長袖の旧バージョンの衣装とプリキュアおじさん

◆職場の同僚は、本当の私を知らない
 景気が良かった頃に比べ、私を含めた現代のおじさんはとにかくカネが無く、普段行けないような所に連れて行ってくれたりするような、若い人にとって目標や憧れにしないまでも「ちょっとめんどくさいけど上手く付き合って行くのもいいな」と思うような存在ではすっかりなくなった気がします。
 
 若い人と同じようにカネも甲斐性もないわけで、食べるものや着ている服もさほど変わらない。ただ、歳だけとってる人、という場合も少なくないんじゃないでしょうか。

 例えばあなたが所謂若者だったとして、歳の離れた上司・先輩など自分より上の世代の知人が、着る物や食べる物、そして観ている物まであなたと大差無かったらどう思うでしょうか。その知人が「歳こそ離れているけど若い人と話の合う俺」のつもりでいても、その歳になって若い世代と大差無い物を好んでいる・手にするしか選択肢が無い、というのはなんとも夢も希望も無いような、そんな気持ちになるかもしれない。

 「同じようなものを」手に取っているケースならまだ良い方なのかもしれません、これが極端に対象年齢の低い物だったらもうなんか、目も当てられないというか………。

 これを書いている自分はそう思われるに十分な側にいる、というかそのものになってしまった、そしてその事を隠して生活している現在46歳の「プリキュアファンなのです。

 もう結構な歳なのでプリキュアの情報と並行して高い歯磨きの情報なんかも集めつつ、好きが高じて週末などにプリキュア楽曲だけかけるDJとして(それをDJと呼ぶのかどうかは置いといて)、活動8年目になる者です。何かを始めるのに遅すぎる事は無い、と言いますが、遅すぎないにしてもやっぱ遅いよ!と良く思ったりしてます。

DJするプリキュアおじさん

◆私は「プリキュアになりたい」と軽々しく言えない
 御存知無い方もいるかもしれないので乱暴に説明しますと、「プリキュア」とは、「女児向けアニメ」と呼ばれてきたカテゴリアニメ作品、そこに登場する強くてかわいい戦う女の子達の事で、2004年の放送開始から10数年間、様々な理由から戦いに身を投じる事になってしまった女の子たちが、戦いの中で女の子である事をまっとうし、これによって守る対象や、時には敵対している者との間に絆を築いたりしながら仲間を増やし、代替わりして行くうち、今や赤穂浪士の数を優に超える人数となった「女のヒーロー」です。

 自分は文章を書くのが下手な上に滅茶苦茶遅いので、これを書かせていただいているうちに(発注されてから7ヶ月が経過していました)、60人目のプリキュアが誕生してしまいました。

一部のオタクは何かに苦しんでいる時に見たプリキュアを親だと思う習性がある」とは知人の言葉ですが、自分もこれに漏れずそういった経緯があってこの作品が好きになり、今に至ります。

 好きで観ているというだけなので、特別誰かの理解や許可が欲しいとも思わない反面、人の目が全く気にならない訳でも無く、これを職場などで積極的に話したりはしていません。
 人には色々な好みもある以上、いろいろな「決定的な嫌」もーー本来、他者の趣味嗜好は尊重されるべきで、そういうのってあってはいけないのかもしれないけど今現在当たり前にあるわけで、そういう「決定的に嫌」という感情を持つ人がいる以上、支持者側が血相を変えて「何がいけないんだ!」と主張して事態が好転するとは到底思えず、というのがその理由です。

現在の半袖バージョンの衣装

 以前の職場などで、こういう事を試みた事が無かった訳ではありませんでしたが、イイ歳した男がプリキュアという構図ゆえでしょうか、「え~プリキュアになりたいんだ~?(おまえが笑)」みたいな感じでからかわれたりする事は少なくなかったし、なんならこれが拒否反応としては一番マシな部類だったかもしれません。

 こういう時、「『女の子は誰でもプリキュアになれる』と謳った作品もあった、最近では男の子や町中の人々がみんなプリキュアになった作品もあった(賛否もあった)、プリキュアというのは今まで観てきた限り原則的にひとりで勝手になるもんではなく、積み重ねられ築かれていく関係こそをプリキュアと呼ぶのかもしれない」と私は心の中で繰り返し呟き、やり過ごしていました。

 なにより作品の中のプリキュアたちは「なってから」の方が大変、こういったルールがあるわけでは決して無いのですが、自らが望んでプリキュアになった場合、取り返しのつかない大きな喪失、別れが待っている傾向にあります。あの人もそう、あの人もそう、観てればわかる事なんだ、なりたいのかとかそういう事を軽々しく言ってもらっては………と言いたいのを我慢して「はは………」と笑ってやり過ごすくらいしか無いどころか、面白つまらない扱いをされるのが関の山で現在のスタンスに落ち着きました。

 そう考えるとシリーズを何作も観ていながら尚、プリキュアになりたい」と周囲に言って憚らないとっくに子供じゃないファンは何かと大きな別離を果たしているのかもしれません

◆「大きなお友達」という存在と、その中での軋轢

コスプレしながらDJするプリキュアおじさん

 とかく自分達を「我々」とか、僕みたいなのを指して「あいつら」といった大きな枠で語られがち、気持ち悪がられがちのイイ歳のファン、好事家、オタク、呼び方はなんでもいいんですが、それこそ我々だって一枚岩というワケではありません。

 詳しく書きませんが最小コストでもってファンの間での有名人になりたいだけの人、承服しかねる方法での「好き」の発露や、所謂古参ファンと新参ファンの世代とそれを超えた断絶(笑)もある、仲違いしてしまった同好の士とやたら外出先で出くわしたりもします、どれもそりゃそうでしょうねという話ばかりですけども。

 いつだったかプリキュア関連の催事で、「お子様、親子が対象のイベントですのでそれ以外のお客様は配慮を云々」というような、別に来るなとも歓迎とも書いていない文言がHPにあり、これを見るや「大人だけで観に行くのはダメって事ですか?」的な問合せをしまくるムーブメントが起きました。この事態を受けた運営側は、よっぽど面倒だったのか、もう一段階遠まわしな表現の文章に差し替えさせてしまうような事も実際にありました。

 『プリキュア』という作品にビジネスで関わってる人は正直、こういう場にイイ大人が来るのってどう思っているのかどうかは私もわかりませんし、こういった出来事をどう捉えるかは各自の自由なんですが、いい歳をした大人のファンが「じゃあどうしたらいいんですか? どこまでならいいんですか!?」という声を上げた結果、ルールや禁止事項が一段階厳しくなっておしまいという、自分で自分の首を絞めるようなケースが度々起こっているようにも見えます。

 個人的にはこういった趣味嗜好ってある種のバカバカしさとかみっともなさを常に背負って生きているような所があると思っていて、その辺に疲れちゃった、耐えかねちゃった人が「これは大人の鑑賞に堪えるモノだから、これを観ている自分はおかしいワケでは無い」という感じの主張を始めたりするのかなという印象なんですが、作品がどんなに良くて、それに感動しても、それによって生業でもなく子供がいるでもない、女児向けアニメを熱心に観てる大人による自身の正当化は難しいんじゃないのかなと。

本人主催イベントではバーカウンターに立つことも

 一方とっくに子供では無いなりに若い世代のファンには、そういった趣味趣向が実際に忌み嫌われたりしていた時代の事なんか全く知らないという人も当たり前にいたりします。SNS上でそういう発言を見かけ、今まで自分は、若いオタクはとにかく歓迎されないと気が済まない人ばっかしだな、と思い込んでいたので(実際そういう人も沢山いますけども)これには結構反省したこともあります。

 それ故に起こるトラブルなんかも十分ありそうながら、近頃では商売上の目配せという意味もあってなのか、プリキュア関連商品から「女児向け」というカテゴリ分けを外したとか聞きます、だからといって自分が対象に含まれるとは到底思えませんが世の中も変わっているんだなぁ、と思うと同時に、そういう若い人達からすると自分のような者は存在しない何かに脅えて、お互いを牽制しあって生きている、謎の迷惑な存在に映っているのかなと。

◆職場の同僚に明かしてみると……

プリキュアおじさんグレート・ムタ風。プリキュアコスをする奥さんが突発的にプリキュア柄の布で浴衣を作ったのでそれを着用したとか

 周囲の人が自分の趣味嗜好を知っているというのがどういう感じなのか知りたいのもあって、職場にいるいつでも疎遠に成り得る適切な距離感の、様々な年齢の社員数名で飲みに行った際に自分の話をする機会があったのでいろいろと明かしてみましたところ、後日そのうちの1人が連休のお土産と一緒に「これ持ってると思いますけどー」と小さな声でコンビニでやっていたプリキュアスタンプラリーゴールするともらえるステッカーを2種類も貰ってきてくれていて、なんて素晴らしい女性なんだ…世の中捨てたもんじゃないな!とえらく感動してしまいました。結局受け手の問題なのかもしれません。

 とりとめなく長々と書かせていただきましたが、こういうものを好んで生きている僕を含む招かれざる客達も、同じような者同士でお互いを「嫌だなぁ」と思ったり、実際に文句を言ったりしながら、第三者からは全員纏めて怪訝な顔されたりもする時もあるよねという日々を過ごしていますが、皆、なにかしら必要に感じてプリキュアを好きだったりするんだろうし、ショーライブの会場でよく見かけた、目立とうとしていっつも騒いでいたヤツが、ある時から静かになって当時のソイツのように騒いでる客に話しかけて諫めているのを目撃したり、長く楽しんでいる故の好事家イイ話なんかにも出くわしたりもします。

 今後も見て見ぬフリしてもらえる程度の活動をしつつ、プリキュアがいつまでも子供に人気で、そのおこぼれを長く楽しんでいけたらなーと、勝手な事を思っています。来年で17作品目!気が向いたら是非観てみてください! さらに、劇場版スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』は昨日19日から公開されましたが、過去に無いレベルですんごいよかったです。あと僕のやってるイベントもよかったらお願いします。

DJするプリキュアおじさん

<文/プリキュアおじさん

プリキュアおじさん
ぷりきゅあおじさんTwitter ID:@precureojisan。サラリーマンでありながら、プリキュア関連楽曲のみでDJまがいの活動をしている。既婚者。

長袖の旧バージョンの衣装とプリキュアおじさん