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Image by Image by ipicgr from Pixabay /iStock

 NASA無人惑星探査機ボイジャーから送られてきたデータから、太陽系の最果てには予想よりも高い圧力が存在することが明らかになったそうだ。

 アメリカ・プリンストン大学の天体物理学ジェイミー・ランキン氏によると、これはすなわち、これまで想定されたいなかった何らかの圧力源が存在するということであるらしい。

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太陽風が届く範囲「太陽圏」

 太陽からは太陽風というプラズマが放出されており、荷電粒子のいわば泡を作り出している。

 太陽風は太陽を中心に140億キロの範囲に広がると、そこで亜音速まで急激に減速する。ここのことを「ヘリオシース」という。電荷粒子の密度が低下し、磁場は弱くなる領域だ。

 この領域のさらに先には「ヘリオポーズ」と呼ばれる太陽風が届く理論上の限界がある。太陽風がここまで届くと、太陽系の周囲にある星々から吹く恒星風を押しやってそれ以上進めなくなる。

 このように太陽風が届く範囲の空間を「太陽圏」という。

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ヘリオポーズとボイジャー1号・2号の位置(2005年5月時点) Voyager_1_entering_heliosheath_region.jpg: created by NASA

地球から一番遠くにある惑星探査機ボイジャー


 太陽風が”ポーズ”するのは、星間宇宙から生じている押し戻そうとする圧力と、ヘリオシースの押し出そうとする圧力がちょうど釣り合うからだ。

 ――と推測することはできるが、実際にそこがどのような状態なのかはっきりと知るのは、そう簡単なことではない。モデルを使って仮説を立てることはできても、具体的な証拠はないのだ。

 だが、都合がいいことに、40年前に地球から打ち上げられたボイジャー1号と2号が、今そこを通過している。 

 ボイジャーは地球から一番遠くにある人工物だ。1号はすでに太陽圏を脱出し、現在は地球から200億キロの先の星間宇宙の虚空を航行中。そしてもう一方の2号は、今まさに脱出を図ろうとしている最中だ。

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NASA's Goddard Space Flight Center/Mary Pat Hrybyk-Keith

 どちらの探査機にも周辺の圧力を知らせる直接の手段はない。しかし「GMIR(Global Merged Interaction Region)」と呼ばれる太陽から放出された粒子が作り出したプラズマの波が、その絶好のチャンスをもたらしてくれた。

 GMIRは外宇宙へ向かって吐き出されており、2012年にヘリオシースに到達。ちょうどそこを通過中だったボイジャー2号がこれを観測した。

 そして、さらにその3ヶ月後には、そのときヘリオポーズを越えて太陽圏の外を航行中だった1号も感知した。

想定されていた以上の圧力を確認

 両機の位置と観測データから太陽圏境界の圧力が計算されたところ、267フェムトパスカル(フェムトは1000兆分の1)であることが判明した。

 地球上で私たちが経験している圧力に比べれば、ないにも等しい微かなものだ。それでも、ランキン氏によれば、これまで計測されてきた値よりも大きく、研究者にとっては驚きだったとのことだ。

 また、ヘリオシースの音の速度を計算したところ、およそ秒速314キロメートルであることもわかった。地球の大気を移動する音より1000倍も速い。

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NASA/IBEX/Adler Planetarium

宇宙線低下の非対称性


 もうひとつ驚きだったのは、このGMIRの移動に合わせて「宇宙線」の量が低下していたことだ。

 奇妙なのは、ヘリオシースを通過中のボイジャー2号があらゆる方向で宇宙線の低下を観測していた一方、太陽圏をすでに脱出していた1号はその領域の磁場と垂直に移動する宇宙線の低下しか観測していなかったことだ。

 太陽圏の内と外で宇宙線の変化が違うものになる理由は今のことろ謎だ、とランキン氏は話す。

 1977年に打ち上げられたボイジャーは老朽化も進んでいるだろうが、まだまだ引退することなく、太陽系の最果てで忙しく活動してくれている。

 この研究は『The Astrophysical Journal』(9月25日付)に掲載された。

References:Voyager: Pressure at the Edge of the System/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52283511.html
 

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