかどうかを速攻で判断 「ヒアリ警察」がスゴいと話題に

■確定するのはできない

ヒアリ(国立環境研究所・坂本洋典撮影)

まず五箇氏が訴えたのは「定着は確定できない」ということだ。環境省の資料によると定着は「継続的に生存可能な子孫をつくることに成功する過程」を指している。つまり、定着を確定するには世代交代が行われているのを確認せねばならない。

そのためには来年の春までわからないのだが、余談を許されない状況で「放置はできない」と五箇氏。そのため「定着の確定をしようがない」という。その上で現在は「定着の可能性も視野に入れて調査をすすめる」とのことだ。

しかし、世代交代をする可能性があるのも事実。確定はできないといえ、気を抜けない。また、こんなケースも想定できる。

「分布をはじめたら定着。そうなったらアウトです」

■別の場所でヒアリが…

ヒアリ(国立環境研究所・坂本洋典撮影)

東京港の周囲では20年の東京五輪に向けて会場の整備などが行われているものの、空き地や未整備の土地もある。そうした土地にヒアリが入りこむ危険性がある。

また、ここだけでなく都内の別の緑地に入りこんでしまうケースも考えられる。もし分布が拡大すると根絶が困難ななため、何としても防ぎたいところだ。

■根絶の課題は縦割り行政?

現段階で根絶の可能性は残されているのだろうか。五箇氏は「根絶の可能性はある」とコメント。しかし、そのためには国交省や港湾局、東京都などの協力が不可欠であるという。

「セクトを取り除いて根絶に向けて動くのが重要。それが一番大事ですね」

各省庁の連携こそが問題解決への近道であるようだ。万が一定着に至ってしまった場合は防除の「失敗」を意味する。そうなれば内輪の揉め事では済まされない。

取材の最後に五箇氏はしばらくヒアリ問題が世間で忘れられていたのではないかと指摘して、「まだヒアリの危機は終わっていない」とコメント。まだ世間が忘れるべき問題ではないと訴えた。

■ヒアリを見つけたら自治体へ連絡を

ヒアリ(国立環境研究所・坂本洋典撮影)

そもそもヒアリのニュースは見ても実際のヒアリに遭遇したことはないという人が大半であろう。もしヒアリを見つけたら個人で対処しようとせず、環境省ヒアリ相談ダイヤルか、最寄りの市区町村または都道府県の環境部局へ連絡だ。

もし見つけたとしても冗談で触ってみるなどは絶対にしてはいけない。たとえ死骸であっても素手でさわらない。また、刺されたときは、症状がある場合は近くの病院に相談しよう。

・合わせて読みたい→『サンモニ』小泉環境相や台風対応を批判 視聴者は取材姿勢に辛口評価

(文/しらべぇ編集部・大山 雄也

「ヒアリが国内に定着か」報道 改めて取材すると「確定できない」との理由は…