Point
■マダガスカルに生息する「アイアイ」に、隠された6本目の指が発見される(極小だが、体重の半分を支える力がある)
■細長い中指が最も特徴的で、地元では「アイアイに中指で指された者は死ぬ」という迷信が伝わっている
コウモリのような耳に、らんらんと光る黄色いギョロ目、胴より長い尻尾はさながら死神のマントのよう。
マダガスカル北西部に生息する夜行性の霊長類「アイアイ」は、現地住民に「悪魔の使い」として恐れられています。「アーイアイ」なんて歌まで作って可愛がる日本人からすると、意外かもしれません。
アイアイは、1800年代半ばから研究対象となっており、その生態はほぼすべて知り尽くされていると思われていました。
ところが今回、ノースカロライナ州立大学の研究により、アイアイの手には、隠された6本目の指があることが発見されたのです。
研究の詳細は、10月21日付けで「Physical Anthropology」に掲載されました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ajpa.23936
体重の半分を支えられる「6本目の指」
研究主任のアダム・ハートストーン氏によると、「6本目の指はアイアイのデジタル画像解析をしている最中に偶然見つかった」といいます。
この指は、X線でも明瞭に見えないほど小さな骨でできていました。一見コブのように見えますが、れっきとした指だそうで、骨の両サイドには指を動かすための3タイプの筋肉が付いています。
この小さな指には、体重の半分を支える力があり、木の枝をグリップするのに使われていたようです。
アイアイと言えば、木の中から虫をほじくり出すための細長い中指が一番有名ですが、6本目の指の発見でもう「中指」とは呼べないかもしれません。
「中指で指されると死ぬ」という民間伝承
アイアイは、細長い中指を駆使して、木の中に潜む昆虫をほじくり出しエサにします。
まず音に敏感な耳を使って、木の中をうごめく昆虫を探知し、次に齧歯類のような鋭い歯で樹皮をかじって中指を突っ込むための穴を作ります。中指には、人間の肩に似た球関節とソケット関節があり、このおかげで狭い穴の中でも複雑な動きが可能です。
指先には、獲物を捕らえて引き抜くための鉤爪も付いています。
マダガスカルの古い伝承によると、アイアイの中指は「死のシンボル」と考えられています。
原住民たちの間では「アイアイに中指で指された者は死ぬ」というデスノートのような迷信が本気で信じられていました。そんな理由から、アイアイは悲劇的にも、地元住民に見つかると殺処分対象となり、徐々に数を減らしていったのです。
また、昨今の温暖化も重なり生息域も減っており、専門家の推定では、野生に残っているのは1000体にも満たないんだとか。現在、アイアイはマダガスカルの絶滅危惧種に指定されています。
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