最近では葬儀の際の演出も多様化してきていると聞きます。メモリアルムービーが作成されたり、ライブ配信が行われることもあるとか。



写真はイメージです



 そんな中でもポピュラーなのが、出棺の際に故人の好きだった曲をBGMとして流すというもの。フリーライターのM子さん(38)は、この演出のせいでとある曲がとても思い出深いものになってしまったと語ってくれました。


ミスチルの桜井さんを胸に抱いて眠る友人
「私の中学の時の友人は、22歳の時に突然倒れ、その際の処置のミスが原因で亡くなってしまいました。専門学校を卒業して、憧れの職業に就いた矢先の出来事で、『何であんなに頑張ってきた子が……』と悔しい思いでいっぱいの通夜でした」


 亡くなった友人は、進学した高校に馴染めず中退をし、1年間の引きこもりを経て、通信制の学校に通った後に専門学校に進学。2年間の努力の末に、希望する会社に入社を果たしました。亡くなった日の数日後に、M子さんは彼女と祝杯を挙げる約束をしていたそうです。


「夢に向かって必死に頑張っていた彼女には、恋人という存在はいませんでした。その代わりミスチルMr.Children)の桜井和寿さんの大ファンで、ファンクラブにも入会し、ライブには必ずといっていいほど足を運んでいました。桜井さんが理想の男性とまで言ってましたね。一生に一度でいいから握手してもらえたら……なんてよく話していました」


 棺で眠る彼女の胸には大きな額縁に入れられた桜井さんの写真が抱かれていたそうです。そして最後のお別れ。泣きすがる家族。ついに出棺というタイミングで、M子さんの耳には、よく彼女がカラオケで歌っていた曲が聞こえてきました。


カラオケで「出棺BGM」が流れるたびに号泣。生まれる誤解
「出棺BGMは彼女が大好きだった『星になれたら』という歌でした。サビの『さようなら会えなくなるけど寂しくなんかないよ』の歌詞が流れた瞬間に、堪えきれず涙が溢れてしまいました」


 大好きな曲に見送られながら去っていった友人。「この曲を聞いたら、絶対に彼女を思い出すなぁ」とM子さんは思いました……が。その弊害は思いがけない事態を引き起こします。


「この『星になれたら』ってわりと同年代の男性がカラオケで歌ってたんですよね。私、その度に彼女を思い出して号泣しちゃって、いつも周りを心配させてました。一番ヤバいと思ったのが、当時勤めてた会社の同僚が転勤になった時。同期たちと肩を組みながらこれを歌ってる姿を見て、涙がボロボロに溢れちゃったんです」



 すると周囲はもしかしてM子さん、あの人のことが好きだったとか……?」と要らぬ誤解を招いてしまい、帰りに2人きりにさせられて非常に気まずい思いをしたそうです。


◆「自分の時は当たり障りのないBGMにします」
「一応、ちゃんと釈明して『なんだ~そういうことか』という話にはなりましたけど。今はさすがにボロ泣きとまではなりませんけど、それでもこの曲を耳にする度にウルっとはきてしまいます。どうしても亡くなった彼女との思い出と直結しちゃうんですよ」


 ちなみにM子さん、ほぼ同じタイミングで大学の同級生も亡くなっているそう。その時のBGMBUMP OF CHICKENの『Stage of the ground』。この曲もやはり、心のどこかで亡くなった友人とリンクしてしまい、積極的には聞けないといいます。


「故人の好きな曲を流すって良いことなんでしょうけど、その曲に深い意味が出来ちゃうから……。私の時は、残された人のことを考えても当たり障りないBGMにしてもらいたいなぁと思います」


冠婚葬祭・式典のトンデモエピソード


<文/もちづき千代子 イラスト/ただりえこ>


もちづき千代子】フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディターメーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。度を超したぽっちゃり体型がチャームポイント