美しい風景はたくさんありますが、山で出会う光景と秘湯は特別なものです。たどり着いた頂きからの絶景はあなたの足で歩いたからこそ得られたもの。そして秘湯はあなただけのご褒美。今回は秋・紅葉の日本百名山・丹沢を縦走して、西丹沢の秘湯・中川温泉信玄館を訪ねる旅をご紹介します。


丹沢へのルート 大倉から塔ノ岳へ



今回は1泊2日で丹沢を縦走する予定です。丹沢へ登るルートはいくつもありますが、もっともポピュラーなルートは小田急線渋沢駅北口から大倉まで15分ほどバスに乗り、そこから大倉尾根を登るルートです。大倉にはビジターセンターや食堂、トイレなどがあり設備も整っています。



さあいよいよ登山スタート。この登山道は通称「バカ尾根」と呼ばれるルートで、ひたすら尾根をまっすぐに直登するルートになりますが、初心者でも大汗かきながらも登ることができます。



ひたすら上りの樹林帯を抜けて尾根に出ると、西の雲の間に富士山を望むことができます。途中には山小屋もたくさんあります。美しい富士山を見ながら休憩を取りましょう。



3時間ほどで標高1491mの塔ノ岳に到着。山頂は木のベンチがずらっと並んでいて、休日になるとたくさんの登山客がここでランチを食べたり休憩したり、大混雑しています。



でもこの日は登山客も少なく、猫ちゃんもちょっと手持ち無沙汰の様子。それにしても雲の上の富士山の美しいこと。

塔ノ岳から丹沢山へ



塔ノ岳でしばらく休憩して、次の丹沢山に向かいます。丹沢山への登山道はそれほどのアップダウンはありません。眺めの良い稜線歩きになります。



山の上のほうでは紅葉が始まっていました。麓では11月下旬からが紅葉の見ごろになりますが、1000mを超える山の上では10月下旬になると木々が色づき始めていました。



塔ノ岳から1時間15分ほどで丹沢山に到着。標高は蛭ヶ岳より少し高い1567mです。今夜は山頂にあるみやま山荘で1泊。こじんまりしていますが、食事もおいしく、とてもきれいな宿で女性にも人気です。



山荘の前から見えた富士山の夕景です。太陽が沈むまでずっと見ていました。今回の絶景ポイントになりますね。ぜひここまで足を運んでこの絶景をご覧ください。



みやま山荘のおいしそうな夕食。メインのおかずは焼肉。ごちそうさまでした。ちなみにみやま山荘は1泊2食で8000円とリーズナブル。昼食の弁当代は1000円です。

霧のなかを丹沢山から西丹沢へ



翌朝起きるとあたり一面に霧が立ち込めていました。雨ではない様子です。朝食を済ませ、今日は丹沢を西に向かいます。晴れることを期待しましょう。



まずはここから3.4キロほどの丹沢山系で最も高い標高1673mの蛭ヶ岳に向かいます。



丹沢山から蛭ヶ岳へは一度急な坂を下って、ふたたび登りの2時間足らずの道になりますが、これだけガスが立ち込めていると自分がどれだけ下って登っているのか実感がありません。岩場もところどころありますので、天気が悪い時には足場に気を付けて下さい。



ふいに蛭ヶ岳の山小屋が現れ、いつの間にか山頂に到着。ここが丹沢山系の最高峰であり、神奈川県の最高所です。蛭ヶ岳という妙な名前ですが、その昔この山頂には薬師如来や毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)など多くの仏像が祀られていたといいます。ここから毘盧ヶ岳(びるがたけ)と呼ばれるようになり、転じて蛭ヶ岳になったとも言われているそうです。



ここで一息入れて、さらに西に向かいましょう。西丹沢には標高1601mのピーク・檜洞丸があり、それを超えて西丹沢に降りていくことになります。



檜洞丸までは4.6キロ。それほどアップダウンはありません。このあたりまで来るとほとんど人とすれ違いません。途中ガスのなか臼ヶ岳周辺でシカと遭遇しました。シカも驚いている様子。このあたりもシカが増えているようですね。



2時間半ほどで檜洞丸山頂直下にある青ヶ岳山荘に着きました。青ヶ岳とは檜洞丸の別名だといいます。



次第にガスが晴れてきたようです。ちなみに檜洞丸という変わった名前ですが、山頂南東面から南に流れる玄倉川に流入する檜洞(ひのきぼら)という沢に由来しているそうです。また洞(ぼら)は沢のことを指しているといいます。



どちらかというと、西丹沢の方が東側より紅葉が早く、色合いも鮮やかできれいな印象です。木々の色も濃く感じます。



檜洞丸から2時間ほど下っていくと沢に出ました。ここまでくれば、もう終点です。



西丹沢自然教室の建物。久しぶりに近代的な建物に出会えたような印象でホッとします。ここにバス停があるのです。



ここから丹沢湖を経てJR御殿場線谷峨駅新松田駅までバスが走っています。あらかじめバスの出発時間を調べておいたほうがよいでしょう。

ご褒美は美人の湯・中川温泉信玄館で



バスに乗り、少し下ったところにある中川バス停で下車すると、美人の湯として名高い中川温泉の秘湯・信玄館があります。


©中川温泉信玄館

なぜ美人の湯なのかといいますと、pH10.1という高いアルカリ性のすべすべするお湯で、肌触りがとても滑らかなのです。かつては武田信玄の隠し湯だったともいわれており、建物内部も見晴らしの良い客室もきれいで気持ちよく過ごせます。


©中川温泉信玄館

ちなみに温泉は日帰り入浴も可能です。入浴時間は平日11:30から18時、日曜祝日11:30から17時まで。大人1000円で堪能できます。


©中川温泉信玄館

アトピーや皮膚病にも効能があると言われるほか、飲泉により胃腸病にも効くといいます。大浴場や露天風呂サウナだけでなく、無料貸切のお風呂もあるので、存分に温泉を楽しむことができます。


©中川温泉信玄館

食事は地元の野菜や山菜、そのほか相模湾で獲れる魚もいただくことができます。そしてなんといってもお酒が好きな方にお勧めなのが利き酒セット。「丹沢山」を始めとした地元丹沢・足柄の地酒を楽しむことができるのです。山歩きで疲れた体を温泉と美酒で癒してあげてください。


©中川温泉信玄館

中川温泉周辺の紅葉は今年も11月中旬から下旬だということです。丹沢の麓よりも少し早めのようです。ぜひ美人の湯で温もってください。


隠れ湯の里 中川温泉 信玄館
住所:〒258-0201神奈川県足柄上郡山北町中川577-6
電話番号:0465-78-3811
http://www.shingenkan.co.jp/



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[Photos by Masato Abe]

富士山夕景