マジョルカ加入後の“初対戦”へ、レアル本拠地で番記者&サポーターを直撃

 日本代表MF久保建英が今夏、レアル・マドリードのBチーム「カスティージャ入団」というニュースは日本では大きな衝撃となった。しかし、ここスペインでは当初、「レアル・マドリードバルセロナとのクラシコに勝利した」という話題性と、日本メディアの熱狂度をメインに伝えられていたが、トップチームに帯同したプレシーズンで高いクオリティーを久保が見せ始めると話題の方向性は急激に変わっていった。

 それは一過性のものではなく、スペイン紙「AS」や、スペイン最多の販売数を誇るスポーツ紙「マルカ」でも、久保が一面で掲載されるまでになっていったのだ。その注目度は4500万ユーロ(約54億円)でサントスから加入した同じ18歳で同期のブラジル人FWロドリゴをも上回る異常なものであった。

 そんな久保がマジョルカに期限付き移籍してから1カ月以上が経過した今、レアル・マドリードの本拠地である首都マドリードで、久保はどのように捉えられているのか。

 久保がマジョルカ島へ渡った8月22日以降、マドリードの街中で久保の名を耳にすることはなくなってきた。しかし、ひとたび「クボについて聞きたいんだけど……」と質問すると、皆が快く「タケ・クボ(※スペインでの久保の愛称)のことか!」と答えてくれる。やはりトップチームの北米ツアーに帯同した“18歳の若き日本人選手”のインパクトは、いまだこの街に強く残っているようだ。レアルのホームスタジアム、サンチャゴ・ベルナベウで“マドリディスタ”(レアルのサポーター)たちに聞いてみた。

 試合観戦に訪れたアルバロさんは、「若いけどとてもいい選手だよ。彼に今必要なのはマジョルカで上手くやれるかだ。もちろん、来季マドリードに戻ってきてほしい。でも本当は今季ここに残るべきだった」と、マジョルカでのプレーを選んだ久保の決断を嘆いた。

レアル番記者が「もう少し守備面を向上させる必要がある」

 同じく試合観戦に訪れたハビエルさんも、「タケ・クボは大きく進化している若い選手だ。素晴らしい左足を備えているよ。マジョルカで上手くいくことを願っている。特に若い選手にとって、出場時間を得ることがプリメーラ(1部リーグ)では重要なこと。再び彼がレアル・マドリードに戻ってくることを願っているし、一時代を築ける選手だと思う」と大きな期待を込めた。

 スペインのラジオ局「カデナ・コペ」で、レアル・マドリードの番記者を務めるミゲルアンヘルディアス氏は、「クボは先日、すでに(マジョルカで)スタメン出場を果たし、徐々に監督の信頼を得ている。創造性豊かなプレーヤーだ。もう少し守備面を向上させる必要があると思うけど、すごい才能を備えており、彼はそれを上手く生かすことができるはずだ」と、18歳レフティーが持つ稀有な才能を認めた。

 久保がレアルに戻るキーポイントについては、「選手としてもっと形作られなければならないだろうね。そのためにまずプリメーラ(1部)で結果を残し、その後でチャンスが訪れた時に運をつかむ必要がある。おそらく来季もジダンが監督を続投すると思うが、マドリードに戻る準備をしっかりとしておかなければならない」と見解を述べた。

 一方、「監督がジダンでない場合、他のタイプのサッカーをする可能性があるし、より堅実でディフェンシブな戦いをするかもしれない。しかし久保は、まだそこまで守備を身につけているわけではない。まずはプリメーラで際立った活躍を見せ、初年度をいい形で終わらせ、その後で来季の監督に選ばれる必要がある」と、久保について何も知らない新監督に向けたアピールの重要性も説いた。

 現時点で久保が、マジョルカでレギュラーの座を手にしたとは言い難いが、攻撃面に関して言えば誰よりも目を引くプレーをしているといっても過言ではない。ここ2試合は起用法の問題もあり、パフォーマンスは低調なものとなっている。しかし、サッカー先進国スペインの人々さえも納得させる確かな技術を久保は備えている。

マドリディスタたちを納得させるプレーができれば…

 マドリディスタたちは、一度レアルユニフォームに袖を通した選手のことを忘れない。久保がマジョルカでの1年を有意義なものにして帰ってくるかどうか、彼らはその行方を厳しくも温かい目で見守ってくれるだろう。

 日本代表の活動から戻った久保は、19日にリーグ首位のレアルと対戦する。この一戦は久保にとって間違いなく試金石となり、スペイン中が注目する。代表戦での長距離移動、チームでの練習不足により、与えられるチャンスは少ないかもしれないが、わずかでも出場時間を得てマドリディスタたちを納得させるプレーができた時、その未来は大きく拓かれる。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

マジョルカMF久保建英【写真:Getty Images】