20世紀始めまでの数百年間、中国の女性が男性医師から直接診察を受けるのは難しいことだった。
他の地域の文化の例にもれず、当時の中国人は女性の純潔を非常に重要視していて、女性は夫以外の男性に自分の肌を見せることはできなかったのだ。
医師のほとんどは男性だったため、診察のために女性患者の服を脱がせたり、その体に触れたりすることはできなかった。つまり、体を見ての病気の診断や治療ができなかったということだ。そこで解決法が編み出された。
女性をかたどった小さな象牙の人形を使用するのだ。
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人形を使って体の悪い場所を指し示す
医師たちの多くは、裸で横たわる女性をかたどった小さな象牙の人形を、自分のデスクに置くようになった。
治療を受けようという患者の女性は、医師との間を隔てる竹のスクリーンかカーテンの後ろに座るか立つかする。その仕切りにあけられた小さな窓から手を伸ばし、医師が脈をとる。それから女性は、自分の具合の悪い個所を人形の体を使って指し示す。
ほとんど言葉を交わすことなく、それだけで医師は診断を下し、ふさわしい治療薬を処方する。そういう治療の仕方だったのだ。
自らに似せた人形をオーダーメイドする上流階級の女性も
7世紀から15世紀の間の長きに渡ってよく使われていた医療人形は、腕輪などの装飾品やサンダル以外はなにも身につけていない女性が片手で頭を支えて横向きに横たわり、秘所を隠すかのように、もう片方の手で胸を包み込んでいる姿だ。まれに、スカーフのようなもので腰を覆っているものもある。
医師以外に、上流階級の女性たちの多くは自分でこの医療人形を持っていた。彼女たちは自分では医師のところへは行かず、侍女にこの人形を持たせて、具合の悪い箇所を医師に示させた。
人形の多くはオーダーメイドされていたようで、それぞれ微妙に体つきが違う。女主人の体型や体格が正確に表わされているためだ。
●
医療人形を使った診療は、15世紀の明の時代に始まったと思われ、20世紀始めの清王朝の終わりまで続いた。
現代医療の影響をあまり受けていない都会から遠く離れた小さな村々では、割と最近までこの人形を使っていた可能性がある。あるいは今も使用されているケースもあるかもしれない。
他の様々な人形はウィキメディアのカテゴリー「Chinese ivory Diagnostic Dolls」で見ることができる。
written by konohazuku / edited by parumo
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