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 悪事にインターネットが使われた話は枚挙にいとまがない。

 なけなしの財産をかすめとる詐欺師からネット上での誹謗中傷まで、そのダークサイドについてはあえてここで説明するまでもないだろう。

 だが時に、ネットが良いことのために役立つこともある。

 昔気質すぎてネットに詳しくなかったりクラウドソーシングツールがなかったりするプロの捜査機関や警察が及ばないところで、犯罪を解決した多くの善良な人たちが実際にいるのだ。

 それでは、ネットがあったからこそ解決できた6つの事件を見てみることにしよう。

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1. 自動車の部品から轢き逃げ犯を特定


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 轢き逃げ犯を捕まえるのは、インターネットのない時代ではかなり難しいことだった。たいていほとんど証拠が出ないからだ。

 幸運なことに被害者がまだ生きているなら運転手は決定的な証拠を残しているかもしれないが、現場にもろに免許証や唾液を残していない限り立件には十分ではないかもしれないのだ。

 インターネットが轢き逃げ犯の検挙率を上げたと言っているわけではないが、少なくともこのケースの場合はインターネットコミュニティのおかげで犯人が捕まった。

 それはワシントンでのこと。自転車に乗っていた人が車に衝突されて死んだが、犯人につながる手がかりはまるでなかった。

 最終的に犯人の乗っていた車の部品が写っている現場写真がRedditにアップされ、その特定につながる情報が広く求められた。

 写真を投稿したのはダメモトだったが、それを見た州の車検士が問題の車の車種を正確につきとめたことで事件は一気に進展したのである。

 犯人は、1980年代半ば当時では所有者がほとんどいなかったシボレーシルバラードに乗っていたためすぐに足がついて逮捕されて有罪を宣告された。

2. 悪徳警官による非人道的な発砲事件の決定的証拠


A Police Shooting. A Viral Video. An Obsessive Quest for Truth.

 アメリカでは、裁判もなく容疑者を撃ち殺す警官による殺人は決して珍しいことではない。

 だが今ではカメラのような現代技術のおかげで、こうした非道に対して一切お咎めなしで下手人の警官が逃げおおせられることは難しくなっている。

 だからといって二度とこうしたことが起こらないという意味ではないが、悪徳警官はその場を目撃したり記録したりしている人間が誰もいないことを前よりももっと慎重に確認しなくてはならなくなった。

 だがサウスカロライナ州の警官だったマイケル・スラガーは、その意味を理解していなかったようだ。

 丸腰の黒人男性、ウォルター・スコットさんを撃って殺した後、スラガーがすぐに起訴されなかったのは目撃者が現場で撮影した映像がひどくぶれていて有罪の決定的な証拠にならなかったからだ。

 ところがこの映像をネットで見たカナダの学生、ダニエル・ヴォシャートさんがぶれを修正する処理を施した。

 ヴォシャートさんは当時、映画撮影技術、とくに画像を安定化させる技術を中心に学んでいた。

 そこでこのような人種差別犯罪に対して自分になにかできることはないかと考え、この画像を安定化させてそのGIF画像をRedditに投稿した。

 のちにこれが決定的な証拠になったたけでなく、こうした行為がオンラインコミュニティを動かして犠牲者の無念を晴らしたことは大きい。

3. ハッカーの圧力で捜査が再開された暴行事件


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image credit:Wikimedia commons

 17歳カナダ人少女、ラテイア・パーソンズさんが、複数の男たちによる性的暴行被害にあって結果的に自殺した事件は世界中に報道された。

 彼女を自殺に追いやった真の原因についてはいろいろ言われているが、大方は彼女の写真がネットに出回り、ネット上でいじめを受けたことが大きな原因だとされている。

 同様の犯罪はこれまでにも確かにあったが、そこにソーシャルメディアが絡んで、当時としては比較的珍しかったネットいじめの現象に発展したことで特異な悲劇の様相が浮き彫りになった。

 写真という証拠があったにもかかわらず、当初警察は、暴行されたことがラテイアさんの自殺に関与している証拠はほとんどないとして事件の捜査を打ち切った。

 しかし、ネットでの世間の圧力、とくにアノニマスハッカーからの圧力が高まっていたため捜査を再開せざるをえなくなった。

 過激な自警はどのような形であっても悪で、自警団と暴徒は紙一重だという認識がわたしたちの中にはある。

 だがラテイアさんのケースの場合は、ハッカーのおかげで事件が迷宮入りしなかったことは確かだ。

4. 悪党のパソコンをウイルス感染させた「オムニポテント」


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image credit:Pixabay

 もちろん調査目的のためだが、深層ウェブまでたどり着いてその世界を垣間見てきた者は誰もがそこにはものすごく恐ろしいものがあると言うだろう。

 違法ドラッグや不気味な変態の世界だけでなく本物のスナッフフィルム児童ポルノ殺し屋などが跋扈し、警察の手も及ぶことはない。

 ほとんどは闇のウェブの裏に隠れ、匿名性も高くて首謀者の身元もわからない。

 しかしこの状況をおかしいと思っていたブラッド・ウィリアムというあるハッカーは、なにか行動を起こそうと決めた。

 もともと「オムニポテント(全能の神)」という匿名で暗躍していたウィリアムは、ウィルスを構築して子供を餌食にする悪党の3000台以上のパソコンを感染させた。

 最終的に彼が集めた多くの証拠はこうした闇サイト主催者を有罪にするのに十分だったが、違法に入手した証拠という理由で裁判でその有効性を認められず、当局はほとんどなんの行動も起こさなかった。

 だからといって、ウィリアムの行動がまるで役に立たなかったということはない。

 これらの証拠は最終的に一部の有罪を確定させ、子供を毒牙にかける犯罪者をあぶり出すことに成功したのだ。

5. グレイトフル・デッドのファンが特定した遺体の身元

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マルガレッタ・エヴァンズ → グレイトフル・ドゥ
息子のジェイソン・キャラハンがマートルビーチ(カリフォルニア州)からいなくなってしまったの。

あれからずっとあの子を探しているけれどダメ。今日、もうひとりの息子がFBでこちらのページを見つけたわ。

何年もの間、あの子からの連絡を、そして帰って来るのを祈っていた後で。どうか、メッセージか電話をください。#連絡乞う

image credit:Facebook

 ヴァージニア州グリーンスヴィル郡育ち、あるいは在住者の間では有名だという「グレイトフル・ドゥ」。

 これは、車の衝突事故で亡くなったふたりの身元不明者のひとりに与えられた非公式の名前だ。

 彼の遺体は損傷が激しく、20年も身元がわからなかった。手がかりは腕に残されたタトゥーと、グレイトフル・デッド(アメリカのロックバンド)のコンサートチケット2枚、そして"ジェイソン"宛ての1枚のメモだけ。

 事態が変わったのは、グレイトフル・デッドのファンたちがネットで彼の身元を特定するためのページを作ってからだ。

 このおかげで、解決済みとされていた事件に注目が集まった。幸いなことにそこに投稿された写真のひとつがきっかけで、ひとりの女性がコンタクトしてきた。

 それが上記の投稿をしたマルガレッタさんだ。そしてDNA鑑定によって身元不明の「グレイトフル・ドゥ」の遺体が、行方不明になっていた彼女の息子、ジェイソン・キャラハンさんであることがやっと判明したのだ。

 家族はキャラハンさんが行方不明になったのは、単なる家出だと思い込んでいたのだとか。

6. 暴行事件の襲撃犯をツイッター民が特定


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image credit:Philadelphia Police Dept.

 今日のように二極分化した社会においては、ヘイトクライムを防ぐというよりも生むほうでソーシャルメディアがニュースになることが多い。

 こうしたケースの多くで襲撃者をつきとめることが不可能なのは、犯罪が夜の町の人里離れた場所で発生するからだ。

 2014年、フィラルフィアでのこと。セクシャリティが原因で襲撃者のグループが数人の男性を殴った事件が起こったときも、またしてもほかの事件と同じような状況になると思われた。

 幸いなことに当局が写真を公開し、ツイッター利用者によって犯人の身元がしっかり確認された。

written by konohazuku / edited by usagi

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52283697.html
 

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