ラグビーワールドカップ(W杯)で日本の大いなる挑戦が終わった。準々決勝で南アフリカに敗れはしたが、1次リーグを4戦全勝で通過してのベスト8進出は快挙の一語に尽きる。大会は準決勝以降の4試合を残しているが、アジア初開催となったW杯ラグビーは予想を上回る成功を収めたといっていいだろう。NHKテレビで元日本代表の五郎丸歩さんが「ラグビーって何か面白いかもしれないと気付いてくれただけでも本当にありがたい。これを機会に文化として根付くようにやっていきたいと思う」と語っていたが、まさに大きな成果をもたらした。

 7カ国の出身選手を「ワンチーム」にまとめた日本代表の活躍とともに、世界トップ選手のスピーディーで華麗なプレーフォワードの肉弾戦がラグビー本来の持つ面白さを伝え、ホスト国の盛り上がりが大会の格をぐっと高めた。一つのバロメーターは日本代表戦のテレビ平均視聴率。初戦のロシア戦から18・3%、22・5%、32・8%、39・2%と上昇し、準々決勝の南アフリカ戦は41・6%にも達した。わが家に宅配されるスポーツ紙の見出しには「勝利ごとに『にわかファン』増殖!!」とあったが、「どこにこんな多くのラグビーファンがいたのだろう」と驚くほどたくさんの日本人がこのW杯を支えた。外国勢同士の試合にも観客が詰め掛け、世界からやってきた選手やファンと交流した。

 駆け出しの記者だったころ、私は5年ほどラグビーを担当したことがある。当時のラグビーアマチュアスポーツでも一、二を争うほどの人気競技だった。最強を誇った新日鉄釜石の試合や大学ラグビートップを争った早明戦は、国立競技場を満員の観衆で埋めた。松尾雄治さんや平尾誠二さんらスター選手がスポーツ紙の1面を飾った。

 これに対して1980年代サッカー日本リーグは閑古鳥が鳴くような寂しいスタンド風景だった。今の若い人はにわかには信じられないかもしれないが、サッカーの人気はラグビーにははるかに及ばなかった。だが、1990年代に入るとその位置が逆転する。プロ化に成功したサッカーJリーグの隆盛と日本代表チームの強化でメジャー競技に脱皮し、ラグビーは転落の一途をたどる。「人気にあぐらをかいたからだ」などと言われたが、現場にいてもその古い体質を感じたものだ。95年W杯での対ニュージーランド戦、17-145というみじめな敗戦も人気の陰りに拍車をかけた。

 15年W杯での世界を驚かせた南アフリカ戦勝利に続き、今回の快進撃でラグビー復権への土台は出来上がった。代表選手が口をそろえて言っているように、この強さを持続させることが人気定着への道となる。ラグビーの面白さを感じた「にわかファン」をどう取り込むか。日本協会が進めようとしているプロリーグ構想の早期実現を期待したい。もうチャンスは逃せない。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカーNFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。

【コラム】ラグビー復権への快進撃 期待されるプロリーグの実現