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 嵐と地震のコンボだなんて想像したくもないが、海底ではしばしばそうしたことが起きているらしい。

 新しい研究によると、台風による暴風雨など、強力な嵐によって海底ではマグニチュード3.5クラスの地震がしょっちゅう起きているのだそうだ。

 この現象は「ストームクエイク」という。海上に大型の台風やハリケーンが発生し、それによって生じた第二波(S波)が海底と干渉することで起きる現象だ。

 「台風シーズンでは、台風が強力な海洋波としてエネルギーを海に伝えます。そうした波が硬い地面と干渉して、激しい震源活動を作り出します」と米フロリダ州立大学のファン・ウェンユアン氏は説明する。

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ストームクエイクでは津波は起きない

 海底で地震が起きると東日本大震災のときのような大きな津波が生じることがある。だが、ストームクエイクの場合は心配無用だ。弱すぎて危険な津波にはならないからだ。

 むしろ、本物の震源がないような場所では、地球の構造を調査するために便利な震源として使うことができる。さらに大きな台風が発生したときの海洋波のダイナミクスを研究するためにも利用できる。

 ファン氏のような研究者的には、「台風による震源は数時間から数日も持続する」のでワクワクするのだそうだ。

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ノイズと台風の関連性


Geophysical Research Letters』に掲載されたこの研究では、これまでなら周辺環境のノイズとして無視されてきたあいまいな地震波に着目して解析を行った。すると、そこに強力な台風との関連性があることが判明したのだ。

 2006~2015年の間には、1万4077回のストームクエイクが記録されていたとのこと。特に海底地震を頻発させたのは、2008年のハリケーンアイクカテゴリー4)や2011年のハリケーンアイリーンカテゴリー3)だ。

 しかし、大型台風なら必ずストームクエイクが起きるわけではない。たとえば170名を超える犠牲者を出した2012年のハリケーンサンディは、ピーク時にはカテゴリー3に分類された大型台風だが、これによるストームクエイクはかろうじてひとつのみだ。

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ストームクエイクの発生条件


 このことから、ストームクエイクが生じるには台風の威力だけでなく、海洋や地形の条件も整っている必要があるらしいことがわかる。

 ついでに指摘するなら、メキシコ沿岸やニュージャージー州からジョージア州にかけてのアメリカ東海岸でもまったく観測されていない。

 「わからないことがたくさんあります」とファン氏。「私たちはその存在にすら気付いていなかったのですから。地震波場の豊富さを浮き彫りにしてくれると共に、私たちの地震波に対する理解が新しい段階に到達しつつあることを示しています。」

References:Hurricanes trigger 'stormquakes' on the bottom of the ocean/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52283766.html
 

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