国民的映画「男はつらいよ」シリーズで監督を務めた山田洋次が寅次郎の少年期を描いた「悪童 小説寅次郎の告白」をドラマ化した井上真央主演の「少年寅次郎」(毎週土曜夜9:00-9:50、NHK総合)。

【写真を見る】井上真央にとって思い出の“寅ちゃん”とのシーン

脚本を岡田惠和が担当し、寅次郎の出生の秘密から戦争を挟んだ“悪ガキ”時代、そして妹・さくらに見送られて葛飾柴又から旅立つ14歳までを描く。

そんな同作の主人公は、映画シリーズには登場しない寅次郎の育ての親・光子。今回、光子を演じる井上に映画「男はつらいよ」シリーズの寅次郎役・渥美清そっくりの“少年寅次郎”との撮影エピソードなどを聞いた。

■ 「一生懸命考えながら演じているんだなと思い、すごく愛しくなりました」

――寅次郎役の藤原颯音さんとの共演シーンが多いですが、藤原さんの第一印象を教えてください。

「この作品はうまくいくな」って(笑)。あの子を見た瞬間、みんなが思ったんじゃないでしょうか。わくわくしましたね。

――印象的だったシーンはありますか?

第1話(10月19日[土]放送)の寅ちゃんと光子が橋の上で話すシーンですね。あの場面は通常よりリハーサルを1回多くやりました。

あのシーンで寅ちゃんは「どうやって泣けばいいか分からない」と言っていたのですが、あのシーンの前にまるで大物俳優さんのようにすごく集中しだして、“寅ちゃんの集中待ち”みたいになって…。

おいちゃん(竜造)役の泉澤祐希さんから泣くお芝居をする時に「(心の)スイッチを押すんだよ」とアドバイスをもらっていたので、監督が「スイッチ押してあげるよ!」って押すしぐさをしたら、「さっき押したから今のでオフになった」とか言っていて、賢いなって思いました(笑)。

そうやって一生懸命取り組む姿を見ていると、寅ちゃんも大事なシーンと思っていてくれていたんだなと感じましたし、終わった後に走ってきて「お母ちゃん大好きだよ」って言って涙をこぼしたんです。「なんて感受性の豊かな子なんだろう!」と思いましたし、すごくうれしかったし…。

本人も大きな役をいただくのが初めてながらも、一生懸命考えながら演じているんだなと思い、すごく愛しくなりました。

■ お母さんってこういう思いをするのかなと疑似体験させてもらいました

――第3話(11月2日[土]放送)から登場する井上優吏さん演じる中学生以降の寅次郎はいかがですか?

すごく寅さんです!

成長した分、渥美さんを彷彿とさせるような場面もありますし、幼少期よりさらに難しいといいますか、求められるものが多くてプレッシャーを感じることも多かったと思います。

これは2人ともなのですが、シャイで繊細な部分があって、とても真面目なんですよね。一生懸命求められることに応えようとする姿が愛おしかったです。

第5話(11月16日[土]放送)ではおんぶをしてもらうシーンがあるのですが、「大きくなったね、寅ちゃん…」と本当に思ってしまいました。

撮影は2カ月間ですが、「ついに寅ちゃんにおぶられる日が来るのか」って…。そのたくましさがうれしくもあり、さみしくもあり、お母さんってこういう思いをするのかなと疑似体験させてもらいましたね。

――夫の平造を演じる毎熊克哉さんとのお芝居はいかがでしたか?

基本的には相手のお芝居を受けて返すという感じなので、綿密な打ち合わせをして撮影に臨むということはあまりありませんでしたが、大事なシーンの前にはお話しをさせていただきました

私自身、毎熊さんの演じる平造さんがすごく楽しみだったんです。どんな平造さんになるんだろうって。

私が演じる光子も平造さんも映画シリーズに登場しないのでモデルとなる人がいない分、色んな演じ方ができるので、お互いに「これでいいのかな」と感じることがあったと思うんですよね。毎熊さんとは今回がはじめましてだったのですが、お互いに信頼関係を築きながら演じることができて本当によかったです。

――平造演じる毎熊さん、そしておいちゃん(竜造)役の泉澤さん、おばちゃん(つね)役の岸井ゆきのさんらくるまやでのシーンが印象的でしたが、現場の雰囲気はどうでしたか?

毎熊さんも泉澤さんも岸井さんも色んな現場を経験されている方なので、その場の空気に馴染む力がすごくて…。

皆さん役としても、新しい現場に入る役者としても相手に緊張させない、気を使わせない力を持っていて、そのおかげで最初から家族になれる感じがありました。

特に「会話をしなきゃ!」という気も使わないですし、みんなでぼーっとちゃぶ台を囲っている時もあればおしゃべりしている時もあって、その空気がとても居心地がよかったです。

また、寅ちゃん(藤原)がさっきまでゲラゲラ笑っていたのに振り返ったら機嫌が悪くなっているみたいな、本当に分単位で機嫌が変わるんです(笑)。

どんなに機嫌が悪くても笑わないといけないシーンはありますし、それを大人たちが一生懸命「寅、寅!」ってあやしていたので、自然と現場の結束力は高まったかもしれないです。(ザテレビジョン

10月19日(土)からスタートした「少年寅次郎」