倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」テレビ朝日系・月~金11時30分~)第28週。

浅丘ルリ子演じるモモさんが、赤線地帯で売春婦をしていたとバレて村から姿を消してしまったり、唐突にハゲ(両角周)が、公平(風間俊介)の妹・幸子(木下愛華)を嫁にもらいたいと言い出したり。気になることが山積みとなっている「道」パートだが、今週は「やすらぎの刻」パート。

お嬢(浅丘ルリ子)の隠し子の息子。要は孫にあたる竹芝柳介(関口まなと)が薬物所持の容疑で逮捕されていたが、ようやく裁判が終わって執行猶予で釈放。今週は、彼をどう社会復帰させるかに絡めて色んなことをぶっ込んできた。

Twitterは社会の病気!?
歌舞伎界のプリンスとして育てられてきた竹芝柳介だが、逮捕を期に竹芝家からは縁を切られ、所属事務所も解雇されてしまった。頼れるのは、世間には公表されていない祖母・お嬢だけという状態。

タイムリーに三田佳子の次男がまたまた逮捕されたのは偶然にしても、それ以前に複数回逮捕された事件や、前作「やすらぎの郷」放送中に橋爪功の息子が覚せい剤取締法違反で逮捕され降板した件あたりが頭に浮かんでくるこのエピソード。

ちなみに、竹芝柳介を演じている関口まなと(「道」パートでニキビを演じている関口アナンは弟)は竹下景子の息子。演者自身も二世俳優なのだ。

思い返せば、この「やすらぎの郷」で働く男性スタッフたちは前科者ばかり。……ということでお嬢は、柳介も「やすらぎの郷」で働かせてもらいつつ、一緒に暮らしたいと考えているようだ。

しかし名倉理事長(名高達男)たちからは、そもそも老人ホームで孫と暮らすのはおかしいし、柳介がお嬢の孫であることも世間的に知られていないため、「やすらぎの郷」で流行りはじめているTwitterで噂が広まってしまうと大問題になると、反対された。

そもそもTwitterが何だか分かっていないお嬢に対し、名倉理事長や、菊村栄(石坂浩二)が説明をしていたのだが、これが「おじいちゃんたちの考えるTwitter」という感じで味わい深かった。

「メールを使って匿名で噂をまくんです」
「(Twitterを作ったのは)スティーブ・ジョブズあたりですか」
「他人をおとしめて快感を覚えるという、人として恥ずべき卑劣の連鎖だ。そういうことがスマホやらパソコンやらを利用して、社会全体に病気のように広がっている」

正解ではないものの、大きくは外していない。これにはTwitterの実況民たちも「なんか自分たちがディスられている!」と、だいぶザワついていた。まさかこのドラマでTwitterの話題が登場するとは……。

スティーブ・ジョブズなんて知らないよ!」

という、身も蓋もないお嬢の返しも痛快だった。

偏見に満ちた「女の定義」がひどい
竹芝柳介問題に絡んでの「女」論争もひどかった。

「やすらぎの郷」で柳介と一緒に暮らしたいと言い張るお嬢をいさめるためにやって来たマヤ(加賀まりこ)に対して言い放ったセリフ。

アンタには女の気持ちが分からないのよ!」

「あら、私、女よ?」

「子どもを作ったことのある女を、女っていうの!」

このご時世に、なんちゅう偏見に満ちた発言。分別のついた大人をターゲットにしたドラマじゃなかったら、それこそTwitterで大炎上しかねない。

この後、マヤがジェラールフィリップという子どもを妊娠したものの、流産していたという衝撃の過去が明かされてますます混乱する。

「産みの苦しみを経験して、はじめて女は女って言えるの!」

お嬢にしても、出産はしたものの、子ども(柳介の父親)はそのまま竹芝家に引き取られてしまったため、育児の経験はないわけだが……。

このひどい発言、あの年代の人は本気でそう思っていそうなのが怖い。

放送後、「ワイド!スクランブル」の受けで大下容子アナが「マヤさんを大切にしてあげてください」という微妙なコメントをしていたが、こんな発言、フォローしきれないだろう。

偽札作りに丁半博打……
結局、柳介は、お嬢とは会わない、口をきくことも許されないという条件で、「やすらぎの郷」に住み込みで働けることになった。

近くで働いているのに顔を見ることもできないためやきもきするお嬢が、一万円と手紙を包んで、こっそりと柳介に渡してもらった気持ちは痛いほど分かるし、ここでおばあちゃんに甘えてはいけないと、手紙&一万円を上司にそのまま渡す柳介の決意もグッときた。

三田佳子の次男も「やすらぎの郷」で働けば更正できたかも知れないのに。

これで済んでいればいい話だったのだが、お嬢が包んだ一万円札(誰かに借りたということらしい)が偽札だったという、とんでもない要素をブチ込んできた。

この偽札、

「先行き短い老人に、ちょっとこういう鉄火場の気分を味あわせてやろうと思って」

ということで丁半博打に使うため、マロ(ミッキー・カーチス)が、かつて業界で小道具を作っていたスタッフに依頼して作ってもらったものだ。

お昼のドラマで繰り広げられる博打シーンに、

「IRカジノ解禁法案が、どれほどの危険をはらむものであるかを、みなさまに分かりやすく説明する。そういう教育的意味があるからである」

というフォローのナレーションが入っていたが、明らかに偽札を作っていることの方がマズイと思うが。

不謹慎発言から感動、ザ・犯罪行為まで、どれほど感情を揺さぶってくるのだ、このドラマは。

ちなみに、問題の偽札は肖像画の部分が名倉理事長の姿になっているというものだったが、明らかに、本物の一万円札に名倉理事長の写真を貼り付けているだけという、雑な作りだったのには笑ってしまった。

この偽札が、さらなる問題を引き起こしそうだが……。
(イラスト・文/北村ヂン

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』テレビ朝日
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

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『やすらぎの刻〜道』テレビ朝日
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

イラスト・文/北村ヂン