母なる自然は特定の生物たちに凶悪な液体を与えたもうた。我々はそれを毒と呼ぶ。西洋チックに言うならヴェノムだ。
運が良ければ少し腫れる程度で済むかもしれない。だが、最悪の場合は皮膚が腐り落ち内臓がドロドロに溶かされ苦痛でのたうち回った末に死にいたる。
我々の誰一人として自然の悪意から完全に安全でいられる者はいない。
そしてその恐怖を前にしたら目と耳をふさぎおびえ続けるか、あえてその深淵を覗き込み自然の脅威に理性の光で立ち向かうか、どちらかを選ばねばならない。
そんなわけで今回は自然が産んだ凶悪極まりない、時に死ぬ方がマシと思えるほどに苦痛を与える最恐で最凶な毒を持つ10の生物を見ていこう。
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10. ドクイトグモの毒
海外にこんな話がある。ある女の子が美容院で三つ編みを編んでもらった。それからしばらくして、その子は突然ひどい頭痛を訴えて泣きはじめた。
心配したお母さんは女の子を病院に連れて行き、医者が診察のために三つ編みをほどいた。すると、あろうことかその子の頭皮が丸ごと剥がれ落ちてしまったのだ!
驚いた医者が思わず頭皮と髪の毛を床に落とすと、そこからドクイトグモの群が這い出してきた。
ドクイトグモはずっとそこで女の子の頭皮を噛んでおり、おかげで皮膚が腐ってぼとりと落ちたのである。
この話はただの都市伝説かもしれないが、ドクイトグモの恐ろしさは誇張ではない。その毒に含まれるタンパク質は組織を内側から壊死させる。
噛まれて2~3日も放置してしまえば、壊死した部位を切除して皮膚移植をするしかなくなってしまう。
9. コブラの毒
コブラは見方によってはユーモラスな姿をしているかもしれない。だが、その毒はユーモラスなどではない。
まず、コブラは毒を注入するためにあなたに噛みつく必要すらない。2mほどもびゅっと毒を飛ばせるからだ。それが目に入ろうものなら失明する恐れがある。
さらに噛まれるなどして運悪く毒が血管に入ってしまえば、残された時間は30分だ。タイムリミット以内に処置を施せなかった場合、窒息で命を落とすことになる。
コブラ毒は横隔膜(肺を動かす筋肉)を動作させる受容体に結びつき、脳からの「動け」という指令を阻害する。
受容体の3分の1がコブラ毒と結合してしまえば、あなたはもう呼吸することができない・・・すなわち死だ!
8. オニダルマオコゼの毒
魚であってもあなたを苦悶のうちに殺せるやつがいる。サメのことではない。浅い海の砂泥にひっそりと潜んでいるオニダルマオコゼのことだ。
むろん、こっそり身を隠しているのも故あってのことだ。背びれのトゲからは強力な神経毒が分泌されており、うかつにも近寄ってくる獲物を待っているのだ。
人間とてうっかり踏みつけでもすれば、海の底で苦しみもがきながら死ぬことになる。
毒の作用はまだ完全には理解されていないが、コブラ毒のようなタンパク質を血液中に注入しているようだ。
それはただ肺の動きを停止させてしまうだけでなく、激しい苦痛、筋肉の痙攣、心臓へのダメージ、麻痺といった極悪コンボで攻めてくる。
7. ミノカサゴの毒
オニダルマオコゼ毒ほど致命的なわけではないが、ミノカサゴの毒もうっかりヒレのトゲで刺されれば涙が枯れるほどの痛みを味わうことになる。
もちろん刺された回数が多ければ、激しく痛むだけでなく風船のように腫れて呼吸困難となり、そして本当に運が悪ければ体が麻痺することになる。
海中での麻痺・・・つまり、溺れ死ぬということだ。
6. オニヒトデの毒
海の中でこのトゲトゲしたやつをうっかり踏みつけてしまったらすぐさま悶絶級の激痛に襲われ、ついでひどい出血と腫れに見舞われることだろう。
その症状は30分から3時間で治るのだが、アナフィラキシーショックで重症化することもある。
痺れ、嘔吐、重度の頭痛、まれに麻痺を引き起こし、最悪の場合は死にいたる。
5. アリゾナ・バーク・スコーピオンの毒
クモやカブトガニに近いサソリは、地上を忍び歩く恐怖である。アリゾナ・バーク・スコーピオンは、そんなサソリの中でも見た目と毒のどちらにおいても最悪のやつだ。
意外にもほとんどのサソリは人にとっては無害で、刺されてもせいぜいちょっと痛くて腫れる程度だ。
だが、このアリゾナ・バーク・スコーピオンが殺意を抱けば甚大な毒ダメージを覚悟せねばならない。
激しい痛みに襲われ、腫れや痺れといった症状のほか口から泡を吹くほどの呼吸困難に陥り、痙攣にも苦しむことになるだろう。
4. アメリカドクトカゲの毒
怪物のような姿にふさわしく、英名を「ヒラモンスター(ヒラ川の怪物)」という。毒の威力は比較的弱いが、その注入方法は身震いするほど恐ろしい。
一般的な毒ヘビとは違い、アメリカドクトカゲは注射器のような歯を持たない。口の中の牙にある溝からしたたり落ちる。
そのため、蛇のようにシュッと噛んでサクッと毒を注入するといった洗練されたやり方は期待できない。
ガブッと噛みついたら、力まかせにグイッと肉を引っ張っては引き裂く。そこからじわじわと毒が染み込んでいく。「せめて、苦しまぬように」とか、そんな慈悲はゼロだ。
毒は激しい痛みを引き起こすが、現時点で有効な血清が存在しないのも嫌なところだ。ただし健康な成人の場合は噛まれても死に至ることは稀とされている。
3. クロゴケグモの毒
英名を「ブラックウィドウ(黒い未亡人)」といい、どこかダークな雰囲気をただよわせるクロゴケグモだが意外にもかなり大人しい。
その毒を体験してみたければ、わざわざ怒らせてやらねばならないほどだ。だが、実際に噛まれてしまえば自分の愚かさを呪うはめになる。
その毒はクモのものとしては最強クラスで、一噛みであってもガッツリ注入されてしまえば大人ですら命取りになる。
血管に流し込まれた毒は、そこから神経系に侵入して乗っ取ってしまう。噛まれた人は数分以内に体の自由がきかなくなり、それから死後硬直のような筋肉の痙攣が繰り返し押し寄せる。
この永遠に終わらない罰のような苦痛の波は最大24時間も続く。速やかに治療を受ければ死ぬことはないが、むろん運に見放されてしまう哀れな者もいる。
ちなみに日本では2000年に山口県の米軍岩国基地で発見されて以降、2013年現在でも発見・駆除の報告が続いている。
2. オオベッコウバチの毒
あのタランチュラを狩り、卵を産みつけることから英名を「タランチュラ・ホーク」という。むろんタランチュラにとって恐怖そのものだろうが、人間にとっても恐怖である。
幸か不幸か、その毒が人間の致命傷になることはない。しかし、刺されれば人を完全に無力化する激しい痛みに襲われる。
自らを実験台に虫刺されの苦痛を記録した、著名な昆虫学者ジャスティン・シュミットによれば、これに刺されたときに唯一できるのはただ横たわり悲鳴を上げることのみだそうだ。
1. カモノハシの毒
あまりに奇妙な解剖学的特徴を持ち、カモノハシ科カモノハシ属唯一の種であるカモノハシは、神の気まぐれによって生まれたのではなかろうか?
体毛を持ち、それでいてクチバシがある。卵を産むくせして、母乳を分泌し、なのに乳首はない。
そしてここにランクインしていることからも分かるように、後ろ足の蹴爪からは毒が分泌されている(オスのみ)。
でたらめな生物らしく、その毒もただの毒ではない。動物界随一の長引く苦痛を与える毒だ。
悪いことに今のところ有効な血清はなく、あの最強の鎮痛剤モルヒネですら苦痛を抑えられない地獄仕様だ。
震え、嘔吐、発汗といった症状に苛まれながらただひたすら苦痛に喘ぐよりない。だが、何よりも恐ろしいのは、この激しい痛みが下手をすると3ヶ月も続くことだ。
カモノハシの毒で死ぬことはない。だが、死んだ方がマシかもしれないレベルには苦痛がすごい。
written by hiroching / edited by usagi
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