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20代の若手を中心とした「お笑い第七世代」の活躍が目覚ましい。霜降り明星ハナコが賞レースを制し、EXIT、宮下草薙、四千頭身らをバラエティ番組で見ない日はない。ただ、だからといって先輩たちも黙ってはいない。そんな直接対決の場が『爆笑問題のシンパイ賞!!』テレビ朝日系列)。スタジオで対峙するのは、爆笑問題霜降り明星だ。

“遅れたままのルーキー
さっき「直接対決」と煽ってしまったけど、そんなにバチバチとした戦いがあるわけじゃないのだった。むしろ逆だといっていい。改めて番組内容を説明しよう。

爆笑問題のシンパイ賞!!』は、視聴者から寄せられた「心配な人やモノ」を潜入ロケで調査する番組。“霜降り明星チーム”はお笑い第七世代の若手たちが、“爆笑問題チーム”はベテラン芸人がそれぞれロケを担当。スタジオでお互いのVTRを見て、投票により「今日のシンパイ賞」を決める。

そりゃあ20代の若手芸人より、ベテランのほうがロケに慣れてると思うだろう。しかしそうとも限らないのだ。10月4日放送の第1回。爆笑問題チームのロケに出かけたのは、同じボキャブラ世代のBOOMERだった。「令和になって初めてのテレビ」だという。まさに“遅れてきたルーキー”である(番組内では“遅れたままのルーキー”とのテロップが出ていた)

BOOMERが調査したのは「田舎で24時間営業してるお店 絶対儲かってなさそうでシンパイ」という案件。ロケ開始直後、ボケの伊勢は「最近LEDなんだねカメラの照明は」と撮影機材を珍しがり、わずか5分で持ちギャグを使い果たす不安なスタートを切る。

ロケ先は、女性がたった1人で営む24時間営業の美容室。どんな人が夜中に来るのと一緒に客を待つが、誰も来ない。BOOMERの2人ははただただ美容室で「美味しんぼ」を読みふけり、そして寝た。

この番組、若手vsベテランのロケ対決の形を取っているのだが、若手は初々しいし、ベテラン側には不安があるしで、クオリティ的には結局イーブンだったりする。まさかのハンデなしマッチ。

だがどんなVTRになっても、スタジオの霜降り明星爆笑問題がしっかり料理してくれる。たとえ太田光がしつこくボケても、霜降り明星の2人は強い当たりでツッコみ返す。世代を超えた安定の座組が、初回で既にできあがっていた。

そして10月19日放送の第2回。ロケに出たのは霜降り明星チームが宮下草薙、爆笑問題チームが松村邦洋だった。

ハマらない松村邦洋
松村邦洋は「どうも北野武です!」と登場。『いだてん』でたけし演じる古今亭志ん生の調子でまくしたて、加藤一二三を加えたあと、再びたけしで「『いだてん』見ろバカヤロウ!」、そしてようやく「というわけで松村邦洋でございます」と名乗った。「ツカミ長いねん!」とワイプの中で湧くスタジオ。

松村がシンパイする案件は「ユーモア教室でどんなユーモアを教えているかシンパイ」。潜入対象のカルチャースクールに入るなり「どうも麻生太郎です」とフルスロットル。ユーモア教室のベテラン講師が「ユーモア共和国の大統領です」と名乗ったので、安倍晋三のマネで握手を求めるも、「はい」と適当にあしらわれてしまう。

以降、松村は講師に全くハマらなくなってしまった。熱心にメモを取りながらユーモアの講義を聞くが、質問に手を挙げて答えても「大した答えじゃない」と取り付く島もない。他の生徒さんの答えだとたいてい褒めている。完全に講師の心の中でシャッターが降りている。

講義の最後は「ユーモアスピーチ発表会」という名の成果発表だった。前に出てユーモアを披露する生徒に続き、松村が披露したのは本ネタのモノマネメドレー西田敏行達川光男と鉄板ネタを繰り出し生徒を笑わせる。これは大丈夫だろう、と、カメラが講師をとらえると、講師はうつむいて寝ている……!

そういえば同じ週の『相席食堂』(10月23日放送:ABC系列)でも松村邦洋は呆れられていた。神無月松村邦洋モノマネ旅だったのだが、松村のマイペースさに神無月がしびれをきらし、途中から別行動になっていた。「一緒にロケしたくないですね」とまで言われていた。

一週間に二度も相手にハマらない松村邦洋を見た。これは結局のところ松村邦洋が一番シンパイ……と言いそうになるが、次回予告を見て言葉を飲み込んだ。次回の『爆笑問題のシンパイ賞!!』、爆笑問題チームのロケ担当は三又又三。パンツ1枚で地下アイドルに密着している。この番組、おじさんたちがとにかくシンパイだ……!

取り急ぎ報告したいことは以上です。

テレビ朝日系列『爆笑問題のシンパイ賞!!』(見逃し配信:TVer

(井上マサキ タイトルデザイン/まつもとりえこ)
「井上マサキのテレビっ子からご報告があります」第15回。ライターでテレビっ子の井上マサキでございます。この連載は日々テレビを見ていて気になった細かいこと、今のアレってアレなんじゃないのと思ったことを、週報代わりにご報告できればと思っております。どうぞよろしくお願いします。