「真面目に生きてれば報われる」気持ちがあると結婚がしんどい。

真面目にやってもどうしようもない、ってわかってるのに恋愛へ真面目に取り組んでしまう。そして千切れるような思いをする。次こそは、と反省点を書き出したり、友だちに自分の欠点を聞き出したり……。結局、そんなところまで真面目。

真面目に恋愛やるのしんどい。でも、これ以外の生き方を私たちは知らない。

真面目に生きていると、いいことがたくさんある。友人の悩みもちゃんと聞くから、嫌われてはいないと思う。器用じゃないから勉強で学年トップの成績は取れないけど、中の上くらいは狙えるし。

仕事も真面目に取り組めば、上司から気に入られてなんとかなるし。極端な成果主義の会社にでも入らない限り、生きていくのはつらくない。

■ 真面目にやってれば、人生は何とかなってきた

「真面目にやれば人生なんとかなる」のって、本当だよ。私なんて、なんのスキルもないのに20代で会社辞めて、それでも何とか食べていけるのは真面目だから。頼まれた仕事をちゃんとやり遂げるとか、不器用でも体当たりで取材するとか。

努力で「それなり」だけど、何もかもカバーできてきた。そして、そんな自分に満足してきた。

でも、その「真面目にやれば報われる」ルールがまったく通用しないのが、恋愛結婚。

真面目にやってきたからこそ、幼稚園くらいでもうぼんやりと人生のレールを察するじゃない。小学校、中学校、高校、行けたら大学か専門学校、そして就職、結婚、出産。大体この辺までは誰でも通る道として、まっすぐなレールが見える。なのに、結婚から先が唐突な運ゲーになっている。

■ だって真面目さで成功してきたんだもの

「私の人生、何かがおかしい」と気づくのは、彼氏が数年いないことに気づいたときか、もしくは過去の恋愛遍歴を振り返ってまるで成長していない自分に気づいてしまったときか。

過去の恋愛を反省して、友だちに相談して、真面目に学習して、それなのに恋愛ではぜんっぜん成長できない。むしろノリで付き合ったあの子はさっさと入籍して、彼と幸せになってて今度2人目が産まれるって。

いや、友だちのことは祝いたいよ。ねたんでるわけじゃなくて、心から祝ってるって。ただ、自分はいったい何をやっているんだろう、ってつらくなるだけ。恋愛にまつわる心理学も勉強したよね、こういうコラムも読むし、婚活アカウントはTwitterで読んでる。ちょっとずつだけど貯金もしてるし、結婚しても共働きでいいと思ってるよ。家事もそこそこできるって。

なのに、なんで私は独身なの? 私の何が悪いの?

そう思ったとき、世界はガラガラと音を立てて何かが崩れていく。わかってる、結婚は努力じゃなくて巡り合わせ。結婚は努力じゃなくて運。いま彼氏がいなくても、誰かが悪いわけじゃない。でもそんなの、人生で経験したことない。だってこれまでは自分を省みれば、どうにかなってきたんだから。

■ 報われたい思いは、相手への条件を厳しくする

そして、真面目に努力すればするほど、報われたい思いばかりがムクムクと育ってしまう。「努力を100つぎ込んだんだから、100報われたい」とどこかで願ってしまう。そして報われたいから、結婚したい相手へたくさん求めてしまう。

真面目にやってるんだから、私より少し稼いでる相手がいい。私も真面目に生きてるんだし、175cmくらい背がないと。これでも真面目にがんばったから、同年代か年下と結婚したい。

ひとつひとつは決して贅沢というほどではない。けれど条件がジェンガのように積み重なって「そこそこの夢詰め合わせパック」みたいな男性像ができてしまう。でも自分だってそこそこがんばってるじゃん、だからそこそこを求めて、何が悪いの。

なんで、真面目にやってきたのに、私だけ報われないの。

そう思ったとき、女は独身コンプレックスに絡め取られた魔女になる。

■ 「がんばったけど無理だった」愛しい自分を見つけよう

結婚が人生のすべてじゃない、そんなことはわかってる。今は独身だから差別されるような時代じゃない、わかってる。でもそこで「結婚」の2文字を諦めきれないのは、どこかで「真面目に取り組めば報われる」と信じているから。

それは真面目教という、信仰にすぎない。そしていままで真面目教を信じてきたら、偶然ご縁が降ってきただけのこと。

人生はあらかた運で決まる。パナソニックの創業者である松下幸之助は、成功の90%は運で決まると言ったそうで。仕事だって、友だちだって、もっと言えばいまの私が健康でいることすらも運がよかっただけのこと。

真面目をやめろ、とは言わない。というより、今更言ったところでやめられないだろうから。ただ、結婚や恋愛で思ったような成果が出なくても、そんな自分を「がんばったけど無理だったなー!」と愛してあげて。「何もかも順当に進めていく」という人生を諦めよう、手放そう。それはごく一部のラッキーな人が手にするものだから。

結婚において、真面目すぎるあなたはラッキーじゃないかもしれない。でも、そんなあなただって、世界で一番愛おしい存在。独身コンプレックスなんて、あなたにはもったいない。「がんばったけど独身だわ~。人生どうにもならないこともあるもんだ」と、お茶でもすすっていたほうが、きっと楽になれる。

無理な結婚をしてがんじがらめになるくらいなら、結婚を手放した先にある一杯のお茶は、何倍も尊い。

(文:トイアンナ、イラスト:itabamoe

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