現在のお笑いシーンにおいて、確かな存在感を示しているのが博多華丸・大吉だろう。彼らは、吉本興業の福岡事務所(通称・福岡吉本)出身である。1990年結成の彼らは、長らく福岡のローカルタレントとして活動していたが、2005年に上京。翌2006年に華丸が児玉清モノマネネタで『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)で優勝、コンビでも『THE MANZAI2014』(同)で優勝する実力派である。

 福岡吉本からは『M-1グランプリ2009』(テレビ朝日系)、『THE MANZAI2011』(フジテレビ系)で優勝を果たしたパンクブーブーのほか、カンニング竹山ヒロシなども一時期在籍していた。パンクブーブーは吉本所属だが、竹山やヒロシの事務所が異なるのは、当時の福岡吉本は、東京や大阪の吉本への移籍が許されず、一度事務所を辞める必要があったためだ。それだけ、ほかの事務所と異なる特殊な事情があったと言える。そこには、福岡という土地の特殊性もあった。

 「福岡吉本ができたのは1989年であり、博多華丸・大吉はその一期生として知られます。当時の福岡には、きちんとした大手の芸能事務所がないため、吉本が一人勝ち状態であり、若手時代からコンスタントに仕事はもらえたようですね。さらに、『どうせ福岡で終わるのだから』という理由で、給料も毎月50万円ほど受け取っていたとか。若手芸人としては破格の待遇だと言えるでしょう」(業界関係者)

 現在は大手では吉本興業のほかにも、ワタナベエンターテインメントも九州事業本部を置いている。これも地域で活躍するローカルタレント不足の事情が背景にあるようだ。

 「名古屋や大阪ならば、東京のタレントが新幹線でやってくることはできますが、福岡はさすがに遠いと言えます。そのため、地域で活躍するタレントが慢性的に不足しています。元モーニング娘。の初代リーダーだった中澤裕子は、夫の仕事の都合にともない、子育てと並行しながら福岡でローカルタレントとして活躍していますし、東京では『あの人は今』状態の、ギター侍の波田陽区も九州のローカルタレントとして活躍中ですね。彼は山口県出身ということもあり、地元タレントとして好意的に受け入れられているようです」(前出・同)

 東京や大阪から離れている分、福岡では地方タレントとして個性を発揮できる余地があるのだろう。

博多華丸・大吉