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連続テレビ小説「スカーレット」 
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第3週「ビバ!大阪新生活」18回(10月19日・土 放送 演出・中島由貴
今日も猫、出た。
と毎日猫に喜んでいる場合ではない。喜美子に集中しよう。
お給料は思ったより少なかったが、全額、実家に送る喜美子(戸田恵梨香)。
少なっ という顔する常治(北村一輝)と家族達の表情と、引いたアングルが可笑しかった。

「口紅ひとつ買うてあげたかった」
もう少しもらえたら、ちや子(水野美紀)に口紅を買ってあげたかったと遅く帰って来た彼女に言う。
ちや子はお金がなくて買えないわけでなく、おしゃれに興味がないだけなんだと思うが(仕事に夢中で)、
幼い(ってほどでもないが)喜美子にはわからない。下着ファッションショーのお化粧アドバイザーさんが疲れた顔も口紅一本で元気な顔になると言っていたのを覚えていて、ちや子がいつも疲れているのを心配しているのだ。ペン立てとコーヒー券も喜美子の贈り物だったことを知るちや子。

喜美子とちや子のやりとりを見ていて、いまは男と女を分けるなという時代だが、女同士でしかわかりあえない柔らかい交流というのも大事だと思った。
ファッションショーに出かけるとき、信楽のおばちゃんたちが贈ってくれたブラウスとスカートを着て、ちや子に靴を借りるのもそうだし、ファッションショーで、さだ(羽野晶紀)がブラジャーで体のラインを整える提案をするのもそう。
女の子特有のカラダを愛おしむことも忘れたくないと思った、18回。
ファッションショーの場面がきれいに撮ってあってよかった。ピアノの伴奏もよかった。

「ゴミ」「ゴミちゃいます」
ファッションショーに行くとき、新聞社に立ち寄るちや子についていく喜美子。例の「旅のお供」(信楽焼のかけら)を鑑定してもらうためにもっていく。
社内ではいきなり、丸めた紙が飛び交い、喜美子は「ゴミが」と拾って捨てようとするが、それはゴミではなく原稿だった。
「くそみたいな記事書きやがって」
「売れるためには芸能欄も必要でしょう」
と言うのは現代にも大いに当てはまる。
新聞の芸能ニュース書いている記者さんたちもほんとうは社会派の記事を書きたくて新聞社に入ったのに、なんでこんな仕事とか思っているのかなあと思うと、視聴率のことばかり書いたり、SNSの声を拾ったり、かんたんなあらすじ書いていることがむしろお辛いでしょうね、と思ってしまう。

「引き抜きや」
ちや子が忙しくなったのは、記者がひとり大手新聞社に引き抜かれたから。
新聞社のゴミだゴミじゃない話から、編集長の夫婦茶碗のかたわれ話、茶碗を洗って話の軽妙さを経て、喫茶さえずりに、雄太郎(木本武宏)がいて歌っていて、しかも意外と巧い、という流れがじつになめらかだった。水野美紀コメディの演劇ユニット(プロペラ犬)をやっているだけあって間合いが達者だ。

さて、喜美子はどこに「引き抜」かれたのか? 喜美子の人生がどんどん動いていく。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)

登場人物のまとめ
●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。勉強もできる。とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、就職する。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいるらしい。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子福田麻由子 幼少期 稲垣来泉 

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。
熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。

●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を
「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいた。帰国の際、離れ離れになってしまった妻の行方を探している。喜美子に柔道を教える。
工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。

保…中川元喜  常治に雇われている。
博之…請園裕太 常治に雇われている。

●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対する。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて引きこもり中。
静 マスター…オール阪神 喫茶店マスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。

平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

あらすじ
第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ福田麻由子佐藤隆太大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superflyフレア
制作統括:内田ゆき
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