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■パリの動物園で、「モジホコリ」というスライム状単細胞生物の展示が初めて開始された

■脳や神経がないにも関わらず、物事を記憶し、学習する能力を持つことで知られる

フランスのパリ動物園(Paris Zoological Park)にて、ある奇妙な生物の一般展示が新たに開始されました。

学名を「モジホコリ(Physarum polycephalum)」というスライム状の生物は、鮮やかな黄色をした単細胞生物。単細胞生物が動物園で公開されるのは、これが初めてのことです。

しかもこの生物、脳がないのに迷路を解き明かし、口や胃袋がないのに食べ物を消化する力を持っています

パリ国立自然史博物館のブルーノ・ダビド氏は「数百万年も前から存在しているのに、未だ多くの謎に満ちた生物である」と話しています。

人前に初お披露目。名前は「ブロブ」

動物園で公開されるモジホコリの名は「ブロブ」と名付けられています。若き日のスティーヴマックイーンが出演したB級SF映画『The Blob(マックイーンの絶対の危機)』(1958)にちなんでいるそうです。

一般的にこの生物は肉眼ではっきり見えるほど大きくなく、展示には不向きだったのですが、ブロブは数十センチを越えるサイズにまで成長しているため、展示に至ったといいます。

しかし専門家の話では、「黄色が好きじゃない限り、あまり見て気持ちの良い生物ではない」とのこと。

また、ずっと黄色を保つわけではなく、次第に灰色に変色し、柔軟な体も徐々に硬くなって、最後には茶色の粉のように崩れ去ります。

モジホコリは1960年代から細胞周期や成長過程、行動形態などが研究されており、他にも数々の驚くべき能力が明らかになっています。

迷路の「最短ルート」が分かる

モジホコリは、優れた思考力を持っているかのような行動を取ることで知られています。

下記は、迷路の各場所に置かれたモジホコリの塊を用いた実験の映像(2011)です。

分裂しても2分以内で元どおりに合体する能力があり、動画内でも迷路全体にわたって均等にくっつく様子がうかがえます。

次に、迷路の下部にあるAとBの出口に大好物のオートミールを置くと、迷路中のモジホコリがオートミールに集まり始め、やがて1本のひも状に変化しました。

なんと、1本になったモジホコリが横たわるそのルートこそ、AとBをつなぐ最短経路だったのです。

さらに、フランス国立科学研究センターのオードリー・デュストゥール氏によると、モジホコリは「別種の食料が2カ所に分けて与えられると、どういうわけか決まって栄養価の高い方に移動する」のです。

また、別れた2つの塊が合体すると、学習した物事をもう一方の塊に伝えることもできるそう。高度な器官を持つことなく、論理的にも思える問題解決力をどのようにして備えているのでしょうか。

今後、ブロブがパリ動物園の人気者となるのか非常に楽しみです。

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reference: vice / written by くらのすけ
脳がないのに「学習」できる謎のスライム状生物、なぜかパリ動物園で公開スタート