◆立花党首の動画を全て視聴 見えてきたものは……

 ここ最近ニュースを賑わせている「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首。

 7月の参院選で当選してから、マツコ・デラックスさんを使った炎上商法や、対談動画における「あほみたいに子どもを産む民族はとりあえず虐殺しよう、みたいな」発言、N国に所属していた議員に対する脅迫容疑で書類送検、さらにわずか2ヶ月ほどで参議院議員を辞職し、参議院埼玉選挙区補欠選挙への出馬など、話題には事欠かない。

 過激な発言や炎上商法と呼ばれる手法に多くの批判が集まる一方、「N国がどのような政党なのか?」や「立花氏がどのような人物なのか?」などを知る人は少ない。そこで、立花氏やN国を分析するために、立花氏のYouTubeチャンネルの動画1406本を、全て視聴することにした。第3弾ではN国党の戦略と、立花氏自身が新たな権力・既得権益になっていることについて分析していく。

◆叩く相手を選んだ巧みな炎上商法
 立花氏やN国党がこれほどまで熱烈な支持を集めるようになった裏には、2つの戦略があったと私は考える。

 1つ目は、炎上商法だ。立花氏が「今の時代は、炎上商法を使わない人はむしろバカなんですよ」と語るように、N国は炎上商法を繰り返し、知名度を上げてきた。政見放送における過激なパフォーマンスや、自身を批判したマツコデラックスさんへ対する集団訴訟の提起、マツコさんの番組スポンサーである崎陽軒への不買運動など、数え切れないほどだ。

 また、立花氏はただ単に過激な行動を取るのではなく、噛み付く相手を品定めしている。2019年8月8日の動画内でマツコ・デラックスさんを「得たいの知れない物体」、東国原英夫さんを「元国会議員の薄毛」、デヴィ夫人を「愛人から側室になったババァ」、評論家古谷経衡さんを「頭の悪いロン毛」呼ばわり。

 そのうえで、マツコデラックスという物体はめちゃくちゃ数字を持っています。だから叩きます」と明言した。一方で、東国原氏は「過去の人で数字を持っていないから相手しない」。デヴィ夫人は「体を使ってですね、金持ちの男性から財産を相続したみたいなババアなんで相手しません」。古谷氏は「頭悪すぎます」と評し、この3人は数字を持っていないし、CMに出ていないので叩かないと明言した。

 Youtuberから一般人まで、数多くの人々が炎上商法と批判されてきたが、それらは単に企画者のモラルや知性が欠如していたり、自らのコミュニティだけを見ていたため、意図せず炎上した場合が多い。炎上後も謝罪して幕切れというパターンがほとんどだ。一方で、立花氏は効果的な標的を設定し、意図的に炎上を引き起こし、その後も謝罪ではなく開き直って誇らしげにしている。

 これら立花氏の炎上商法をマーケティングの天才などと絶賛する人もいるが、多くの人に不快感を与え、それと引き換えに注目を集める手法は、決して褒められるべきものではなく、倫理や道徳といった価値観を破壊する行為だ。

 これほど倫理や道徳を踏みにじった行為を平気でしてきた立花氏だが、NHKの受信料を払っていないことに関しては、動画(2018/11/28)内で「みなさん、守らなくてはいけないのは憲法や法律ではなく道徳、マナーです。こっちの方が優先なんですよ!」と発言していた。

 全ての物事を自分の都合の良いように解釈し、Youtubeというほぼ支持者しか見ない場で、自らの行為に自らの言葉で免罪符を与える立花氏に、1400本を超える氏の動画を視聴しても全く共感を覚えなかった。

◆権力・既得権益と弱者を対立させる構図を作った
 立花氏やN国党が支持を集めるようになった2つ目の理由は、「権力・既得権益(政治家NHKマスコミなど)VS弱者」という構図を作り出したことだ。

 立花氏は動画内で既得権益者のことを「ろくに仕事もせずにたくさんの給料を貰っている人」と定義し、政治家から電通、テレビ局、CMスポンサーまでを名指しして「既得権益者をぶっ壊す」と発言している。

 立花氏のこの発言に、私も一種の高揚感を得た。おそらく「権力・既得権益VS弱者」という対立構図と、「既得権益者をぶっ壊す」というメッセージが、社会へ対し大きな不満を抱いている多くの人に突き刺さり、参院選での勝利に繋がったことは確かだ。

◆立花氏自身が新たな権力になっているのではないか
 立花氏は動画(2019/06/14)内で、「立花孝志NHKから国民を守る党の悪口を言ってくれる人を探しています」と語り、自身の批判を募集していた。しかし、実際にN国や立花氏を批判したり、立ち向かった場合にはそれらを徹底的に攻撃し、新たな権力と化している。

 前述したように、マツコ氏へ対する執拗な攻撃や、今年の8月に行われた柏市議会選挙では、街頭演説中の立花氏へ対し高齢の男性が「嘘つき」とヤジを飛ばしたところ、「おい、誰や」と激昂し、その場から立ち去る男性に対し、関係者を引き連れて追い回し「やましいから逃げるのか」や「だったら止まって警察待てや」と怒鳴りつけ最終的に選挙妨害ということで私人逮捕し、これらの模様をYoutube2019/08/03)にアップした。

 最高裁判例(1948年12月24日)で選挙の演説妨害とは、「聴衆がこれを聞き取ることが不可能または困難ならしめる様な行為」と判示されており、この男性の「嘘つき」というヤジが選挙妨害に当たらないのは明確だ。

 その他にも、かつてN国党に所属していた中央区議会議員へ対し動画内で「徹底的にこいつの人生僕は潰しにいきますからね。二瓶親子、特に息子。覚悟しとけ。許さんぞボケ。俺どれだけ怒ってるかわかってるか?」などと発言し、脅迫の疑いで今月2日に書類送検された。

 それをうけ立花氏は、有罪になったら議員を辞職すると発言したが、翌日の動画(2019/10/03)内で、「あまりにもこの国のマスコミどもがバカすぎるので有罪になっても辞めない」とたった1日で前言撤回した。

 この動画で話していることがあまりにも意味不明すぎたので、10回見直したがそれでも全く理解できなかった。わざと論理破綻な内容にして何度も再生させることで、広告収入を増やす作戦だったのか、ナチュラル意味不明なことを話していたのか、真相は闇の中だ。

フリーライターの男性に対しスラップ訴訟を起こす
 また、「(N国党から立川市議へ立候補した)久保田氏が立川市にほぼ居住実態がない」というネット記事を公開したフリーライターでありHBOLにも寄稿している選挙ウォッチャーちだい氏に対し、久保田氏が名誉毀損で訴えた。

 立花氏はこの裁判について、久保田氏の動画(2019/05/12)内で「この裁判はそもそも勝って、ちだい君からお金をもらいにいくためにやった裁判ではなくて、いわゆるスラップ訴訟スラップっていうのは、裁判をして相手に経済的ダメージを与えるための裁判のことをスラップ訴訟っていうんですよ」と相手に経済的ダメージを与えるために提訴したと明言した。

 この発言の影響もあり、9月19日に千葉地裁は久保田氏の請求を棄却し、提訴自体が不法行為であるとし久保田氏に約78万5000円の支払いを命じる判決を下した。

 これらのように現在の立花氏は、自身が過去にあれほど批判していた権力そのものと化し、自らを批判するものに対して集団や金の力で攻撃を加えていることがよくわかる。

◆自らも既得権益者
 立花氏は動画(2019/08/18)の中で、立法の仕事ではなく、選挙に勝つために躍起になっている政治家たちを既得権益だと痛烈に批判していた。

政治家って法律作るのが仕事。でもそんなことしている政治家はほとんどいない。夏祭りで市民と一緒に盆踊りしてヨイヨイヨイってやっているわけですよ。選挙で当選したいから。立法の仕事をせずに選挙に勝つことだけを考えている人たちが大半。これまさに既得権益ではないですか?(中略) 盆踊りをしてる場合じゃないんですよ。この国の外交・防衛・内政を考えていかなきゃ。選挙のこと考えずに政治のこと考えろっちゅうことよ

「ザ・正論だな」と思った1秒後に、「立法の仕事をせずに選挙に勝つことだけを考えている人」の代表格が立花氏ではないのかという疑問が浮かんだ。

 ここで立花氏の経歴を振り返ってみよう。

 2015年千葉県船橋市議に当選したものの、1年ほどで任期中に辞任し東京都都知事選に出馬し落選。17年には、大阪府茨木市議会議員選挙、東京都議会議員選挙に立て続けに立候補するも落選。同年に東京都葛飾区議に当選したが、その2年後の19年5月に大阪府堺市長選挙に立候補するも落選。7月の参院選で当選するも、今月8日に参議院議員を辞職し、参議院埼玉県選挙区の補欠選挙に出馬する意向を表明した。

 上記の経歴のように、立花氏は任期を全うすることなく議員を辞め、選挙を繰り返しており、立法よりも選挙に力を入れているようにしか見えない。

 NHKスクランブル放送化のためには、国会での議席が1つでも必要なのは理解できるが、それならば立花氏以外の人を擁立すべきであって、これまで散々「政治家は立法の仕事をせずに選挙に勝つことだけを考えている」と言っていた立花氏が、たった2ヶ月で、しかも国会の開会中に選挙に出馬するのは、あまりにもこれまでの発言に矛盾した行為で、厚顔無恥な人間と言われても仕方ない。

◆立花氏自身は立法の仕事に取り組んでいるのか
 また同動画内で「あなたの街の衆議院議員や市議会、区議会議員は日頃何をしているか知っていますか?何もしていないでしょ。発信できることもないでしょ。なぜなら自分に票を入れてくれる人のための政治活動しかしていないから。僕は国全体のことを考えて仕事させてもらっているつもりです」と発言していた。

 しかし参議院議員としての立花氏を振り返っても、マツコ氏への炎上商法スラップ訴訟での敗訴、脅迫容疑での書類送検、Youtuberとのコラボ小西洋之議員の事務所への突撃くらいしか思いつかなかった。

 いくら国会が閉会中だったとはいえ、ほぼ全てが利己的な政治的活動だ。そんな立花氏が『政治家は立法の仕事をせずに選挙に勝つことだけを考えている。既得権益だ』と言える筋合いは毛頭ないはずだ。

◆弱者の味方?
 立花氏は動画(2019/09/26)の中で、「現在の日本は、お金持ちがずば抜けてお金をもらう一方で、貧乏人がめちゃくちゃ増えている」と発言し、「政治家NHK職員などの既得権益層が不正をしているから貧困層の中で政治不信が起きている」と解説している。

 そしてそれらへ対する対策として、「年収10億や100億もらっているIT金持ちなどに政治の世界におりてきてほしい」と述べ、その理由として「お金持ちは嘘がない。政治家として不正しない。年収10億ある人たちは。お金持ちが政治家になると金にクリーンになる」という持論を述べている。

 そして「ホリエモンや青汁王子はすごくお金を持っているから、政治家になって彼が悪いことするなんて誰も思わない。彼らみたいな人が、政治家になって社会を変えていくしかない」と語った。

 この動画を見て私は呆然とした。「お金持ちは嘘がない。政治家として不正しない」と立花氏は言ったが、金持ちのトランプ大統領になったアメリカでは、2018年トランプ氏の慈善団体が資金不正使用の疑惑でニューヨーク州の司法長官によって解散させられたり、ロシア疑惑やウクライナ疑惑など数多くの問題を抱えている。

 また、性的搾取を目的とする未成年者の人身取引の罪と、同様の犯行を共謀した罪で逮捕され、勾留中の刑務所で死去したジェフリー・エプスタインは、総資産は1200億円ともいわれたアメリカ有数の大富豪であった。

 さらに、立花氏が語っていた「金持ちはお金を持っているからクリーン」という理論も、立花氏が期待する人物として名前をあげた堀江貴文氏や三崎優太氏によって、間違った理論であると証明される。

 まず堀江氏は、お金持ちだったライブドア時代に証券取引法違反で懲役2年6ヶ月の実刑判決を受けている。そして、三崎氏もお金持ちだった社長時代に約1億8000万円を脱税したとして、法人税法違反などの罪に問われ、東京地裁から懲役2年執行猶予4年の判決を言い渡されている。

 お金を持っている人がお金に関する犯罪に手を染めるケースがある以上、立花氏の「金持ちはお金を持っているからクリーン」理論は全く説得力がない。

◆動画を鵜呑みにせず、ファクトチェック
 立花氏のように、政治家が国民に対しネットを通し直接その声を伝えることは、その政治家の考えを直接知ることができ、政治家との距離感も縮まるためとても有用なことだと思う。しかしその一方で、たとえ国会議員の発言だとしてもファクトの怪しいものも多い。また、関連やおすすめで出てくる動画も同じような主張のものが多いため、Youtubeの中のかなり極端に偏った世界に自分自身が閉じこもってしまう恐ろしさを感じた。

 その極端な世界から逃れるためには、動画を見終わった後に自分で調べ直す必要があるが、かなりの労力を要すため、多くの人がそこまではしないだろう。

 このようなYoutube動画による社会の分断を防ぐためには、これからはメディアが、Youtubeで自身の考えを発信している政治家の動画をファクトチェックする必要があるだろう。

<文/日下部智海>

日下部智海】
明治大学法学部4年。フリージャーナリスト。特技:ヒモ。シリア難民やパレスチナ難民、トルコ人など世界中でヒモとして生活。社会問題から政治までヒモ目線でお届け。